さて、今話題の豊洲市場の移転問題であるが、水質検査の手法を巡って(めぐって)迷走している。
要約すると以下の通り。
今まで東京都が行った地下水モニタリングでは、市場敷地内の201カ所に於いて、井戸に溜まった地下水を取り除く「パージ」と呼ばれる作業を行った後で、新たに溜まった地下水を取って分析していた。
1~8回目までの測定
1~8回目までの測定を行った分析会社はパージ翌日か翌々日に地下水を採水していた。
9回目の測定
一方で2016年11月に9回目の調査を始めた会社(横浜市の湘南分析センター)の担当者は、201カ所の大半でパージ当日に採水したと説明した。
この事実は都議会の特別委員会が2017年3月4日開かれ、参考人招致された業者が証言したとの事だ。
この9回目の計測値の中に、基準値の79倍のベンゼンが検出された地下水が見つかったのだ。
さて、何が問題なのか?
新聞やテレビのマスコミ報道では、9回目の測定に於いて今までとは異なる手法を使っているからそれが問題のような論調が多い気がする。
果たしてそんなに単純な問題だろうか?
ちなみに、新聞情報によると、この手の水質検査を行う場合の国のガイドラインでは採水時期を示していないとの事。
つまり、井戸に溜まった地下水をいつ採取して分析しても良いのだ。
まあそうだろうなあ。
1~8回目まではパージして新たに溜まった水を翌日か翌々日に採水して測定。
9回目はパージした当日に採水して測定。
1~8回目の1~2日寝かせてから採水して測定した結果と、9回目のパージ当日に採水した鮮度の良い水の測定結果とを比較して、どっちの測定が良いとか悪いとか決められないよね?
1~2日寝かせてから採水した測定結果では環境基準を超える結果が出ていないという事は、寝かせてる間に有害物質が蒸発したなどの可能性もあるだろう。
そもそも測定方法が異なると結果が異なる事は予測出来る訳なので、一番大きな測定値を採用するなどの方法もあると思う。
つまり、無い物は出ないが、出た以上それはその測定値が正しい考える立場もあるだろう。
それに、井戸に溜まった地下水を取り除く「パージ」と呼ばれる作業そのものも必要性があるのかどうかは未確認だが、既に溜まっている汚染水を捨ててから新しく溜まった水を測定する根拠も明確ではないと思う。
なぜ既に溜まっている水を分析せずに捨てるの?
例えば雨水などが混じって薄まっている可能性があるという判断なのか?
だとしても、その水の分析もするべきだろう。
あるいは既に溜まっている水を分析したら、逆に物凄く高い濃度の汚染物質が出たのでそれは捨てて、毎回新しい水を分析していたのかと疑う人も出るだろう。
つまり、何が問題かと言うと、豊洲市場の約40.7ヘクタールの広大な土地の中で、地下水を採取して分析すれば、毎回同じ測定結果が得られるとは思えない。
40ヘクタールと言うと、400m X 1000m の長方形の面積だ。
例えばこんな状況を考えれば分かり易い
400m X 1000m の巨大な沼がある。
その201カ所であなたが水質検査を行う立場になったと考えてみよう。
天気が良く、風もなく穏やかな日に沼にボートを浮かべて水面付近の綺麗な水を201カ所で採取すれば、その水はかなり綺麗な水だろう。
一方、雨が降ったり風が吹いたりしている状況で水を採取すれば泥水が採取されるだろう。
あるいは、意図的に水質汚染を強調したいなら、沼の底を棒か何かでかき回してドロドロのヘドロを拡散させた状態で水を採取すれば、ますます汚い水を採取出来る。
要するに、人為的に幾らでも細工が出来るのだ。
と言う事で、移転推進派なら出来るだけ綺麗な水を採取して汚染物質が出ないようにしたいと思うのは当然だろう。
逆に移転反対派なら、その逆の発想になるだろう。
1~8回目までの計測と9回目の計測手法の違いはそんなものかもしれない。
問題の本質は、そんなものではなくて
ワテに言わせれば40ヘクタールの土地の地下水を何十億円も掛けて201カ所で水質検索を繰り返したところで、豊洲市場の安全性証明には何の根拠にもならないという事だ。
何故か?
それは、豊洲市場の土壌からは環境基準の4万3000倍という高濃度のベンゼン検出されたと言う事実があるからだ。
東京都のページにある以下の記録にその事実が記載されている。
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石原知事定例記者会見録
平成20(2008)年5月16日(金) 15:04~15:35
豊洲新市場予定地における土壌・地下水調査の結果について
【知事】もう1つは、豊洲新市場予定地における土壌・地下水調査の結果ですが、これはとってもショッキングなデータが報告されまして、今年の2月から豊洲新市場予定地で実施してきました4122カ所、これはちなみに10メートル平方のメッシュでやっている訳ですけども、その詳細調査において、既に一部報道されましたように、敷地の一部、これはあくまでも1カ所ですね、1ポイントでありますけれども、環境基準の4万3000倍という高濃度のベンゼンが土壌から検出されました。しかし、敷地全体が、こういう高濃度の物質で汚染されている訳ではありません。
引用元 東京都
上の石原都知事の発言では、環境基準の4万3000倍のベンゼンが出たのは敷地の一部の1カ所のみなので、敷地全体が高濃度の物質で汚染されている訳ではありませんとの事だが、そんなのは分からない。
逆に、もっと高濃度のベンゼンに汚染されている可能性すら否定できない。
たまたま測定されたのが4万3000倍のベンゼンという事実だけだ。
それよりも多いベンゼンが出る可能性もある。
東京ガスの化学工場跡地だから地下水が汚染されていて当然
要するに、根本に戻って考えれば、そもそもこんな汚染物質満載の豊洲市場に移転すると決めた以上、それが正当な手続きに則って決定されたのならベンゼンが4万倍出ようが出まいが移転を推進するべきなのだ。
でも、こんな汚染物質満載の土地に移転を決めた経緯に何らかの違反とか違法な行為があるなら、正すべきである。
そのどっちかしかないのだ。
つまり、地下水なんて分析している場合では無い。
地下のもっともっと汚い水をすくってくれば、何万倍ものベンゼンが出せるだろう。
ところが、移転推進派や移転反対派は、水の分析手法が違っているなどというどうでもいいネタを武器にして、互いに攻撃し合っている感じ。
世間の皆さんはそんな低レベルな議論に胡麻化されてはいけない。
移転がスムーズに行かなかった最大の原因は何か?
移転がスムーズに行かなかった最大の原因は土地・建物に6000億も掛けているにもかかわらず、豊洲市場に引っ越す予定の業者さんから以下のような問題点が指摘された事だと思う。
ワテの知っているものを列挙すると以下の通り。
- 店舗の間口が狭くて使い勝手が悪い(マグロを切る長い包丁が壁に当たり使えない)
- 通路幅が狭くてターレーという運搬車がすれ違う事が出来ない可能性がある
- 床の耐荷重が少なくて重いターレーが多数通行すると床が抜ける?
- エレベーターが狭いのでターレーが渋滞する
これら以外にも聞き漏らしているものがあるかも知れない。
仮にこんな問題点が全く出なくて、全ての業者さんも当初の計画通りに移転を希望していたなら、地下に予定外の空洞が有ろうと無かろうと、あるいは、地下水から環境基準を上回る汚染物質が出ようが出まいが、計画通りに引っ越しが行われていた可能性が高いと思う。
地下水が汚染されている事は、当然の事実だし、汚染されていてもその水を飲む訳ではないから、引っ越したとしても実質的に食品には問題は無いだろう。
6000億円も掛けておきながら、そこに入居する業者さんの満足を得られないような建物を作ってしまった事が最大の問題だろう。当事者不在のお役所仕事の典型だろう。
設計段階から何度でも築地の業者さんと打ち合わせして、全員が納得した上で設計図にOKを出して、その通りの建物を作れば良かったのだが。これって家を建てる場合でも、当然やる手順だろう。
ところが豊洲の場合には、建物が完成してからその間取りだとか、通路の構造だとか、エレベーターの広さとか、そんな重要なことが建物が完成した後でようやく業者さんに伝わっている感じ。
そんなインチキなやり方で建物を建設するなんて言うのは、一体全体なぜそんな事になるの?と聞きたい。
もし業者さんが全員、ああこれは良い建物だ、早く引っ越したいという意見でまとまっていれば、世論としても多少地下水が汚染されていた程度では移転に反対する程のことも無いなあとなり、予定通りに2016年の11月にスムーズに引っ越しが完了していたと思う。
ワテの今後の予想
小池百合子氏は、アリババグループ創業者のジャック・マー氏(現会長)と極秘会談したとの報道を見た。
シャープも中国に買収されて、豊洲も中国に売却となると日本の国民の皆さんとしてはあまり良い気分ではないかもしれない。
たぶんアリババには売らないと思うなあ。
アマゾンなどの名前もネットには出ているが、豊洲という都心の一等地は物流センターに使うよりも、多くの人が利用出来る何らかの施設に改装するほうが観光客誘致にも役立つと思う。
なので、カジノに改装するのが良いような気がするなあ。
でもまあ、カジノのようなギャンブルとかアミューズメント施設への転用となると、ますます利権が絡みそうで、その交渉の行方はますます泥沼化するかも知れない。
ここは小池百合子氏の手腕に期待したい。
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