ワレコ
ワテがCADでプリント基板を設計して基板製造業者さんに初めて発注したのが2019年末だ。
早いもので、もう一年半くらい前の事だ。
初めて自分で設計した専用基板は一週間ほどで自宅に到着したが、その出来栄えには感動した。両面スルーホール基板が簡単に外注出来るのだ。
その専用基板を使って目的の電子回路を作成したのだが、部品を半田付けするだけで完成して、大きなトラブルも無く期待通りに動作したのにも感動した。
従来のワテはユニバーサル基板に手配線していたのだが、配線間違いは一つや二つは必ずやってしまう。
配線間違いを修正したり、取り付け間違いした部品の半田付けを外してやり直すと、熱のダメージでユニバーサル基板の銅箔パターンが剥がれるなど、ますます泥沼にはまって行く。
その結果、電子回路が正常に動かない。
その電子回路の自作はそこで中止。
あかんがな。
電子工作は完成させる事に意味があるのだ。
最近のワテは今では電子工作をやるなら必ず専用基板を自分で設計する。
基板設計には短くても数日、長ければ二週間くらい掛かるが、そうやって設計した専用基板を使えばほぼ確実に電子回路は完成するのだ。
基板製作費も掛かるが、それで確実に電子回路が完成する事を考えれば、必ずしも高いとは思わない。
さて、当記事はワテが大昔に自作した金田式DCプリアンプのレストア作業紹介シリーズの第三回目だ。
今回はプリアンプ基板に部品を半田付けした。PCBWayさんで製作したものだ。
結論としては、二時間程度で半田付けが完了し、簡単な動作確認をしたが大きな問題は無さそうだった。
専用基板設計&PCBWayさんに発注記事はこちら↴
前回記事はこちら↴
では本題に入ろう。
金田式DCプリアンプのフラットアンプを作成する
前回記事では±35V定電圧電源基板が予想以上に簡単に完成した事を紹介した。正直なところ、そんなに上手く行くとは思っていなかった。
なぜなら古い金田式プリアンプの解体部品(トランジスタ、ダイオード、オペアンプ)を再利用するし、それに専用基板を設計したけれど自分では完璧にミスも無く設計出来ていると思うが、でも何か間違えているかも知れないし。
それがあっけないくらいに簡単に動作したのだ。やっぱり、専用基板の威力は大きいぞ。
さて、下写真が金田式プリアンプのEQアンプ・FLATアンプの共通基板だ。
今回はFLATアンプとして作成するので、差動二段増幅回路のNFB回路の部分は、帰還抵抗を一つだけ付ける。もしEQアンプとして使う場合には、その部分にはコンデンサや抵抗を組み合わせたRIAA補正回路を入れる事になる。
下写真の基板はそれらの両方に対応出来るように共通基板化したのだ。
写真 金田式プリアンプ再生プロジェクトで使う基板と抵抗
ワテのパーツボックスを探したら、プリアンプ製作に必要な抵抗値は茶色のプレート抵抗でほぼ揃える事が出来た。
写真 金田式プリアンプ再生プロジェクトで使う角型プレート抵抗など
SSMとかスに丸などの文字がある抵抗は、たぶん進工業の古いやつだと思う。どこで入手したのかすっかり忘れた。秋葉原のスーパージャンク、日米商事電子部さん辺りかも知れない。
何と、日米商事さんのツイッターを見付けた。
(有)日米商事 営業時間
(火)~(金)11:00~19:00
(土日祝)11:00~18:30
(月)定休日
*急用や悪天候など営業が困難の場合に営業時間変更、又は休業する場合がございます。
(可能な限りツイート報告いたします)ご了承ください。— スーパージャンク日米商事 (@superjunkNBS) June 30, 2021
ネットの世界とは無縁だと思っていた日米商事さんがツイッターをやっているぞ!
今年最大の驚きだ。
写真 角型プレート抵抗各種
下写真の基板ホルダーを活用すると半田付け作業がやり易い。
まずは部品を表からスルーホールに差し込む。
写真 ワテお勧めの基板ホルダー
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基板を180度回転させると下写真のように半田面を上向きに出来るのだ。
写真 PCBWay製両面スルーホール基板(86x86x1.6)半田面
もし上写真で、部品が抜け落ちる時には、マスキングテープなどで軽く固定しておくと良い。
下写真のように3.9KΩは中古品が丁度二個だけ見付かった、それを再利用する。
写真 中古ニッコーム抵抗を再利用する。今流行りのSDGsみたいなもんか?ちょっと違うか?
半固定抵抗は1KΩと200Ωを使うが、1KΩは下写真のパネルマウント型しか無かったのでそれを使う。
写真 コパルRJ-13B(上面調整/パネル実装)トリマポテンショメータの足を伸ばして使う
下写真のように抵抗の足間隔は2.54ミリピッチ4個分(=10mm)で設計しているので、角型プレート抵抗の足は少し広げてやる必要がある。
写真 PCBWay製両面スルーホール基板(86x86x1.6)部品面
下写真のように、出力部分に付ける68Ωは大型の角型プレート抵抗がたまたま有ったのそれを付けた。足を内側に折り曲げればどうにか付ける事が出来た。
写真 大型プレート抵抗68Ωも足を曲げれば取り付け出来た
一方、下写真の茶色の円筒形の47KΩは負帰還回路の抵抗だ。その右側には銅線のジャンパー線が見えるだろう。これでFLATアンプとして動作する。
写真 負帰還回路の47KΩ抵抗とジャンパー線(Φ0.53銅単線)
上写真はFLATアンプの構成だが、もしEQアンプにする場合には、基板上のシルク文字に描いているように、5100p, 1500pの二つのコンデンサと、820K, 51K, 1.2Kの三つの抵抗を付けると良いのだ。
差動二段増幅回路の初段に入っている位相補正20pF(双信マイカ)であるが、手持ちには18pFしか無かったのでそれを使う。
写真 マイカコンデンサ、180表記は18×100なので18pFを表す
下写真は2.2μF/35Vタンタルコンデンサだ。
写真 2.2μF/35Vタンタルコンデンサ(MARCONの文字があるのでマルコン電子製かな)
参考にした「最新オーディオDCアンプ 誠文堂新光社」の回路図にも2.2μF/35Vと記載されているが、電源回路が±35Vなので耐圧ギリギリで使う事になる。
単なる誤植で、金田先生は2.2μF/50Vを使われていたのか、あるいは、わざと2.2μF/35Vタンタルコンデンサを耐圧ギリギリで使う事で音に活気が出るのか、それは分からない。
下写真のようにタンタルコンデンサの容量をテスターでチェックしておいた。
写真 ワテ考案のテスター便利計測ステーションだ
ワテの場合は、電子工作で使う部品は抵抗、コンデンサは必ず値をテスターで計測してから使う。
トランジスタのhFE計測と熱結合
このプリアンプでは、以下のFETやトランジスタを使う。
- 2N3954(N-ch Dual FET、差動二段増幅回路初段)
- 2SA726G(差動二段増幅回路二段目)
- 2SA872/2SC1775(出力SEPP)
- 2SC1775(出力SEPPのバイアス回路)
トランジスタは解体部品があるので、そのhFEを計測して動作確認すると同時にhFEでペアを組む事にした。
まずは2SA726GのhFEを計測した
ワテ設計&自作のhFE直読式テスターを使ってhFEを計測する。
マイコンなど使っていないにもかかわらずhFEを直読出来る優れものだ。
写真 合計四つのトランジスタ(PNPx2、NPNx2)を挿せる
被測定対象のトランジスタのLEDが緑点灯する。
写真 計測中は赤LED点灯
hFE値は、デジタルテスターのDCVモードで電圧として計測出来るのだ。
写真 hFE=399と計測された(PNPはプラス電圧、NPNはマイナス電圧で表示される)
下写真のように八個の2SA726Gはほぼ同じくらいのhFE値だった。なかなか優秀だ。
その内の二個の2SA726Gを瞬間接着剤(ゼリー)で貼り付けた。
はみ出した瞬間接着剤は白っぽくなって見た目が汚いので、下写真の剥がし材で清掃した。
熱接合した二個の2SA726Gは型番が見えなくなるので、他の型番のTRと混同する恐れがある。なので、この時点で基板に半田付けする。
下写真のように専用基板の3穴x2列にピッタリと収まる。快感だ。
写真 熱接合した2SA726Gトランジスタをスルーホールに挿し込んだ例
専用基板は本当に使い易いぞ。
次は2SA872/2SC1775のhFEを計測した
次は、2SA872/2SC1775のhFEを計測した。
出力段のSEPP回路を構成している。
写真 四つの2SC1775のhFEを計測
下写真では、2SA872と2SC1775のhFEを計測している。
写真 2SA872と2SC1775のhFEを計測している
上写真のように、二つのトランジスタを同じ条件(VCE、IB)で計測出来るので、NPNとPNPでコンプリペアを組んだり、同じ種類でデュアルペアを組む時に役立つ。
2SA872や2SC1775を半田付けする
写真 二個の2SC1775を熱結合
下写真のようにトランジスタを基板に半田付けした。
写真 PCBWay製専用基板に設計通りにパーツが収まった
解体したプリアンプでは4ミリピッチのサンハヤトのユニバーサル基板を使っていたので、トランジスタの足を無理やり広げて不自然な体勢で基板に固定していたのだが、専用基板なら上写真のように真っ直ぐ綺麗に基板にトランジスタの足が刺さるのだ。
この辺りが専用基板を使う醍醐味と言っても良いだろう。
なお、解体アンプではEQ基板、FLATアンプ基板の両方が有ったが、今回はFLATアンプ基板のみ製作した。なので、EQアンプに使っていたトランジスタが余ったのでナイロン袋に入れて保管しておく。
写真 今回使わなかった中古トランジスタは保管して再利用する超貧乏性なワテ
もし、今後、気が変ってレコードも聴きたくなり、EQアンプを作る可能性もあるので、その時には再利用したい。
2N3954を入手した
先日解体した金田式DCプリアンプでは、差動二段増幅回路の初段には本来指定されている2N3954(ソリトロン)の代わりに2SK30(東芝)を使っていた。理由は、アンプを作った当時ですら2N3954は一個数千円くらいと高かったので、やっすい2SK30で代替したのだ。
IDSSやVGSなどでペアを組むなどは一切やらずに、適当に二個の2SK30をアロンアルフアで貼って使った。
さて、今回の金田式DCプリアンプ再生プロジェクトでは、2N3954を使う事にした(下写真)。
写真 新品の2N3954を二個使う
一体全体この2N3954はどこで入手したのか?
実は、数年前に確かヤフオクで安く売っていたのを買っていたのだ。
その当時から、この金田式プリアンプ修理再生プロジェクトを漠然と計画していたのだ。
あるいは、手持ちのパーツで金田式アンプを何か一つ作ってみようかなと思って2N3954を落札したのだ。買った値段は忘れた。確か二個で二千円以下だったと思う。
ワテが買った2N3954にはSのマークがあるのだが、どこのメーカーなのか未確認だ。
まあ、何でもいいわ。
なお、下写真のように2N3954の足は、かなり長めにして半田付けした。
写真 2N3954の足を短く切れないワテw
あまり短く足を詰めると、今後、再び2N3954を再利用する時に使い勝手が悪いからだ。
超貧乏性なワテであるwww
下写真のように2N3954の六本の足が円形に配置した六つのスルーホール穴から綺麗に出ている。
やっぱり専用基板は素晴らしいぞ。
写真 2N3954の六本足がPCBWay製専用基板の六個のスルーホールから綺麗に出ている
2N3954の入力ゲートとグランドの間には470KΩ抵抗を入れるのだが、手持ち角型プレート抵抗には470KΩが無かった。200Kとか330K(幅広大型タイプ)なら有ったが、まあこの抵抗は470KΩと多少違っていても動くとは思うが、なるべくオリジナル回路の定数に準拠したい。
そこで、下写真のように500KΩの茶色の円筒形のやつがあったのでそれを付けてみた。
写真 入力抵抗は470KΩを500KΩで代替した
半田付けが完了した金田式DCプリアンプフラットアンプ
PCBWayさんの黄色レジスト基板(86x86x1.6t)に角型プレート抵抗など、茶色の抵抗で統一したので、金田式っぽい雰囲気が十分に出ているぞ。
写真 半田付けが完了した金田式DCプリアンプ基板(フラットアンプ)部品面
基板中心に対して点対称に左右チャンネルの回路を配置しているので、その点も昔の金田式アンプの雰囲気が良く出ている。
下写真は半田面。
まあ、あまり何も考えずに雑に半田付けしたので、色んなツッコミどころがあるのは自分でも良く分かっている。
写真 半田付けが完了した金田式DCプリアンプ基板(フラットアンプ)半田面
動作確認を行う
早速動作確認してみた。
このプリアンプ基板には±35VDCを印加する訳だが、いきなり35Vは怖いので、±10Vくらいから徐々に電圧を上げてみた。
写真 正負電源アンプ基板の実験には、可変定電圧電源が二台あると便利
その結果、±35VDCまで上げたが電流は0.03A程度と妥当な値だったので、致命的な間違いは無さそうだ。
かつ、出力オフセット電圧をテスターで計測してみたが、絶対値で0.1V以内くらいに収まっている。
二個有る半固定抵抗(200Ω:初段2N3954共通ソース部分、1KΩ:二段目2SA726G共通エミッタ部分)を調整すると、その出力オフセット電圧もゼロに調整出来たぞ。
と言う事は、前回記事の±35V定電圧電源基板が一発で正常動作したように、今回のフラットアンプ基板も一発で正常動作したのか!?
次回記事では、その辺りの調整作業を紹介したい。もし正常動作している事が確認出来たら、シャーシの加工に入りたい。
まとめ
水野ワレコ
いやぁ、本当に専用基板は素晴らしいですわ
ワテが電子工作を始めたのは中学生の頃だ。
ラジオとか発振器とかアンプとか、誰でも作るようなものを作っていた。
過去に製作した作品はそんなには多くはない。それにユニバーサル基板で複雑な回路を組み立てても失敗も多かったので、製作する頻度も徐々に減って行った。
社会人になってからは、ぺるけ式ヘッドホンアンプや金田式DACなど数台を自作したが、それ以降はあまり電子工作はやっていなかった。
その一方で、LTspiceを使ってアンプや電源回路などをワテ独自に設計してみて、シミュレーションするなどは良くやっていた。まあ実機を作るとなると何かと面倒だが、シミュレーションなら手軽にいくらでも出来るからだ。
それが、冒頭でも紹介したように2019年12月にKiCadを必死で覚えて、初めて専用基板を設計して基板製造業者さんに発注したのだ。
KiCadの操作方法も必死で覚えれば誰でもマスター出来るだろう。プリント基板の発注も、慣れてしまうと五分も有れば完了する。
要するにガーバーデータを基板製造業者さんのサイトにアップロードして、基板の枚数、レジスト色を指定する程度で良いのだ。ワテのお勧めはPCBWayさんの黄色レジスト基板だ。見た目が綺麗なので。
あとは一週間待てば自宅に両面スルーホール基板が届く。
電子工作は完成させる事に意味がある
もし今でもユニバーサル基板で電子工作をやっていて、十回に数回くらいは配線間違いなどで完成せずに中断しているような人は、是非とも専用基板を作る手法をマスターする事をお勧めしたい。
そうすれば目的とする電子工作が成功する確率が飛躍的に増えるからだ。
KiCadで入念にデザインルールチェックやエレクトリカルルールチェックをやれば配線間違いは完全に排除できるから、そうやって作成した基板に正しく部品を半田付けする限りは、必ず正しく動く電子回路が完成するからだ。
従来のワテならユニバーサル基板を使って電子工作をやって試行錯誤しながら泥沼にはまって結局断念する。それが電子工作だと思っていた。
でも、本来の電子工作とは、半田付け作業は簡単に済ませて、正しく完成した電子機器を使う事に意義があるのだ。
(続く)
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