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【ワレコの電子工作】ぺるけさんの「入手可能部品で作る ヘッドホン・アンプ」をLTspiceシミュレーション

この記事は約15分で読めます。
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ワレコ
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電子回路シミュレーターLTspiceはとっても便利だ。

ぺるけ式アンプで有名なぺるけさんのサイトで、先日(2019年7月19日)ヘッドホンアンプの新作が発表された。

そのヘッドホンアンプをLTspiceでシミュレーションしてみたので、当記事で紹介したい。

ワテもこのヘッドホンアンプを作ってみようかなあと思ったので、取り敢えずLTspiceで回路図を描いてみただけだが。

結論としては、ぺるけさん実測値とLTspiceシミュレーション結果は、かなりの精度で一致している事が確認出来た。

では、本題に入ろう。

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ぺるけさんの「入手可能部品で作る ヘッドホン・アンプ」はどんな回路か?

参考までにそのぺるけさんの記事のページをキャプチャー画像で紹介させて頂く(下図)。

写真 ぺるけさんの「入手可能部品で作る ヘッドホン・アンプ」のページのキャプチャー

引用元 http://www.op316.com/tubes/hpa/2019-hpa.htm

ぺるけさんによると、元々この「入手可能部品で作る」ヘッドホンアンプは、書籍として出版される予定で有ったとの事だ。

ところが病気の為に出版を断念されたので、自作オーディオファンの方々の為に記事として公開されたとの事だ。

と言う事で、ワテも過去にぺるけさんに部品頒布でお世話になったので、自作オーディオファンの一人として、このヘッドホンアンプを自作したいと思っている皆さんの為に何か参考となる記事を書いてみようと思い立ったのだ。

で、昔から使っているLTspiceでシミュレーションしてみたので、そのシミュレーション結果を紹介してみる事にした。

昔は電子回路をSPICEシミュレーションするなんて言うのは、業務用の何百万円もするEDA( electronic design automation)と呼ばれる電子回路設計ツールを使わなければ出来なかった。

でも今では、パソコン上で簡単に使える電子回路シミュレータやプリント基板設計ツールも多数ある。

ワテの場合は電子回路シミュレータはLTspiceを良く使っている。LTspiceは回路図エディタとSPICEシミュレーション専用ソフトと言う単純な構成なので分かり易い。

かつ、Linear Technology社、Analog Devices社の主要なオペアンプ、ICのデバイスモデルが標準でライブラリに入っているのでソフトをインストールするだけで直ぐに設計を開始出来る。

あるいは他社製のデバイスでもそのSPICEモデルファイルを入手できればLTspiceに組み込む事も簡単だ。

一方、プリント基板設計はKiCadと言う有名なフリーのツールをワテは今年から少しずつ勉強している。

KiCadは回路図エディタ、プリント基板エディタ、SPICEシミュレーションの機能を含む統合EDAソフトなので、これを使いこなせば自分で設計したプリント基板で何でも好きな物を作れるぞ。

今のところ、ワテの場合はそこまでは使いこなせていない。

是非、今年中にはプリント基板を設計して外注してみたい。

➡️その後、猛勉強して今ではワテはKiCadの達人だ(自称)。

さて、本題に戻って、ぺるけさん設計の「入手可能部品で作る ヘッドホン・アンプ」の回路図を見てみよう。

「入手可能部品で作る」トランジスタ差動2段ヘッドホン・アンプ

ぺるけさんのサイトから「入手可能部品で作る」トランジスタ差動2段ヘッドホン・アンプの回路図を引用させて頂く(下図)。

図 ぺるけさん設計の「入手可能部品で作るヘッドホン・アンプ」の回路図(アンプ部分)

引用元 http://www.op316.com/tubes/hpa/2019-hpa.htm

電子回路初心者のワテであるが、この回路は差動二段+SEPPと言うくらいは理解出来る。

それと、ぺるけさんの他の製作例ではFET入力が多いが、この回路はトランジスタ入力だ。FETよりも入手し易いトランジスタ方式で設計されたと言う事だろう。

あと、NFBの部分が抵抗とコンデンサを複数個組み合わせた複雑な構成だ。どんな風に設計するとこんなNFB回路になるのかなど、理由は全く理解出来ていない。

この回路の詳しい解説はぺるけさんのサイトのオリジナル記事を読んで頂くのが良い。ワテの場合、これくらいしか分かっていないので。

さて、上図の回路図には TTC015B、TTA008Bと言うワテが聞いた事もないトランジスタが使われている。

気になったので調べてみた。

バイポーラトランジスタ シリコンNPNエピタキシャル形
TTC015B
バイポーラトランジスタ シリコンPNPエピタキシャル形
TTA008B

製品量産開始時期
2013-08
1. 用途
• 電力増幅用
• 電力スイッチング用
2. 特長
(1) 直流電流増幅率が高い : hFE = 100200 (IC = 0.5 A)
(2) コレクタエミッタ間飽和電圧が低い :VCE(sat) = 0.5 V (最大) (IC = 1A)
(3) スイッチング時間が短い       :tstg = 400 ns (標準) (IC = 1 A)
(4) TTA008Bとコンプリメンタリになります

製品量産開始時期
2013-09
1. 用途
• 電力増幅用
• 電力スイッチング用
2. 特長
(1) 直流電流増幅率が高い : hFE = 100200 (IC = -0.5 A)
(2) コレクタエミッタ間飽和電圧が低い :VCE(sat) = -0.5 V (最大) (IC = -1A)
(3) スイッチング時間が短い       :tstg = 300 ns (標準) (IC = -1 A)
(4) TTC015Bとコンプリメンタリになります
項目 記号 定格 単位
コレクタ・ベース間電圧 VCBO 160 V
コレクタ・エミッタ間電圧 VCEX 160
  VCEO 80
エミッタ・ベース間電圧 VEBO 7
コレクタ電流 (DC) (注 1) IC 2 A
コレクタ電流 (パルス) (注 1) ICP 4
ベース電流 IB 0.5
コレクタ損失 PC 1.5 W
コレクタ損失(Tc = 25℃) PC 10
接合温度 Tj 150
保存温度 Tstg -55~150
項目 記号 定格 単位
コレクタ・ベース間電圧 VCBO -80 V
コレクタ・エミッタ間電圧    
  VCEO -80
エミッタ・ベース間電圧 VEBO -7
コレクタ電流 (DC) (注 1) IC -2 A
コレクタ電流 (パルス) (注 1) ICP -4
ベース電流 IB -0.5
コレクタ損失 PC 1.5 W
コレクタ損失(Tc = 25℃) PC 10
接合温度 Tj 150
保存温度 Tstg -55~150

 

引用元 http://akizukidenshi.com/download/ds/toshiba/TTC015B.pdf

引用元 http://akizukidenshi.com/download/ds/toshiba/TTA008B_datasheet_ja_20150122.pdf

 

注: 本製品の使用条件 (使用温度/電流/電圧等) が絶対最大定格以内での使用においても, 高負荷 (高温および大電流/
高電圧印加, 多大な温度変化等) で連続して使用される場合は, 信頼性が著しく低下するおそれがあります。
弊社半導体信頼性ハンドブック (取り扱い上のご注意とお願いおよびディレーティングの考え方と方法) および
個別信頼性情報 (信頼性試験レポート, 推定故障率等) をご確認の上, 適切な信頼性設計をお願いします。
注 1:接合温度が150 を超えることのない放熱条件でご使用ください。

引用元 http://akizukidenshi.com/

東芝デバイス&ストレージ株式会社の製品だ。

東芝メモリは外資ファンドに売却されたが、東芝には多数の子会社があり、東芝デバイス&ストレージ株式会社もその一つだ。

似た様な名前だが、東芝デバイス株式会社(旧東芝電子デバイス販売株式会社)と言うのもある。ややこしくてもう訳分からんが、兎に角、東芝は今でもLSIなどの多数のデバイスを製造しているのだ。

さて、本題に戻って、

TO-126Nと言うフルモールド型のパッケージなので扱い易そう。

コレクタ・ベース間電圧がNPN:160V/PNP:-80Vと高いので汎用性があると思う。

日本製のトランジスタは2SA、2SB、2SC、2SDの名前が付くが、この東芝の製品はその形式では無くて、TTCとかTTAとか言うワテが知らない型式で始まる。

何でかな?

組立て拠点情報「中国」との事なので、日本製では無いから2Sで始まらないのかも知れない。

分からんので次に進もう。

プラス・マイナス電源回路

図 プラス・マイナス電源回路(ぺるけさん設計の「入手可能部品で作るヘッドホン・アンプ」)

引用元 http://www.op316.com/tubes/hpa/2019-hpa.htm

この電源回路は、ぺるけさんのアンプでは良く採用されているACアダプターを使って正負電圧を生成する方式だ。

でも、SEPP回路が入っているぞ?

ぺるけさんの解説を引用させて頂くと以下の通り。

一見してSEPP回路そのものであることがわかります。約15Vを2分割してSEPP回路のエミッタ出力にあたる部分をアースにつないでいます。この回路は、プラス側の供給電流とマイナス側の供給電流にアンバランスが生じても、SEPP回路がそのアンバランスを吸収してくれます。

引用元 http://www.op316.com/tubes/hpa/2019-hpa.htm

そう言う事か。

でも実は電子回路初心者のワテなので、良く分かっていない。

LTspiceシミュレーションしてみる

シミュレーションに使ったトランジスタは、2SC1815, 2SA1015,  2SC3421, 2SA1358などのモデルだ。ネットで見付けたデバイスモデルを使っている。

hFEのランクなどは未確認だ。

図 ぺるけさん設計の「入手可能部品で作るヘッドホン・アンプ」をLTspiceシミュレーション

簡単にするために、電源回路のスパークキラーやインダクタは取り除いてシミュレーションしている。

ダイオードはぺるけさん指定のデバイスモデルが準備出来なかったので、LTspiceの標準ライブラリから適当に選んだ奴だ。そのモデルで良いかどうかなどは未確認だ。

ちなみに、LTspiceでは入出力端子に好きな名前を付けられるが、出力端子はヘッドホン出力なので「🎧出力」なんて名前を付けても正常動作した。

つまりまあUnicodeにある文字なら絵文字であっても利用出来るみたい。

transient解析をやってみる

まずはtransient解析をやってみた。

.tran 1m

この解析では、時刻0から1m(1ミリ秒)までの期間の各ノードの電圧や電流がモニター出来る。ノードとは回路図中の任意の配線だ。

周波数10KHzで振幅1ボルトのサイン波を入力(緑)して、出力波形(青)を見てみる。

図 ぺるけさん設計の「入手可能部品で作るヘッドホン・アンプ」transient解析結果

お~、素晴らしい。

ちゃんと増幅されている。そりゃまあ、ぺるけさんの設計だから間違い無いだろう。

ゲインが2.5倍程度で有る事が分った。

ワテの場合、それくらいしか分からない。

入力波形は自由に設定出来るので、サイン波だけでなく矩形波なども勿論入力可能だ。

AC解析をやってみる

AC解析とは、周波数特性の解析だ。利得や位相の情報が分かる。

.ac dec 1m 1 1meg

1mは1ミリヘルツ、1megは1メガヘルツを意味する。

周波数1Hzから1MHzまでの解析結果のグラフを以下に示す。

図 ぺるけさん設計の「入手可能部品で作るヘッドホン・アンプ」AC解析結果

まあ、シミュレーションでは非常にフラットな周波数特性(緑実線)を示している。

で、実際はどうなんだろうか?と誰もが思うだろう。

ワテも思う。

AC解析結果と実測値の比較

ぺるけさんの実測値があるので引用させて頂く(下図)。

図 実測特性(「入手可能部品で作るヘッドホン・アンプ」AC解析)

引用元 http://www.op316.com/tubes/hpa/2019-hpa.htm

お~、LTspiceのシミュレーション結果とほぼ完全に一致している。

100KHz辺りからゲインが落ちて行くカーブもそっくりだ。

ぺるけさんの製作例では、必ずこんな実測結果が紹介されている。

物凄く仕事が丁寧だ。

ワテも見習いたいが、怠け者なのでそこまで厳密にデータを取れない。

で、ぺるけさんの実測では、

利得 2.55倍(8.1dB)

周波数特性 5Hz~170KHz(-1dB)

引用元 http://www.op316.com/tubes/hpa/2019-hpa.htm

との事なので、LTspiceシミュレーション結果とも良く合致している。

電子部品の入手方法

トランジスタ、FETの入手に関して

東芝の汎用トランジスタ2SA1015、2SC1815は数年前に製造中止になった。またFETの2SK30、2SK117, 2SK170なども同じく製造中止だ。

市場には流通在庫が出回っているが値段も数年前に比べると数倍になっている感じ。

今後、益々値上がりするかも知れない。

10年後くらいには、「1980年物の東芝純正2SC1815-GR」とかが一個1000円とかの世界になるのかな?

それも「つや有り」「つや無し」で値段が違うとか。そんなオペアンプもあるらしい。

真空管の世界ならプレミア価格で値段が高騰している「Western Electric 真空管 300B」みたいなもんか。ワテの場合、真空管に関しては全く詳しくはないが。

まあ、トランジスタに関してはそんなに値段が高騰する事は無いだろう。セカンドソースもあるし、ディスクリートデバイスを今でも製造しているメーカーもあるし。例えばイサハヤ電子株式会社さんなど。

ワテの場合は、東芝が2010年7月に2SC1815を「新規設計非推奨」指定を発表したニュースを見て、今後、自分で使うくらいの数のTRやFETを数種類、秋月とかサトー電気さんなどから購入したものがあるので、当面はそれを使えば自作は可能だ。

でも、これからオーディオ機器の自作を始めようと思っている皆さんは、製造中止になったディスクリートデバイスの入手は難しいだろう。

そう言う場合は、東芝純正などには拘らずに、セカンドソース品でも良いと思う。

あるいは、特性が似たような外国製のトランジスタを自分で探して使ってみるのも良いと思う。ワテもそんな経験はある。

アマゾン、楽天市場、ヤフーショッピングで電子部品を買う

アマゾンでトランジスタ の 売れ筋ランキングを全て見たい人はこちら。

アマゾンで抵抗器の 売れ筋ランキングを全て見たい人はこちら。

アマゾンでコンデンサの 売れ筋ランキングを全て見たい人はこちら。

トランジスタ、抵抗、コンデンサを買っておけば電子回路の自作はほぼカバーできるだろう。

まとめ

ワレコ
ワレコ

当記事では、ぺるけさん設計の「入手可能部品で作る ヘッドホン・アンプ」をLTspiceでシミュレーションしてみた。

LTspiceは使い方が簡単なのでお勧めしたい。

シミュレーションの手順は簡単だ。

  • トランジスタ、抵抗、コンデンサなどを配置して配線してアンプなどの回路図を描く
  • 電源(単電源、正負電源など)を配置する
  • 入力信号源を配置する
  • グランドも最低一個は必要
  • シミュレーションコマンド(.tran 1m のようなやつ)を配置する

このように準備してやれば、あとは実行ボタンをクリックすれば今回のような素直な回路なら瞬時に結果が見られる。

各ノードの電位や素子を流れる電流を見たい場合には、プローブアイコンを置くだけでその点の電位、電流をグラフにプロットしてくれるのだ。

以下の記事では、LTspiceに関するこれら一連の作業手順を動画で紹介している。

ワテもそろそろ何か自作してみたいと思っている。

このぺるけさんのヘッドホンアンプも興味あるが、ヘッドホンアンプは同じくぺるけさん設計の「FET式差動ヘッドホンアンプ Version 3」を数年前に作ったので、ヘッドホンアンプばかり作っても使わないと勿体ないので、何か別のものを作りたいと思っている。

例えば、カーオーディオで使うアンプとか。

LTspiceを学ぶ

ワテの場合は、LTspiceは独学で勉強した。

でも最近では良い教科書も何冊も出ているので、どれでも良いから一冊読めば大体の操作方法はマスター出来るだろう。

おすすめ関連記事

以下の記事もぺるけさんのサイトを参考にさせて頂いたものだ。

ぺるけさんの本を買う

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この記事には読者の方からコメントが 4件あります。
興味ある人はこのページ下部にあるコメントを参照下さい。

Spiceシミュレーション
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コメント

  1. スマホ寿司 より:

    興味深く読ませていただきました。ありがとうございます。

    • wareko より:

      スマホ寿司様
      この度は小生のサイトにコメントありがとうございました。
      今年も何かぺるけさん設計のオーディオ機器を作ってみたいと思っています。
      真空管アンプにも挑戦したいと思っています。
      では、また何か良い情報などありましたらお教えください。

  2. トランジスタの命名規則ですが、1993年にJISの該当項目が廃止されて自由に命名できるようになったようです。
    それでも、東芝は過去の名残りでNPNは”TTC”、PNPは”TTA”などと’C’と’A’で分かるようにしています。
    TTC015B / TTA008Bの組み合わせとは別に、TTC004B / TTA004Bもオーディオ用として定評があるようです。

    • wareko より:

      三毛にゃんジェロ様
      この度は小生の記事にコメントありがとうございました。
      トランジスタの命名規則に関しまして情報を有難うございます。勉強になりました。
      ちなみにTTCやTTAのTTは東芝トランジスタ(Toshiba Transistor)の頭文字だったりするのでしょうか?ちがうかな?
      最近は木工DIYが多く電子工作から遠ざかっていましたが、これから寒い季節になりますので部屋にこもって電子工作を再開したいと思います。
      教えて頂いたトランジスタは秋月電子で数十円で売っていますので数個買ってアンプでも作ってみたいです。
      では、また何か良い情報などありましたらお教え頂けると嬉しいです。