ワレコ
電子工作を成功させる秘訣は、ある程度は道具に投資することだ。
電子工作歴の長い自称ヘッポコDIY自作派のワテが言うのだから間違い無い。
でもよく間違えるが。
さて、前回記事で紹介したように、現在製作中の「ぺるけ式VUメーター Version1」の組み立て作業が完了したが、VUメーターの針がピクリとも動かない。
その原因はVUメーター駆動アンプのFET差動PP回路に使われている2SK170BL_DGSの足の並びを2SK170BL_GDSと間違えてプリント基板を作成した事だったのだ。
要するにワテのうっかりミス。
その間違いを修正したところ、無事にVUメーターの針が振れたのだ!
当記事ではその間違いを修正する作業と完成した「ぺるけ式VUメーター Version1」を紹介したい。
では本題に入ろう。
足順番を間違えて半田付けした2SK170BLを基板から取り外す
下写真がVUメーター駆動アンプ基板だ。
水色枠で囲った合計4個の2SK170BLが足の並びを間違えて半田付けしてしまったやつだ。
写真 水色枠の合計4個の2SK170BLが足の並びを間違えている(PCBWay発注基板)
PCBWayさんに発注して作った専用プリント基板はXHコネクタを多数使ってケーブル接続式にしている。
その結果、コネクタを外せばプリント基板を単体で取り出せるのでメンテナンス性は良いのだ。
でも今回は秋月電子で購入した赤黒ケーブル付きXH2ピンコネクタを沢山使ったので、ケーブルはどれも同じ色だ。ケーブルを外すとあとでケーブルを挿す時にややこしいので、下写真のようにケーブルを挿したまま基板を裏返す。
写真 VUメーター基板を裏返す
下写真の4カ所の半田を除去して合計4個の2SK170BLを取り外すのだ。
写真 水色枠内の4カ所の半田を除去して合計4個の2SK170BLを取り外す
前回記事でも説明したように、2SK170BLや2SC1815などのFETやトランジスタが刺さっているTO-92デバイス用の三穴フットプリントは、そのランドのスルーホール直径はΦ0.8ミリと細いのだ。
もしこれがユニバーサル基板でよくあるΦ1.0やΦ1.2くらいの直径なら半田吸い取り線やスッポンやはんだシュッ太郎などで半田除去する事は可能だろう。
ところがΦ0.8ミリの両面スルーホールにΦ0.6ミリくらいの2SK170BLの足が通っているので、スルーホール内の半田の量が少ないから上の3つの道具のどれを使っても半田の除去がなかなか上手く行かない。
半田ゴテで半田を溶かしておいて、2SK170BLをクネクネ動かしながら引っ張るなどの泥臭い作業を続ければ出来なくはないが、デバイスを熱で壊すとか足が千切れるなどの失敗をする可能性も高い。
先端の太い半田ゴテを使って三本の足を一気に熱してやれば2SK170BLを引き抜く事は可能だ。
でも、引き抜いた後でΦ0.8ミリのスルーホール内に残っている半田を除去するのは困難。半田ゴテで半田を溶かしておいて細い針金でつつくなどの作戦くらいしか思いつかない。
それを4個の2SK170BLなので合計12カ所のスルーホールでやるのを想像するだけで気が滅入るワテである。
電動ハンダ吸い取り機を使う
よし、ここは思い切って電動ハンダ吸い取り機を買うぞ!と言う事でアマゾンで注文したら2日後に届いた。便利な世の中だ。運送屋さんには感謝しなくてはならない。
写真 白光(HAKKO) ダイヤル式温度制御はんだ吸取器 ハンディタイプ 2極接地型プラグ FR301-82
ワテ人生初の電動真空ポンプ式の半田吸取り器だ。
ワテが買ったのはプラグが接地付きの3極タイプ。2極タイプもありFR301-81と言う型番だ。
ワテが買った3極タイプのほうが千円くらい安かった。
下写真のような小さなスタンド(置台)も付いているが、ちょっと小さ過ぎてあまり役に立たない気がする。
写真 白光(HAKKO) ダイヤル式温度制御はんだ吸取器 ハンディタイプ 2極接地型プラグ FR301-82
下写真のような据え置き型の半田吸取り機も購入候補であったが、値段が高いので不採用にした。
ワテが買ったようなハンディタイプは電動真空ポンプがピストル型の本体に内蔵されているので重いと言う欠点がある。
なのでもし日常的に半田除去ツールを使う人は据え置き型を買えばピストル部分が軽いので使い易いだろう。
ワテの場合は、たまに使う程度なのでハンディタイプで十分だ。それと据え置き型だと置き場所も考えないといけないし。
さっそく自動半田吸い取り機を使って2SK170BLの半田を吸い取ってみた(下写真)。
写真 自動半田吸い取り機を使って2SK170BLの半田を吸い取った(PCBWay両面スルーホール基板)
上写真で上側の2SK170BLは半田除去後に引き抜いている。
下側の2SK170BLは半田除去直後なので、まだスルーホールに刺さったままだ。
実際に白光はんだ吸取器FR301-82を使った印象としては、もっと早く買うべきだった。
アホみたいに簡単に半田が除去できるぞ!
これさえあれば半田吸い取り線もスッポンも半田シュッ太郎も買わなくても良い。
と言う事で、まだ電動半田除去ツールを持っていない人は、今すぐ買うべき。
なお、先ほども説明したようにΦ0.8ミリのスルーホールはかなり細いので、半田除去後にもスルーホール内に半田が残る事があった。
少量の半田が残ると電動半田除去ツールを使っても半田を吸い取り切れない。
そう言う場合には、下写真のように半田ゴテで半田を追加して(追いハンダ)おいて、そのあとで改めて半田除去ツールを使うと綺麗に除去出来た。
写真 スルーホールに残った半田除去には追いハンダすると良い
吸い取った半田は下写真のように透明な筒の中に蓄えられる。
写真 吸い取った半田は透明筒の中に蓄えられるので掃除も簡単
と言う訳で、繰り返しになるが自動半田吸取機を持っていない人は早めに買う方が良いだろう。
上写真のgootのやつとどっちを買うか迷ったのだが、Hakkoの青色と黄色のデザインを選んだ。
たぶん機能的にはどっちも同じようなもんだと思う。
知らんけど。
取り外した2SK170BLの動作確認
下写真のように10分も掛からずに四個の2SK170BLを取り外す事が出来た。
写真 取り外した2SK170BL
なお、上写真のように2SK170BLの三本の足は、中央の足は真っ直ぐで左右の足は広がっている。
その結果、スルーホールの半田除去の際も、中央の足は半田除去がやり易かった。一方、両端の足はスルーホールに対して斜めに刺さっているので溶けた半田を真空ポンプで吸い取っても半田が流れにくいので完全には除去されない場合が多かった。
そう言う場合には、何度か吸引を行って、それでも取れない場合には、足を手で横に押せばスルーホール内壁に薄い半田でくっ付いている足がペリッと剥がせる。
そう言う風に、いろんなテクニックを使えば良い。
いや~、とても良い買い物だった。
下写真のように取り外した2SK170BLのVGSを再計測した。
写真 ぺるけ式FET & CRD選別冶具(改訂版)を使って2SK170BLのVGSを再計測
これら四つの2SK170BLはVGS=0.300V前後くらいの値を示すものを四つ選別していた。
再測定した結果、どれもVGS=0.300V前後の値を示したので、正常動作しているようだ。
写真 再測定した4つの2SK170BLはVGS=0.300V前後の値を示したので正常動作しているようだ
と言う訳で、ほっと一息入れる。
半田除去ツールの筒の中に溜まった半田をゴミ箱に捨てて、作業机の辺りを掃除機で清掃。
次の作業に備えて整理整頓だ。
2SK170BLの足を交差させて半田付けする
2SK170BLの本来の足の並びDGSをGDSと間違えてプリント基板を作ってしまった訳なので、DとGを入れ替えてプリント基板に挿せば解決する。
そこで下写真のように足を曲げてDとGを入れ替えた。
写真 2SK170BLの足を曲げてDとGを入れ替えた(2SK170BL千鳥足バージョン)
ストレートな足の2SK170BLに対して、千鳥足バージョンの2SK170BLに差し替える事で、このVUメーターの針の振れを見ながら音楽に酔いしれる事が出来るのだ。
写真 実体顕微鏡の下で半田付け作業をしている様子
上写真のワテ自作の引き出しレール式実体顕微鏡吊り下げスタンドは、観察対象が単体プリント基板だけでなく、上写真のような大きな筐体の中にある基板も自由に観察できる優れものなのだ。
引き出しレールのお陰で前後に400ミリ伸縮し、高さ方向は最大高さ200ミリ以上くらいの物を観察できる。
その製作過程は下記事で紹介しているので皆さんも参考にして頂きたい。
下写真のように千鳥足2SK170BLの半田付けが完了した。
写真 見ているだけで酔っ払った気分になれる2SK170BL千鳥足
下写真が四つの2SK170BLを半田付け完了したVUメーター駆動アンプ基板だ。
写真 四つの2SK170BLを半田付け完了したVUメーター駆動アンプ基板
と言う訳で、無事に2SK170BLの半田付けが完了した。
写真 四つの2SK170BLを半田付け完了したVUメーター駆動アンプ基板とコネクタケーブル
音声信号を入れて動作確認成功
さて、早速動作確認だ。
パソコンで聴いているRadikoの音声をリアパネルのXLRコネクタから入力してみた。
その結果、下写真のようにVUメーターの針が振れたぞ!
写真 2SK170BLの足の間違いを修正したらVUメーターの針が振れた
おお、エエ感じや。
よし、次は調整作業に取り掛かろうと思ったが、その前にボリュームにツマミを付けようと言う事で、下写真のように手持ちのツマミを付けた。
写真 ぺるけ式VUメーター Version1に手持ちのツマミを付けた
最下段のLight(照明と電源SW)用ツマミは、アルミ削り出しの高級品を使ってみた。もちろんジャンク品を安く買ったやつだ。
1KHz正弦波1.228Vp-pを入力して調整する
ぺるけさんの解説記事によると、VUメーターの調整は以下の手順で行うとの事だ。
<調整方法>
まず、VUメーター本体のゼロポジションを合わせます。電源を切った状態でメーターの針が左下の0%のところにくるように、メーターの「零位調整ネジ」をまわして調整します。このネジは、通常はメーターの正面中央下にありますが、裏側についているメーターもあります。調整で使うテスト信号は、バランスでもアンバランスどちらでもOKです。アンバランス入力にする場合はキャノン3pinをアースします。前面のボリュームをセンターポジションにした状態で、400Hz~1kHzくらいの周波数の正弦波信号を使い、1.228Vを入力した時にメーターが0VUを指すように後面のボリュームを調整すれば完了です。調整の参考のために、入力信号電圧とメーター表示の関係を表にしておきました。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/vu-meter.htm
ワテの場合は前面ボリュームはセンタークリックポジションが無い一般的なやつを採用した。なので、ツマミ位置を目分量で12時位置にしておいた。
ワテ所有のHPのパルジェネは下写真のように三桁表示なので1.228Vは出せないので1.23Vにした。
写真 ワテ所有のHPパルジェネで出力1.23V(1KHz)に設定
そして下写真のように左右のVUメーターの針が0VUを指すように、シャーシ内部に取り付けた2連10KBボリューム(左右2個)を調整した。
写真 左右VUメーター針が0VUを指すようにシャーシ内部にの2連10KBボリュームを調整
と言う訳で、無事にVUメーターの調整作業が完了した。
ちなみに下写真のようにBNCケーブルを接続してパルジェネ信号(細いケーブル)を2分配してVUメーター左右チャンネルのXLRコネクタに配線した。
写真 BNCコネクタもちゃんとしたやつを買うべきか
ワテの場合、BNCケーブルやBNC分岐コネクタなどは、いつ買ったのか分からないような古いやつを使っている。
もう少しちゃんとしたパーツを買うべきだな。
上写真の細いBNCケーブルは最近買ったやつだ。海外製で安かったので。
下写真のような分岐コネクタも何種類か持っておくといざと言う時に役立つ。
BNCケーブルやコネクタは、予算があるなら海外製の安いやつよりも第一電子工業、日本航空電子、多治見無線などの日本製を買う方が良いだろう。特に高周波系の工作をやる人は。
ワテは1MHz以下くらいのオーディオ周波数帯域しか扱わないので安いやつで十分だが。
完成した「ぺるけ式VUメーター Version1」の紹介
組み上げた直後の動作確認(前回記事)では、全く動かなかった「ぺるけ式VUメーター Version1」であるが、2SK170BLの足の並びの間違いを修正したら無事に完成した。
動いている姿を動画撮影した。
音源引用元 中島みゆき公式チャンネル https://www.youtube.com/watch?v=v2SlpjCz7uE
どう!?
プロジェクトX〜挑戦者たち〜 「ぺるけ式VUメーターVersion1を完成させよ」
もしNHKさんからワテに依頼が有れば、こんなタイトルでVUメーター製作過程を映像化しても良いが。
写真 完成した「ぺるけ式VUメーター Version1」
照明の光量を最大にしても若干暗い感じかな(下写真)。
写真 照明の光量を最大にしても若干暗い感じか?
部屋の照明を消すと、下写真のようの暗闇にVUメーターの針が浮かび上がる。
写真 暗い部屋でVUメーターの針がピクピク動いている
無事に完成してほっとしたワテである。
写真 PCBWay製基板とアルミパネルで製作した「ぺるけ式VUメーター Version1」
下写真のようにアルミ複合板の天板を嵌め込めば完成だ。青い保護シートはこの後で剥がしたので現在は白色天板だ。
写真 アルミ複合板の天板を付けた完成形(青色保護シートは剥がしたので現在は白色天板)
上写真のサイドウッドに塗り込んでいたクルミオイルが少し色が薄くなっている。
時間が有る時にクルミオイルを再度塗り込む予定だ。
まとめ
ワレコ
やっぱりVUメーターはいいなあ。
針がピクピク動くのを見ていると高揚感が高まるのだ。
当記事では「ぺるけ式VUメーター Version1」のVUメーター駆動基板の2SK170BLの足の並びの間違いを修正して無事に完成させる事が出来た過程を紹介した。
半田付けしたFETを基板から取り外す為に、ワテの長い電子工作歴で一度も使った事が無かった電動真空ポンプ式の半田吸取り器を購入した。
これだ!↴
この白光の半田吸取り器のお陰で、難なく四つの2SK170BLを基板から外すことが出来た。
もし読者の皆さんも電動式の半田吸取り器を持っていないなら、出来るだけ早く導入する事をお勧めする。なぜなら半田吸取り器を使う事で半田付け作業が見違えるほど効率良く行えるからだ。
そして2SK170BL(DGS)は足の順番がGDSになるように千鳥足に曲げてプリント基板に半田付けした。
その結果、VUメーターの針の振れを見ながら聴く事で、音楽に酔いしれる事が出来るのだ。
と言う事で、この作品は「ぺるけ式VUメーター Version1(千鳥足)」と勝手に命名したい。
ワテはKiCadを使い始めて約2年半くらいになるが、デバイスの足の並びを間違える失敗は初めてだ。
ちょっとボケているのかもしれないので、良く食べて、良く寝て、良く勉強するようにしたい。
今後の予定としては「ぺるけ式VUメーター Version1(千鳥足)」をワテのPCオーディオ環境に組み込む作業を予定している。
必要ならXLRケーブルなども自作して、最適長さのケーブルでスッキリと配線出来るようにしたいと思っている。
追記 2023/3/17
その後、VUメーターをPCオーディオ環境に組み込んだ。
自作XLRケーブルなどでスッキリと接続 | オールぺるけ式(ミニワッター、バランスプリ、VUメーター) |
(続く)
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