ワレコ
2021年6月に開始した「金田式DCプリアンプ」のレストアプロジェクトであるが、遂に完了した。
過去に数台のオーディオアンプを自作したが、今回のアンプは今までで最高の一台になった。
その理由は、シャーシの前後パネルをPCBWayさんに発注した黒アルマイト板(穴開け加工、シルク印刷文字入り)で製作したのでメーカー製アンプに勝るとも劣らない美しい仕上がりになったのだ。
前回記事はこちら↴
前回までの作業で、プリアンプの定電圧電源基板、フラットアンプ基板の動作確認は完了している。これらもPCBWayさんに発注した両面スルーホール基板で製作している。
さらに、PCBWay製の黒アルマイト処理したアルミ板を前後パネルに取り付けて、自作シャーシも完成している。
当記事では、これらの基板をシールド線で配線してプリアンプを完成させて試聴するまでの作業を紹介する。
では、本題に入ろう。
電源回路のブリッジ整流基板を組み立てる
電源回路に使うブリッジ整流基板もPCBWayさんに発注した。
今回の金田式アンプ再生プロジェクトでは、全ての基板をPCBWay製黄色レジスト基板で揃えたので見た目も統一感があるのだ。
写真 PCBWay製のブリッジ整流基板(ガラスエポキシ基板 86x70x1.6t)が10枚真空パック
下写真のようにPCBWayさんのガラスエポキシ両面スルーホール基板に、黄色レジストに白色シルク文字の組み合わせで発注すると、昔ながらの紙フェノール基板のような雰囲気になるのでワテ好みなのだ。
写真 KiCad設計しPCBWayさんに発注のブリッジ整流基板(ガラスエポキシ両面スルーホール)
その裏面を下写真に示す。
銅箔厚みは標準の35μmだ。電源回路に使うので電流容量を増やす為に幅広の銅箔パターンを描いて、かつ、部品面と半田面をつなぐ多数のVIAホールを配置している。
写真 ブリッジ整流基板の半田面
この基板には大型電解コンデンサを半田付けするので、下写真のような大型のコテ先を使う。
写真 HAKKO FM-206ハンダステーションで太めのコテ先(T12-BC2Z)を使う
下写真に完成したブリッジ整流基板を示す。
写真 日本ケミコン3300μF 50V電解コンデンサは以前に秋月で一個100円で売っていたやつだ
手持ちには秋月電子で買ったこの日本ケミコン製3300μF 50V電解コンデンサが沢山あるので、残り九枚の基板も今後の電子工作で活用できる。
なお、下写真のようにこの基板は、一回り小型の日本ケミコン製2700μF 25V電解コンデンサを六個取り付けられるように設計している。
写真 日本ケミコン2700μF 25V電解コンデンサ(足間隔10mm)なら六個取り付けられる設計
このコンデンサは以前にヤフオクで安かったので100個くらい買ったのがまだ沢山残っているので、これもどんどん活用したいと思っているのだ。
ボリュームとロータリースイッチの台座を3Dプリンタ印刷する
PCBWayさんに製作依頼した黒アルマイト製のフロントパネル(高さ60x幅210x厚3)にはボリュームやロータリースイッチの取り付け穴もレーザー加工で開けて貰っている。
でも、パネルに直接これらの部品を固定すると、長い軸部分の全体がパネルから飛び出すので切断する必要がある。
写真 ワテ所有の3DプリンタANYCUBIC MEGA Xで印刷した固定台座
まあ金切り鋸で軸を切断しても良いが、ここでは上写真のような固定台座を自宅の3Dプリンタで印刷して部品を固定する方式にした。
そして、その台座を下写真のようにシャーシ底板に両面テープで貼り付けて固定するのだ。
写真 PCBWay製の前後パネル(黒アルマイト処理)と木材とアルミ複合板で製作したシャーシ
ところが、小さめのシャーシに設計したので部品配置の関係でロータリースイッチの軸は少しだけ切り落とす必要が生じたので下写真のようにカットした。
写真 ロータリースイッチの軸を切り落としている様子
ボリュームやロータリースイッチの軸を切断する場合には、上写真のように軸の切り落とす側をクランプしておいて金切り鋸で切るとやり易い。
写真 アルミ軸Φ6を5ミリほど切り落としたALPS製ロータリースイッチ
こういうちょっとした切断作業で便利なのが下写真のピラニア鋸だ。
金属、木材、樹脂など何でも切れる。
配線作業
さて、残す作業は配線のみだ。
まずはAC100V電源周りの配線を行った(下写真)。
写真 Φ6アルミパイプを利用してAC100V電線をスッキリ整理できた
上写真はリアパネルのACインレットやヒューズホルダの辺りだ(下写真)。
ACインレットから入ったAC100V電線はフロントパネルの電源スイッチまで約30cmの距離を配線する必要がある。
その電線をΦ6ミリのアルミパイプの中を通してシャーシ側面に沿わせる事で目立たないようにしたのだ。
写真 配線が完了した金田式DCプリアンプ
電源トランスは今は無きタンゴのCT-20と言う型番のカットコアトランスで 0-17.5-35-70v の出力端子を持っている。
なお、AC100V交流電線をアルミパイプの中を通す事でハムノイズの遮蔽効果があるのかどうかは未確認だ。
あとは、背面の入力RCA端子、ボリューム、フラットアンプ基板、出力RCA端子をモガミ電線のシールド線で接続した。パーツボックスを漁ったら大昔に購入したmogami 2511やmogami 2510が少しだけ有ったのでそれらを使って配線したのだ。
写真 自作の木製大型クリップにシールド線を固定して半田メッキする様子
配線に使ったモガミの電線は太くて硬いので配線がやり辛かった。
下写真はボリューム周りの配線だ。硬いシールド線をどうにか半田付けする事が出来た。
下写真は電源(赤+35Vdc、黒GND、青-35Vdc)を配線した。
これらの電線は金田先生御指定のDAIEI(ダイエイ)電線だ。これも確か若松通商さんで購入したやつが有ったので使った。
写真 太いmogami 2511や2510を使って配線したので金田式風の雰囲気が出ているぞ
まあ本当ならこんな太くて硬くて配線し辛いモガミのシールド線なんて使わずに、普通のAWG24くらいの撚線で配線したかったのだが、一応、金田式DCプリアンプのレストアを目的としているので、金田式純正の配線材料を使ってみたのだ。
と言う事で、どうにか配線作業は完了した。
なお、フロントパネルのロータリースイッチは現状では未使用だ。
将来、例えばイコライザーアンプ基板を搭載した場合には、ロータリースイッチで切り替える事も出来る。
コレットチャック型のツマミを付ける
ボリュームとロータリースイッチにツマミを付けた(下写真)。
写真 Φ6ボリューム軸にコレットタイプのツマミを対辺9ミリナットドライバーで固定
ツマミの取り付け方法は幾つかあるが、ツマミ側面からイモネジで固定するタイプが一般的だ。
でもワテの場合には、上写真のようにコレットチャック式のツマミが好きなのだ。その理由は、コレットチャックだと軸に対して均等に締め付けられるのでその構造が好きなのだ。
と言う訳で、いい感じに出来上がった。
写真 黒色パネルに黒色ツマミを付けてみた
ツマミにキャップを被せると完成する(下写真)。
写真 黒色アルマイトパネル、白色アルミ複合版天板、黒色ツマミのバランス良い配色
ちなみに、ボリューム軸は下写真のようにフロントパネルからΦ6の銅パイプを通して延長している。
写真 ボリューム軸をΦ6mmの銅パイプで延長している
まあこの延長軸に銅を使う必要はないけれども、見た目が綺麗なので銅パイプを採用してみた。
ピカールで磨いてクリアラッカーを塗っている。
下写真のように、黒色の円柱状のカップリングで銅パイプとALPSボリューム軸を連結している。
写真 Φ6mm銅パイプとボリューム軸を樹脂製フレキシブルカップリングで連結
写真 コレットチャックタイプのノブはしっかりと固定出来るのでお勧めだ
と言う事で、無事に組み立て完了したので次は動作確認作業を行う。
金田式DCプリアンプをぺるけ式アンプ試験ワークベンチでテストする
アンプの動作確認は、前回記事の時点でも完了している。
当初は左右チャンネル共に発振していたのだが、フラットアンプ基板の差動二段増幅回路の二段目の2SA726Gのベース・コレクタ間に位相補正マイカコンデンサ2pFを追加したら発振は止まった。
その辺りの顛末は下記事参照。
ここでは、リアパネルの入力RCA端子からパルスジェネレータ信号を入れて、出力RCA端子の信号をオシロスコープで観察する。
かつ、ボリュームを回して正しく音量が変化するかどうかも確認するのだ。
先日自作したぺるけ式アンプ試験ワークベンチを使うと、この手の計測がとても簡単に行えるのだ。
写真 右側の二個のBNC端子から出た信号をアンプ背面の入力RCAに入れる
まずは、Lチャンネルの動作確認を行うので、下写真のようにL/R SelectスイッチをL側に倒す。
写真 紅白ケーブルはアンプ背面の出力RCA端子から来ている
下写真にアンプリアパネルのケーブル接続の様子を示す。
写真 金田式DCプリアンプのリアパネル
上写真では、PHONO、CD、・・・などの入力RCAジャックは穴はあるが取り付けていない。
将来、イコライザーアンプを搭載した場合はPHONO入力を追加するかな。
あと、金田式DACを以前に自作したので、そのDAC出力を繋げるようにDAC用RCAジャックを付けるかどうかも検討中だ。
Lチャンネルのテストの様子
上波形 Lチャンネル入力 100KHz 方形波
下波形 Lチャンネル出力
写真 Lチャンネル入力(上)とLチャンネル出力
上写真で入力波形(上)に若干のオーバーシュートやリンギングが見られるが、その出力波形は立ち上がりと立下りが若干斜めになっているが100KHzの方形波なのでこれなら良い性能だと思う。
ちなみにワテが使っているオシロスコープはテクトロニクスの2467B(400MHz)だ。もう十年以上前にヤフオクで中古で買ったやつだ。
Rチャンネルのテストの様子
上波形 Rチャンネル入力 100KHz 方形波
下波形 Rチャンネル出力
写真 Rチャンネル入力(上)とRチャンネル出力
上写真のRチャンネルのテスト結果を見ると、先ほどのLチャンネル出力と比較して、こちらのRチャンネル出力は少しだけオーバーシュートが見られる。
何でかな?ちょっと気になるがまあいいか。
ボリュームの動作確認成功
さて、最後にボリュームの動作確認だ。
よくある失敗として、ボリュームを右に(=時計回りに)回していくと、本来は音量が大きくなるべきなのに、配線間違いをしてしまい逆に音量が小さくなる事がある。
ワテの場合も過去に何度かそんな失敗をしたが、今では事前に実体配線図をノートに手書きして確認しながら配線作業を行うので、そんな初歩的な失敗はまずやらないと言うのは嘘で、今でも時々間違える。
あかんがなw
で、下写真のボリュームを回してみた。
その結果、下写真のようにボリュームを左に回すと出力信号(下)は小さくなったので正常だ。
写真 入力(上、500KHz、振幅±1V)でボリュームを絞った時の出力波形(下)
一方、右に回すと下写真のように出力信号は大きくなったので正常だ。
写真 入力(上、500KHz、振幅±1V)でボリューム最大の出力波形(下)
と言う訳で、ここに金田式DCプリアンプは無事に完成したのだ。
銅製ツマミを付けてみる
いやぁ、大きなトラブルもなく無事に金田式DCプリアンプのレストアに成功したので気分が良い。
さて、もう少しだけこのアンプに手を加えてみる。
現状では、黒色アルマイトパネルに黒色ツマミだ(下写真)。
写真 PCBWay製黒アルマイトパネル(60x210x3t、白シルク印刷文字)と黒ツマミ
まあこのデザインでも悪くは無いのだが、ボリュームツマミはもう少し太い方が掴みやすい。
そこで自作のツマミを作ってみた。
まずは、3Dプリンタで下写真のような形状のパーツを印刷した。
写真 自作ツマミに使うパーツを3Dプリンタで印刷した
そのパーツを下写真のツマミに被せるのだ。
その結果、下写真のようになる。
写真 3Dプリンタで印刷したパーツを被せたツマミ
そこに銅製のキャップを被せてみた(下写真)。
写真 銅製キャップを被せて自作したツマミ
どう!?
いい感じじゃない!?
下写真のように銅色が鮮やかだ。
写真 自作の銅製ツマミで高級感がアップした金田式DCプリアンプ
ちなみに、黒色ツマミバージョンは以下の通り。
写真 黒色ツマミバージョンの金田式DCプリアンプ
やっぱり銅製ツマミのほうが見た目も綺麗だし、太っといので掴みやすいぞ。
写真 銅の光沢はピカールで磨いてクリアラッカー塗装で仕上げた
と言う訳で、メーカー製の超高級プリアンプに勝るとも劣らない金田式DCプリアンプが完成した。
写真 銅製ツマミで装飾したら高級感がアップした金田式DCプリアンプ
綺麗に仕上がったのでいろんな角度から写真を撮影した。
せっかくなので、世間の皆さんにお見せしたい。
写真 天板、底板はA4サイズ(210x297x3t)のアルミ複合版
サイドウッドは高さ60ミリのエゾ松材で、60x910x12のものをホームセンターで500円くらいで買って来て 306x60x12 にカットしている。
その表面に水性着色ニスでウォルナット色に塗っている。
写真 PCBWay製黄色レジスト基板を採用したので金田式サンハヤト基板風に仕上がった
下写真にリアパネルの様子を示す。
写真 幅210x高60x厚3の黒アルマイトパネルに白シルク印刷文字が生える
ACインレット、ACアウトレット、ヒューズホルダ、RCAジャックなどの取り付け穴はPCBWayさんのレーザーカット加工で開けて貰っているので、非常に精度良く仕上がっている。
この手の金属加工を自分でやってもここまで綺麗に仕上げるのは困難だ。
金田式DCプリアンプを試聴する
完成した金田式DCプリアンプを聴いてみる。
下写真のように配線した。
写真 左:ぺるけ式ヘッドホンアンプ、右:ぺるけ式秋月USB-DAC
上写真右側の茶色シャーシのぺるけ式秋月USB-DACで音楽を再生して、それを金田式DCプリアンプに入力する。
金田式DCプリアンプ出力は左のぺるけ式ヘッドホンアンプ(確かVer.3かな)に入れて、オーディオテクニカ ATH-A900Tiで聴いてみた。
無音時にボリューム最大でもホワイトノイズがほんの少し聞こえる程度だ。
これは素晴らしいぞ。
そしてYouTube動画を再生してみた。
動画 Simon & Garfunkel – The Sound of Silence (from The Concert in Central Park)
今回レストアした金田式DCプリアンプを最初に作った時に、確かこのLPレコードを聴いた記憶がある。
レストア版金田式DCプリアンプで聴くサイモンとガーファンクルのセントラルパークパークコンサートで、その時の感動が蘇って来たぞ。
いい音だ。
ナチュラルサウンドで、長時間聴いていても疲れないし心地良い。
でも待てよ。もしかするとそれは金田式DCプリアンプの音と言うよりもぺるけ式秋月USB-DACやぺるけ式ヘッドホンアンプの音なのかも知れない。
と言う事で、オール金田式オーディオ機器で聴いてみないと金田式の音を聴いた事にならないな。
まとめ
ワレコ
自作オーディオ機器を作る場合には、見栄えの良いシャーシをいかにして作るかと言うのが課題だ。
今回ワテが採用した手法は、フロントパネルとリアパネルの二枚のアルマイト板に穴開け加工とシルク文字印刷をPCBWayさんの金属加工メニューで発注し、完成したパネルを自作木製シャーシに接着剤で貼り付けると言う簡単なものだ。
二枚のパネルの製作費用は約八千円、あとは木材の費用は数百円程度。A4サイズのアルミ複合版を底板と天板に使ったが、これらもネット通販やホームセンターで購入可能だ。
その結果、シャーシに掛かった費用は一万円程度。そんな安い費用で穴開け加工やシルク文字印刷が施された高級感満点のシャーシが完成するのだ。
もし日本の金属加工業者さんにタカチのサイドウッドシャーシを持ち込んで同様の加工してもらったら、恐らく数万円の費用が掛かるだろう。
それだと手軽には利用出来ない。
そう言う点でもPCBWayさんにパネルを発注する方式はオーディオ機器の自作を趣味とする人には最適だと思う。
今後の予定としては、以前に自作した金田式DACのシャーシがみすぼらしいので、そのシャーシも今回紹介したPCBWay金属加工を利用して、お揃いのスタイルに作り直したいなあと思っている。
(続く)
コメント
ホノアンプまで実装したんですか!
fan様
この度は小生の記事にコメントありがとうございます。
さて、PHONOアンプは現状では作っていません。
作ったのはFLATアンプのみです。
なお、PHONOアンプのプリント基板はFLATアンプの基板と共通化していますので、まだ九枚残っているので、将来レコードを聴きたくなったらPHONOアンプも作るかも知れません。
その時の為に、シャーシの中にもPHONOアンプを入れるスペースを空けています。