鉋や鑿の手入れをやった。
要するに当記事はワテの備忘録であるが、本題に入ろう。
鉋の手入れ(刃や裏金の錆を落とす)
数年前から木工DIYを本格的に開始したワテであるが、中古で買った鉋や鑿がドンドン増えて来た。
ぶらっと立ち寄ったリサイクルショップでハンドツールが安く売られているとつい買ってしまう。
中古鉋や中古鑿もこの二年くらいで鉋は十丁くらい、鑿も六本くらい買い込んだものがある。
このところ暖かくなってきたので、前々からやろうと思っていた中古鉋・中古鑿のメンテナンスをやる事にしたのだ。
まずは鉋の刃や裏金の錆を落とす事にした。
写真 鉋のさび落としの作業の様子
それにしてもこんなに沢山の鉋を買ってどうするんだ!?
錆落としには薬品は使いたくない
錆びた刃物や工具のメンテナンスを紹介するYouTube動画は多数ある。
多くのYouTuberは酸性の液体(クエン酸、サンポールなど)で錆びた金属の表面を溶かして錆を落とす手法を採用している。
そのあとで、重曹を水に溶かしてアルカリ性の液体を作って中和している。
確かにこう言う手法を使えば赤く錆びた金属の錆落としが簡単に出来るのは分かる。
しかし、今回はワテは薬品は使わずに機械的研磨だけで錆を落とす事にした。
その理由は、酸性溶液を使うと薬品が金属内部まで染み込む恐れがある。アルカリ性溶液で中和しても、十分に中和出来るとは限らない。その結果、貴重な鉋刃が時間とともに劣化するのも嫌だし。
そもそも昔の鉋職人さんがサンポールや重曹などを使って安易な手入れをしていたとは思えない。
そう言う理由でワテは今回は以下のツールを使って錆落としを行った。
これで準備完了だ。
寸八 「最高級 武房 苦心名鉋」
まずは下写真の「武房」と言う寸八鉋のメンテナンスだ。
写真 最高級 武房 苦心名鉋(メンテナンス途中)
この寸八鉋は確か千円くらいで買ったやつだ。
少し赤錆があるが、刃の長さも十分あるので手入れして研げばまだまだ使える。
気になる点としては、頭の部分が潰れているのと、上写真でも分るように右側の部分が欠けている。
写真 「武房」の頭の潰れを少しヤスリで削った
下写真では右側の部分が欠けているのが良く分かるだろう。
写真 「武房」の右側の欠け
この寸八鉋「武房」は台の仕込みが悪く、刃が真っ直ぐに挿し込めないのだ。
その為に、鉋刃の右側を金槌で叩いて刃先が真っ直ぐになるように調整しながら元の所有者さんは使っていたようだ。
正しく調整した鉋台でも、刃先の微妙な傾きを修正するために鉋刃の左右を軽く金槌で叩く事は普通に行われる。
ところがこの「武房」の場合には、台に刃を挿し込んだ時点で傾いているのだ。なので毎回右側を強く叩く必要がある。その結果、刃の軟鉄部分の右側が欠けてしまったのだろう。
と言う訳で、今回は取り敢えず刃の錆び落としだけを行うが、最終的には鉋台の左右の溝の部分も微調整して刃が真っ直ぐに挿し込めるように修正したいと思っている。
あるいは鉋台の左右の溝は真っ直ぐだが、刃の先端を斜めに研いでしまっているのかもしれない。
いずれにしても今後調査したい。
真鍮ワイヤーブラシで擦ったら、下写真のように表面の赤錆は除去する事が出来た。
写真 「武房」の表面の赤錆を真鍮ワイヤーブラシで落とした
次は、軽く裏出しをしたいので金盤を使う。
この金盤は昨年購入しておいたものだ。道具ばかり購入しても技術が追いつかない素人DIY丸出しだが。
写真 金盤を使って鉋刃の裏押しをする
本当なら金盤には金剛砂をまぶして鉋刃の裏押しをするのが本来のやり方だ。
今の場合は取り敢えず鉋刃の錆びを落とすのが目的なので、下写真のように400番のサンドペーパーを金盤の上に敷いて、鉋刃の裏を軽く研摩する。
写真 金盤と400番手のペーパー
下写真のように研磨する前に赤いマジックで塗っておいた。
写真 寸八鉋「武房」の裏に赤マジックを塗った
下写真のような感じで研磨した。
写真 金盤の上に400番手の紙ヤスリを敷いて軽く研摩
数往復させたら下写真のように錆びも殆ど落とせた。ただし、左端中央付近にある数ミリの錆が地金にかなり深く入っているので、その部分は研磨し切れていない。
写真 寸八鉋「武房」の裏を紙ヤスリで軽く研摩して錆びを取った
下写真のように側面も紙ヤスリ400番手で軽く研摩。
写真 側面も紙ヤスリ400番手で軽く研摩
寸八武房の刃先の角度調整は今回は中止
鉋刃の角度は30度くらいが一般的だと思うが(ネット情報などから)、この「武房」は21度くらいの鋭角なのだ。
ネット情報によると、鋭角だと柔らかい木材には適しているが、堅木を削ると刃こぼれし易いらしい。
と言う事で、下写真のような自作の角度固定研ぎ機を使って刃先角度を28~30度くらいの鈍角に調整しようと思ったのだが、今回は中断した。
写真 ワテ自作の鉋刃の角度研ぎ冶具
下写真のように約28度に角度を設定して、砥石の上を往復運動させれば鉋刃を28度に修正出来る(はずだ)。
写真 ワテ自作の鉋刃の角度研ぎ冶具
下写真は上写真の刃先部分の拡大だ。
写真 現状では寸八鉋「武房」の刃先は21度くらいの鋭角
上写真でも分るように、現状では21度くらいの鋭角なので、これを通常の28度くらいに修正するにはかなり多く削る必要がある。
それをワテの手持ちの荒砥でやるにしても、何分あるいは何十分あるいは何時間も研磨する必要があるかも知れない。
そのように時間を掛けて研いだとしても、期待通りに28度にピッタリ研げる保証が無い。
と言う事で、荒砥で時間を掛けて研ぐのはリスクが大きい。
刃先の角度変更はどんな方法を採用するのが良いのかもう少し調べてから再度挑戦したいと思っている。
グラインダーを使って削れば短時間に削れるし角度の修正もやり易いとは思うが、熱を持つので鋼(はがね)の焼き入れ状態が変ってしまう危険性がある。なので、どうしようかなあと検討中だ。
と言う訳で、下写真のように寸八鉋「最高級 武房 苦心名鉋」の錆び落としは完了した。
写真 寸八鉋「最高級 武房 苦心名鉋」の錆び落としは完了(裏)
写真 寸八鉋「最高級 武房 苦心名鉋」の錆び落としは完了(表)
ちなみに、この鉋「武房」でネット検索してみると、作者は兵庫県三木市の有名な鍛冶屋さん、中野武雄氏との事だ。と言ってもワテは中野氏を知らないが。
有名鍛冶屋さんの手作り鉋なので、新品価格なら数万円くらいかな。だとしたら、ちゃんと手入れして研げば良く斬れるはずだ。
下写真が現在の「武房」の様子。
写真 寸八鉋「武房」
鉋台は何もメンテナンスしていないので、刃を研ぎ終えたら鉋台の仕込みに挑戦したいと思っている。
写真 寸八鉋「武房」
なお、この武房はこの数カ月くらい鉋刃を台から外していた。
その結果、手で刃を挿し込んでも刃口から1cm以上奥に刃がある。要するにきつくなったのだ。
写真 「武房」の刃が刃口から1cm以上奥にある
ネット情報によると鉋刃は手で挿し込んで刃口から数ミリくらい奥に来るのが良いらしい。なので、武房の刃を研ぎ終えたら、台の仕込みを再調整したいと思っている。
寸八 「源 淀 観心作」
次は同じく寸八の「源 淀 観心作」と言う鉋だ。先ほどの武房と同じリサイクル屋で同じ日に買ったやつだ。
なので、同じ所有者だった可能性が高い。実際、この「源 淀 観心作」も刃先の角度が21度くらいの鋭角なのだ。
写真 「源 淀 観心作」寸八鉋
下写真のように所謂ベタ裏になっている。
写真 「源 淀 観心作」はベタ裏になっている
錆びは殆ど無いので、状態は悪くはない。
気になる点はこのベタ裏と、下写真のように頭が潰れているのも気になる。
写真 「源 淀 観心作」の頭が潰れているのが気になる
一つ目の鉋もそうだが、どうやら前の所有者さんは鉋を購入後に台を微調整せずに使っていたのではないかと推測する。その結果、台に対して刃がかなりきついので刃頭をかなり強く叩かなければ刃口から刃が出ない。
あるいは一つ目の鉋のように刃が斜めに出たまま使っていたので毎回右横を強く叩いて刃先の偏りを修正していた。
刃を研ぐ時にも金床などを使って裏出しをせずに研いでいたのでベタ裏になってしまった。
そんな感じに見て取れる。鉋をメンテナンスしながら前の所有者さんがどんな風に鉋を扱っていたのかを推測するのだ。
鉋台は下写真のように、状態は悪くはない。
写真 メンテナンス前の「源 淀 観心作」
下写真のように手持ちの小型グラインダーを使って鉋刃の頭が潰れて捲れている箇所を軽く研摩した。
写真 リョービの小型卓上グラインダーを使って鉋刃の頭の捲れを研摩
下写真のように潰れて捲れていた箇所をかなり削った。こう言う手入れ方法で良いのかどうか自信がないが、あまり潰れているのはワテは好きではないので思い切って削ったのだ。
それに、この鉋も確か1000円くらいで買ったやつなので。
写真 「源 淀 観心作」の頭の潰れをグラインダーで削った
この後、写真には取り忘れたが、全体を真鍮ワイヤーブラシで研磨して磨いておいた。
なお、この鉋「源 淀 観心作」に関してはネット検索しても作者が誰なのかは分からなかった。
寸八 「大自然 地 古式鍛錬」
次は下写真の「大自然 地 古式鍛錬」と言う寸八鉋だ。
これも先ほどの二丁の鉋と同じ店で同じ日に買ったもので、これも刃先が21度くらいの鋭角なのだ。なので、前の所有者さんは杉などの柔らかい木を削る作業が多かったのかも知れない。
写真 「大自然 地 古式鍛錬」メンテナンス前
下写真のように寸八鉋「大自然 地 古式鍛錬」は鉋台は包み口で赤樫っぽい材質なので、高級感がある。
写真 「大自然 地 古式鍛錬」メンテナンス前
赤樫の包み口の寸八鉋「大自然 地 古式鍛錬」は新品で買えば数万円クラスの高級品だと思う。
上写真では分かり辛いが、刃裏の黒い部分には槌目で水玉模様みたいな装飾がされているので、いかにも手作業で仕上げた雰囲気なのだ。
下写真のように銀色になっている箇所(しのぎ面)が幅広なので、刃がかなり鋭い鋭角なのが分かるだろう。
写真 「大自然 地 古式鍛錬」メンテナンス前
上写真のように赤錆が少し出ているが状態は悪くない。
頭の部分も大きくは潰れていないので、大事に使われていたように見える。実際、リサイクル屋で買って来て研がずにそのまま使ってみたが、とても良く斬れるし台の調整も悪くなかった。
写真 「大自然 地 古式鍛錬」メンテナンス前
この後、真鍮ワイヤーブラシで錆びを落としておいた。
今後の予定としては、刃先角度をもう少し鈍角にしてから砥石で刃を付けたい。
寸八 「長光」
四丁目の鉋だ。これも寸八。
同じリサイクル屋で買ったやつだ。確か500円か千円くらい。
写真 寸八「長光」メンテナンス前
上写真のように台の状態は悪い。下写真のように刃先に大きな欠けもある。
写真 寸八「長光」メンテナンス前
この後、下写真のようなブラシを小型リューターに取り付けて研摩した。
写真 安いブラシは買わない方が良い
上写真の安いリューターブラシはリューターの回転数が一万回転くらいを超えるとブラシの針金が飛び散ってバラバラになってしまった。
目を保護する安全ゴーグルをしていたので事故は防げたが、非常に危険な経験をした。
と言う訳でこの真鍮ブラシはまだ残り数十本あるが、普通の小型リューターの回転数は普通に2~3万回転くらいになるので分解する危険性があるので使い物にならない。捨てるかな。
あるいは回転数を数千回転くらいの低速に制御出来るリューターを買いたい。
その後、下写真の製品を購入した。
鑿の錆びを落とす
鑿も十本くらい持っている。
昔から使っているのが二本くらい、残りの数本は中古で入手したものだ。
柄の部分が錆びていても、刃先を研いでいれば斬れるので実用上は問題無い。
でも、見た目が悪いので今回、鉋刃を研磨したのと同じように鑿も錆を落とす事にした。
ただし、先ほどの小型真鍮ブラシをリューターに付けて使うのは針金が飛び散って危険なのと、掃除が面倒なので、下写真のリョービの卓上グラインダーに真鍮ブラシを付けて作業する事にした。
写真 ワテ所有のリョービ(現 京セラ)の卓上小型グラインダー
もともと付いていた研磨バフを下写真のように真鍮ブラシに交換した。
この真鍮ブラシはドライブしていてたまたま立ち寄ったコーナンプロのお店で安売りしていたのを買ったやつだ。どこのお店か忘れた。
写真 リョービ(現 京セラ)の卓上小型グラインダーのバフを真鍮ブラシに交換
下写真がメンテナンス前の鑿だ。
写真 メンテナンス前の鑿
下写真のようにワイヤーブラシを使って鑿の金属部分の錆びを研磨した。
写真 ワイヤーブラシを使って鑿の金属部分の錆びを研磨した
下写真が研磨後の鑿の様子を示す。
写真 研磨後の鑿の様子
下写真のように赤錆も無くなり、見た目が良くなった。
写真 研磨後の鑿の様子
あとは砥石で刃先を研げば良く斬れると思う。
下写真の四本の鑿はどれも一本数百円で買ったやつだ。
写真 表面を真鍮ブラシで研磨した中古鑿
現状ではワテは木工DIYで鑿を使う機会はそんなには多くはない。
写真に写っているような幅広の鑿や長くて丈夫そうな叩き鑿は大工さんが家を建てる時に使うのが一般的だろう。
上写真の770円の追入れ鑿なら、柱にホゾを掘るような用途だろう。
と言う訳で、鑿は当面はそんなに使う頻度は多くはないが、錆び錆びだと運気も下がるので表面の錆びや汚れを真鍮ワイヤーブラシで研磨して綺麗に仕上げる事が出来た。
写真 表面を真鍮ワイヤーブラシで研磨した鑿
ちなみに上写真の定価10,000円の鑿(是善)がリサイクル屋で770円で買ったやつだ。未使用の長期保管品だが、恐らく昭和の頃の古い鑿だと思うので、品物は良い物だと思う。
あとは下写真の手持ちの小刀も赤錆が出ている箇所が有ったので真鍮ブラシで磨いておいた。
写真 真鍮ブラシで磨いて赤錆や汚れを落とした鑿や小刀
まとめ
汚れた刃物を手入れすると気持ちがいい。
良く手入れした鉋で数ミクロン厚の削りカスを出せるくらいになりたい。
そして削ろう会で優勝を目指すのだ。
当記事ではワテ所有の中古の鉋や鑿のメンテナンスの第一回目として、表面の赤錆や汚れを落とす作業を紹介した。
YouTube動画などでも古い大工道具の手入れを解説している人は多い。
その場合、錆びた鉋や鑿などの金属類の錆び落としには、クエン酸やサンポールなどの酸性の溶液を使う人が多い。
確かに酸で溶かせば鉄の錆びは良く落ちるのは分かる。ワテも以前に一度だけ鉋刃の赤錆をクエン酸で落としたのだが、確かに錆びは落ちるが薬品を使うと金属の表面の色合いが変るのが違和感がある。
その後で、重曹(弱アルカリ性)を使って酸を中和する作業も必要だが、中和しても元の色合いに戻る訳でも無いし。
と言う訳で、今回は薬品は使わずに機械的研磨だけで錆び落としを実施した。
真鍮ワイヤーブラシ、100番から400番くらいの紙ヤスリなどを使って赤錆部分を研磨した。
古道具屋で売られている錆び錆び状態の鉋や鑿も、表面を磨けば見違えるように見栄えが良くなる。
鉋台は再利用出来るものは使えば良いし、あるいは新品の鉋台に付け替えれば新品同様の鉋に作り替える事も可能だ。
ワテも鉋台を自分で打ってみたいと思っている。
今後の予定としては、鉋と鑿の研ぎ作業だ。
その前に、鉋刃の刃先角度が21度くらいの鋭角なので、それをもう少し鈍角に削り直したいのだが、どんな方法でやるのが確実なのか調査中だ。
(続く)
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