写真 ぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)を使っている人か?
2020年8月は暑かった。
全国各地で猛暑のニュース報道ばかりであった。
2020年8月17日に静岡県浜松市で41.1度を記録したらしい。この記録は、2018年7月23日に埼玉県熊谷市で観測された国内の観測史上最高気温(41.1度)とタイ記録との事だ。
まあ、最高気温で全国ニュースに名前が出れば市の知名度も上がるとは思うが、そんな下らない話題で浮かれている場合では無いぞ。今後、益々気温が上がり、気温45度なんて時代がやって来れば生死に係わる事態になる。そんな時代が数年後にはやって来るのだ!
さて、9月に入ると急に涼しくなって過ごし易くなった。
そんな時には電子工作をやるのが良いだろう。
ワテも「ぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)」と言うのを作ってみる事にしたのだ。
数回の記事に分けて紹介したい。今回は基板設計編だ。
では、本題に入ろう。
ぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の紹介
FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の回路図をぺるけさんのサイトから引用させて頂く(下図)。
1つのFET差動回路にダイヤモンドバッファを2つ
図 ぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)のアンプ部分
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
何だかトランジスタが多いぞ。トランジスタ9個、FET2個、ダイオード2個か。
これで片チャンネル(左)の回路なので、ステレオにするにはこの回路が二つ必要だ。
このヘッドホンアンプの特性は以下の通り。
入力インピーダンス: 48kΩ~100kΩ(バランス)、24kΩ~50kΩ(アンバランス)
利得: 2.3倍(2011年版)
利得: 2.2倍(2017年版)
残留雑音: 28μV(帯域=80kHz)
周波数特性: 2Hz~100kHz(+0dB/-3dB、1V出力、68Ω負荷)
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
残留雑音が28μVと低く、周波数特性も2Hz~100kHzと広いので物凄く性能が良さそうな感じのヘッドホンアンプだ。まあワテの耳では15kHzくらいまでしか聞き取れないと思うがw
上図に於いて、四つのトランジスタがエックス型に交差しているが、ダイヤモンドバッファ回路と言うらしい。その回路を2つ使ってBTL接続にしてある。
その辺りの解説をぺるけさんのサイトから引用させて頂く。
基本回路はとてもシンプルで、1つのFET差動回路にダイヤモンドバッファを2つつけただけです。
実際に利得を得るための増幅作用を営むたった1段のFET差動回路を構成する2個の2SK170だけで、ダイヤモンドバッファの役割はインピーダンス変換しかやっていません。
2つのダイヤモンドバッファはA級動作を営むBTL方式にしてあります。A級BTLの優れたところは、負荷を駆動する信号電流が電源回路やアースに流れないという点です。OPアンプで採用されているB級動作によるBTLではこのような動作をさせる芸はありません。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
まあワテの場合、電子回路初心者なので、ぺるけさんの解説のBTL方式の部分は理解出来るが、それ以外は良く分かっていない。
あと、初段2SK170 FETペアの共通ソース側に2SC1815を使った定電流回路が入っているくらいしか分かっていない。
ところで何でダイヤモンドって言うんだろう?分からん。
世の中分からない事ばかりだ。勉強せなあかんがなw
入出力のバランス・アンバランス対応に関して
ワテの場合は、このアンプはバランス出力ヘッドホンアンプとして使う以外に、バランス出力プリアンプとしても使いたいと思っている。
なので、このアンプの入出力のバランス・アンバランス対応に関してぺるけさんの解説を読んで理解しておこう。
入力はバランス・アンバランスの両対応
ぺるけさんの解説によると、入力はバランス・アンバランスの両対応との事だ。
入力はバランス入力としてもアンバランス入力としても動作することです
どちらか一方(とりあえずCOLD側)をアースしてしまうとバランス出力を維持しながらアンバランス入力のアンプになります。つまり、アンバランス→バランス変換アンプになります。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
なるほど。
ぺるけさんの製作例を下写真に引用させて頂く。
写真 ぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプ12V平ラグバージョン(2011年)
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
上写真で示すようにリアパネルにはアンバランス入力用のRCAジャックが二つとバランス入力用のTRSステレオジャックが二つ付いている。
3極のTRSコネクターの豆知識
wikipediaの「フォーンプラグ」から引用させて頂く。
モノラル | モノラル (平衡接続) |
ステレオ | 図の番号 | |
---|---|---|---|---|
チップ (T) | 信号線 | 正相 (Hot) | 左チャンネル | 3 |
リング (R) | N/A | 逆相 (Cold) | 右チャンネル | 2 |
スリーブ (S) | 接地 | 接地 | 接地 | 1 |
絶縁リング | 4 |
写真 3極TRSステレオ用(上)、2極TSモノラル用(下)
引用元 https://ja.wikipedia.org/wiki/フォーンプラグ
ワテの場合は、今回製作するアンプの入力には、以前に作成したぺるけ式秋月USB-DAC(タムラトランスTpAs-2S版)を接続する予定だ。
写真 2012年頃に自作した秋月電子のDACキットを使ったトランス式USB DAC(※)
※ その後、2018年にこのDACはぺるけさんの記事に沿ってコンデンサ容量増強・インダクタ追加を実施した。それによって左右チャネル間クロストークが良くなるのだ。ただしワテの駄耳では違いが分からない。
このUSB-DACはRCA出力(アンバランス)版で作成している(下図)。
図 AKI.DAC-U2704を使ったトランス式USB DACのアンバランス接続回路
引用元 http://www.op316.com/tubes/lpcd/trans-dac.htm
このRCA出力のままでもぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)に入力する事は出来るが、このUSB-DACの出力部分を本来のバランス出力版に改造する予定だ(下図)。
図 AKI.DAC-U2704を使ったトランス式USB DACのバランス出力回路「再改訂LCフィルタ・バージョン」
引用元 http://www.op316.com/tubes/lpcd/trans-dac.htm
まあ要するにライントランスの出力に接続している2個のRCAコネクタを廃止して、XLR3オスキャノンコネクター2個あるいはXLR5オスキャノンコネクター1個に置き換えれば良い。
ワテの場合は、XLR5コネクター1個にする予定だ。何故ならXLR3だと穴開け作業が2箇所になるが、XLR5だと穴は一つで行けるので。それと、ジャンク品で買ったXLR5キャノンコネクターを沢山持っているので。
あるいはこのUSB-DACを今回製作するヘッドホンアンプに内蔵させるかな。
ヘッドホン出力はバランス・アンバランス両対応
次に、このヘッドホンアンプ出力のバランス・アンバランス対応状況を見てみよう。
ぺるけさんの説明文を引用させて頂くと以下の通り。
ヘッドホン出力は、2011年版はバランスのみでしたが、2017年版ではアンバランスを追加しました。アンバランス出力では、非反転の一方の出力だけを使いますので、出力信号電圧はバランス出力の時の1/2になります。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
なるほど。
ヘッドホン出力はバランス(XLR5メス)とアンバランス(TRSジャック)の両対応との事だ。
ワテの場合、以下の記事で紹介しているように、オーディオテクニカのヘッドホン(ATH-A900Ti)をバランス接続対応に改造している。
ただし現状では、バランス出力アンプを持っていないので、アンバランス接続で聴いているのだ。
今回、バランス出力ヘッドホンアンプを作成するので、以下のようなバランス接続用ヘッドホンケーブルも自作して、バランス接続でヘッドホンを聴きたいのだ。
図 バランス接続用のヘッドホンケーブルを自作する予定
なお、ぺるけさんの説明によると、このヘッドホンアンプのアンバランス出力は非反転の一方の出力だけを使ってアンバランス出力としている。まあ要するにL,R共にColdは使わずにHot-GNDでヘッドホンを駆動するのだ。その出力はTRSヘッドホンジャックに出力される。
まあ普通の標準サイズのヘッドホンジャックだ。
ワテも、一応このヘッドホンジャックも取り付けてアンバランス出力も聴けるようにする予定だ。
なので、下写真に示すぺるけさんの製作例(2011版)ではヘッドホンのバランス出力用XLR5メスのみだが、その隣にアンバランス出力用のTRSヘッドホンジャックを取り付ける予定だ。
写真 ぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプ12V平ラグバージョン(2011年)
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
バランス対応パワーアンプも自作する予定
ワテの場合、最近ではヘッドホンよりもスピーカーで聴く場合が多い。まあ、辺鄙な場所なので大音量で聴いても全く問題無いのだ。
なので、今回作成するヘッドホンアンプのフロントパネルにトグルスイッチを一個追加して、出力信号をフロントパネルのヘッドホン(XLR5メス)あるいはリアパネルのプリアンプ出力(XLR5オス)のどちらかに切り替えられるようにする予定だ。
XLR5コネクタの接続は以下の通り。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
ヘッドホン端子には5pinキャノンを使いました。ピン接続は国際規格(AES14-1992)に準拠し、1=GND、2=Hot(L)、3=Cold(L)、4=Hot(R)、5=Cold(R)です。
そのプリアンプバランス出力を接続出来るバランス入力対応のパワーアンプを作りたいと思っている。
具体的には、以前、専用基板をKiCADで設計して自作した「ぺるけ式TRミニワッターPart5(19V版)」を接続してみたい。
つまりこのパワーアンプをBTL化したものを二台用意すれば、今回作成する予定のバランスヘッドホンアンプ(兼プリアンプ)のバランス出力をXLR5コネクタを使って二台のBTLパワーアンプに接続出来るのだ(たぶん)。
そうすると、
===> バランス入出力差動ヘッドホンアンプ兼プリアンプ
===> バランス入力対応BTL化ミニワッターPart5(19V版) x 2台
===> スピーカー
と言う構成で、ワテのPCオーディオシステムはオールバランス化出来るのだ!
まあ、そこまでバランス化を追究したとして現在聴いているアンバランスな音よりも良くなるのかどうかは分からないが、海外発注したミニワッターPart5(19V版)専用基板はまだ9枚余っているし、ミニワッターに必要なパーツもジャンク品を中心にほぼ手持ちにあるので、秋の夜長にコツコツと作ってみたいと思っている。専用基板なのでパーツを半田付けするだけなので半日も有れば完成すると思う。
Cold側をアースする方式のアンバランス出力は不可
なお、今回製作するFET差動バランス型ヘッドホンアンプの出力に関する注意事項としては、以下の通り。
本機はヘッドホンのかわりにそのまま出力させると、バランス型のラインプリアンプになります。1V出力に対してS/N比は91dBですから、雑音性能においてCDなど16bitデジタル・ソースのスペックを上回ります。
Cold側をアースすると出力がショートしてしまうので、アンバランス出力をさせることはできません。
引用元 引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
う~ん、そう言う事か。この点は注意しなくてはならない。
つまり、下写真のような変換プラグをこのヘッドホンアンプ(XLR3出力の場合)のXLR出力に接続するとショートして故障するのだ。
ちなみに下写真は以前に自作したXLR5=RCA変換ケーブルだ。
写真 自作のXLR5=RCA変換ケーブル
この変換ケーブルも今回製作するヘッドホンアンプのXLR5バランス出力には接続禁止となる。
なお、2018年に自作した「ぺるけ式FET式平衡型差動プリアンプVersion2」の場合なら、入力も出力も全てバランス・アンバランス対応しているので使い易い。
この平衡プリは出力にはタムラライントランス(ワテは日本光電NIHON KOHDEN TD-1 600Ω/150Ω:600Ω/150Ω)を使っているので、出力Coldをアースに短絡する方式で出力のアンバランス化を出来るのだ。
電源回路
電源回路を見てみよう(下図)。
図 FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の電源回路
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
この電源回路は15VのACアダプターを使って抵抗やダイオードで分割して疑似的に正負電源を生成する方式だ。これはぺるけさんの自作アンプで良く使われる。
ワテの場合は、パーツボックスに一次AC115V、二次AC15V x 2 (1A)の小型トロイダルトランスを発見したのでそれを使う予定だ。たしかRSコンポーネンツで買ったやつだ。
二次側AC15V(1A)は二回路あるので並列接続すれば、AC15V(2A)なので電流は十分とれる。
一次側AC115Vの仕様なので、AC100Vに換算するとAC13Vくらいか。
整流で√2倍(=1.414)するとDC18.4Vくらいになるはずなので、15Vの三端子レギュレータで安定化電源回路を作るかな。必要ならトランジスタを追加して電流をブーストしたい。
KiCADでプリント基板を設計する
さて、まずはぺるけさんの製作例を拝見しておこう。
写真 FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)ぺるけさんの製作例
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
タカスのユニバーサル基板 IC-301-74に整然とトランジスタ、電解コンデンサ、抵抗が整列している。仕様は以下の通り。
片面 フェノールXPC 2.54mmピッチ
サイズ 1.6t×89×139 穴径 φ1.0mm
半田レベラ仕上
アマゾンには同一サイズでガラスエポキシタイプも売っている。
そのタカス基板に対して、下図に示すように細い銅単線(Φ0.28)をホッチキスの針のように加工して二つの穴に通して折り曲げて半田付けする方式で配線してあるのだ。
写真 ぺるけさんによるタカス基板レイアウト FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
このホッチキス方式は物凄く細かい作業なので、気が短いワテには向いていないのだ。
なので、今回もKiCADを使って専用基板を設計する事にした。
EeschemaはKiCadの回路図エディターソフトウェア
ワテの場合、KiCADを使い始めて数カ月くらい。今まで二つの基板を設計した。
ラッチングリレー式のセレクター回路基板とぺるけ式トランジスタミニワッターPart5(19版)だ。
KiCADはとっても便利だ。
回路図エディタEeschema、基板エディタPcbnewが連動して動くので回路図を正しく描いておけば、基板設計時に配線間違いをする可能性を限りなくゼロに出来るのだ。
まあ、この手のチェック機能は市販の高性能EDAツールならどれにでも備わっている基本的な機能だが、それがオープンソースのフリーなEDAツールであるKiCADにも標準装備されている訳なので、こんなに嬉しいことは無い。
まずはEeschemaで回路図を描いてみた(下図)。
図 Eeschemaで描いたFET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)回路図
この回路図エディタEeschemaは、幾つかの欠点もあるが、ワテにはまあまあ使い易いツールだ。
ワテが気になる幾つかの欠点を指摘するなら、
- パーツ、配線のマウス選択がやり辛い
- 複数のパーツ、配線を同時選択してドラッグ移動する操作が期待通りに動かないケースが多い
などが気になる。まあ慣れればどうにかなるが。
Eeschemaの特徴
主にKiCADのサイトから引用すると、Eeschemaの特徴は以下の通り。
- Eeschemaは、標準で多数のパーツのシンボル図形情報を保持しているが、その中に無いパーツのシンボルは自分で描画して追加する事も出来る。
- Eeschemaは、誤接続、未接続配線などの検出を行うエレクトリカル・ルール・チェック (ERC)機能を持っている。
- 多くの形式 (Postscript, PDF, HPGL, SVG) をサポートしたプロットファイルのエクスポート。
- 様々なフォーマットを設定できるよう Python か XSLT のスクリプトを使用した部品表 (BOM) の生成。
- Eeschema は、いくつかの方法で複数のシートからなる回路図を扱うことができる
- 単一の階層 (各図が一度だけ使用される)。
- 複雑な階層 (いくつかの図は、一度以上の複数回使用される)。
- 平面的(フラット)な階層 (マスター図面の中、いくつかの図面は明示的に接続されない)。
まあ市販のEDAツールと同じような機能を持っているのだ。それが無料で使える訳なので使わな損!
PcbnewはKiCADのプリント基板設計ツール
なぜPcbnewと言う名前なのか知らないが、古いバージョンはPcboldだったのか?
まあそんな疑問が湧くのだが、KiCADのレイアウトエディタがPcbnewだ。
下図にPcbnewを使って即席で作成した基板のレイアウトを示す。
図 Pcbnewで描いたFET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の基板パターン
上図を描くのに要した時間は、延べ6時間くらい掛かったと思う。とりあえずパパッと描いたので、もう少しパーツ配置やパターンのレイアウトを修正する予定だ。
デザインルールチェックにはパスしているので、配線間違いは無いはずだ。
ただし、ボリュームを右に回した時に音量が増えるように正しく配線出来ているかどうか、その点は入念にチェックしたい。
間違えて設計してしまって、ボリュームを左回りに絞ったら爆音が出ると悲しい。そんな時には手配線なら修正可能だが、基板だと修正が困難だ。
Pcbnewは、市販電子部品の多数のフットプリントのライブラリーを持っている。
もしライブラリに無いパーツを使いたい場合には、自分でフットプリントを追加編集し登録する機能もある。
また、3Dモデルをstepデータ形式でインポートする機能もあるので、設計した基板にそのパーツを実装した様子を3次元CG画像で表示する事も出来る。
この後紹介するように、アルプス電気の四連ボリュームRK27(50KΩAカーブ)のフットプリントと三次元モデルを自作してPcbnewに読み込んだ。
なお、Pcbnewには自動配線機能もあるようなのだが、ワテの場合は今のところ全て手配線でやっている。
ワテの場合は後者のトランジスタ技術のバックナンバーを近所の書店で取り寄せて貰ってKiCADを勉強した。この本はお勧めだ。
Pcbnewを使って完成予定図をCGで描く
下図にPcbnewで描画した「FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)」の完成予定図を示す。
図 FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の完成予定図1
音量制御用のアルプス4連ボリュームA50KΩは基板中央に直接半田付けする事にした。
ぺるけさんの製作例では、4連ボリュームはシャーシのパネルに単体で取り付けて、タカス基板までは導線で手配線する方式だが、今回はその方式では無く基板にボリュームを半田付けする事にしたのだ。
その理由は、せっかく専用基板を設計する訳なので、基板にボリュームを直接半田付けする事で手配線の手間を省けるからだ。メーカー製のオーディオ機器のような雰囲気になるかな。
図 FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の完成予定図2
上図のように、アルプスRK27型4連ボリュームが基板中央に配置され、その両側に左右チャンネルのパーツが整然と配置された美しいレイアウトだ。
完璧や!自画自賛
下図に基板の半田面の様子を示す。
図 FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の完成予定図3
上図では半田面にはシルク文字が描かれていないが、この後、少しは文字を描く予定だ。
抵抗を立てずに寝かせたレイアウト案
追記(2020/9/10)
その後、下図のように別のレイアウト案を検討してみた。
図 FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)レイアウト別案
コンデンサにも、実際に採用予定の製品の色を付けてみた。
黒色コンデンサは秋月のルビコン。105度グレードにも係わらず100円なので安い。
1個 ¥100(税込)
耐久性:10000時間(@105℃)
直径16 x 長さ25 足間隔 7.5
茶色コンデンサは日本ケミコン。ワテの好きな日本ケミコンの茶色の電解コンデンサだ。
品番 : KMG16VB2200M
16V / 2200μF / 105℃
直径12.5 x 長さ20 足間隔 5
最初の案では全ての抵抗(1/4Wタイプ)を立てて取り付けていたが、新しいレイアウト案は上図に示すように、抵抗を立てずに寝かせている。
かつ、出来るだけ同じパーツは整列させて配置したので、見た目はスッキリしている。メーカー製のアンプなどで良く見かける雰囲気の部品配置だ。
でも、ぺるけさんの製作例では抵抗を立てて取り付ける場合が多いので、寝かせたレイアウトだと見た目がぺるけ式に見えない問題がある。オーディオ機器は見た目も重要だ。
まあ、どちらのレイアウトを最終的に採用するかは現在検討中だ。
いずれにしても、パーツの大まかな配置のみ行っただけなので、どちらのレイアウト案で行くかを決めてからKiCADのレイアウトエディタPcbnewを使って銅箔パターンの描画行う予定だ。
どっちのレイアウトにするかなあ…
アルプス4連ボリュームの3Dモデルを作成してKiCADにインポート成功
KiCADは、他のCADで作成したフットプリントや3Dモデルをインポートする事が出来る。
Fusion360を使ってアルプス4連ボリュームRK271のモデルを作成してみた。物理マテリアルで色も付けてみた。この後、step形式でエクスポートするがstepは色情報も保持出来る。
図 Fusion360で作成した4連ボリュームのモデルをstep形式で出力した
ワテの場合、三次元CADであるFusion360を使っている。AutoDesk社の有料製品だが、個人や零細企業は無料で使えるのだ!
本格的な三次元デザインソフトが無料だぞ!
ワテの場合、過去に仕事でもCADデータを扱うソフトを少し書いた経験があるので、CADのデータ変換などに関しては、普通の人よりは詳しい。
CADデータ形式には、iges, DXF, step, … その他色んなフォーマットがあるが、まあ要するに図形の形状を表現する数字の集合なので、仕様さえ理解すれば扱うのは簡単だ。
で、兎に角Fusion360を使って、20分くらいでアルプス4連ボリュームのモデルを作成して、step形式でエクスポートして、そのデータをKiCADのフットプリントエディタの中のフットプリントのプロパティを使ってインポートしたのだ(下図)。
図 KiCADのフットプリントエディタの中のフットプリントのプロパティを使ってインポートしたアルプス4連ボリュームstepデータ
アルプス4連ボリューム50KΩAカーブは手持ちには無いので、通販で買う予定だ。
例えばアマゾンにも売っている。
上の商品は秋葉原の三栄電波さんの出品だが、三栄電波さんはお店のホームページでもWEBショップがあるので、そちらで購入しても良い。
〒1010021 東京都千代田区外神田 1-14-2
販売業者: 三栄電波株式会社
お問い合わせ先電話番号: 03-3253-1525
三栄電波
三栄電波さんのWEBショップにあるアルプス電気カーボンボリュームRKシリーズ
引用元 http://www.san-ei-denpa.com/
このアルプス四連ボリュームは今回使うパーツの中では最も高価だが、高精度な四連ボリュームはこのアルプスしか選択肢が無いし、以前に同じボリュームをぺるけ式平衡プリに使ったが、回転がスムーズで使い易いので、今回も思い切って買う事にした。
ぺるけさんの製作例のような部品配置にしたレイアウト案
その後、ぺるけさんの製作例に準拠してパーツを配置したレイアウト案を作ってみた。
土日に延べ5~6時間くらい悪戦苦闘したらどうにか配置する事が出来た。パソコンのディスプレイが小さいので作業効率が悪い。横長のワイドディスプレイなら2時間くらいで出来ると思う。欲しいなあ~
図 ぺるけ式FET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の専用基板レイアウト案
上で紹介した第一案(ボリューム搭載、抵抗を立てる)、第二案(ボリューム搭載、抵抗寝かせて整列させる)はワテの完全オリジナル設計のパターンであった。
今回作成した第三案では、ぺるけさんの製作記事に掲載してあるタカスのユニバーサル基板 IC-301-74を使ったレイアウト案に沿ってパーツを配置してみた。
片面 フェノールXPC 2.54mmピッチ
サイズ 1.6t×89×139 穴径 φ1.0mm
半田レベラ仕上
ボリュームを基板に搭載する案は、当初は良い案かなと思ったのだが不採用とした。
その理由は、ボリュームを基板に半田付けしてしまうと、万一何らかの理由で取り外したい場合に非常に困難。
それと、ボリュームの端子を半田付けする時には、ワテの場合はボリュームの抵抗体が熱でダメージを受けないように下写真のようにヒートクリップを使って熱を逃がしている。
写真 ぺるけさんのFET式平衡型差動プリアンプVersion2製作時のボリューム半田付け例
グット製のヒートクリップと言う商品だ。ストレートタイプと折れ曲がりタイプがある。
ワテの場合、ストレート1本、折れ曲がり2本持っている。
でも基板にボリュームを半田付けするとこのような方式が使えないので、そう言う点でも基板にボリュームを取り付ける案は不採用とした。
なので、普通通りにシャーシのパネルにボリュームを取り付ける予定だ。
こんなやつが欲しいw
その他のパーツ
インダクタ1mH、0.4A
電源回路に使うインダクタは、ぺるけさん推奨品は以下の製品だ。
太陽誘電 LHLC10NB 102J
インダクタ(ラジアルリード・φ11) 1mH 0.48A(max.)
インダクタンス許容差:±5% Q:50(min.)
自己共振周波数:1.2MHz(min.) 直流抵抗:1.8Ω(max.) 測定周波数:0.252MHz 最大外径寸法:径11.0×高14.0㎜(リード除く) リードピッチ:5.0±1.0㎜ ※各寸法はカタログ値 【RoHS指令対応品】
引用元 https://www.sengoku.co.jp/
ワテの場合は、手持ちに2.2mH 0.51Aのインダクタ(ミツミ)があるのでそれを付けるかな。まあインダクタンスが1mHでも2.2mHでもワテには出る音の違いは分からないと思うので。
DC15V入力のところに入れた1mHのインダクタによるノイズフィルタは非常に効果的で、ACアダプタからやってくるノイズを1/10以下の減らす効果があります。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
FETの選別に関して
初段の差動回路の2SK170ペアはBLランクまたはGRランクが指定されている。
ワテの場合は、以前に自作した「ぺるけ式FET & CRD選別冶具(改訂版)」を使って2SK170を選別する予定だ。
具体的な選別方法に関しては、ぺるけさんのサイトから以下の表を引用させて頂く。
Group | 用途 | バイアス特性 | IDSS範囲 (参考) |
測定条件 |
---|---|---|---|---|
K170-BL-FET差動ペア | FET差動ヘッドホンアンプ FET差動プリアンプ FET差動DAC |
-0.16V~-0.30V | 6mA~12mA | Id=2mA、Vds=6Vにおけるバイアス電圧(Vgs)を測定し選別。 バイアスのばらつきは±4mV以内。 周囲温度24~26℃。 |
K170-GR-FET差動ペア | FET差動ヘッドホンアンプ FET差動プリアンプ FET差動DAC |
-0.11V~-0.20V | 2.6mA~5.5mA | Id=1.5mA、Vds=6Vにおけるバイアス電圧(Vgs)を測定し選別。 バイアスのばらつきは±4mV以内。 周囲温度24~26℃。 |
表 2SK170(BL/GRランク)選別の測定条件
引用元 http://www.op316.com/tubes/buhin/b-k30-k170.htm
まあ手持ちにある数十個の2SK170から数個のペアが取れるとは思う。取れなかった場合には、その時に考えよう。
トランジスタの選別に関して
トランジスタの選別に関する注意事項もぺるけさんのサイトから引用させて頂く。
初段定電流回路で使う2SC1815はhFEが低めのYランクを指定します。hFEが高すぎると自己発振することがあるためです。
ダイヤモンドバッファで使う2SA1015と2SC1815はhFEが高い方が有利なのでGRランクが望ましいです。
出力段の2SA1358と2SC3421もhFEが高い方が有利なのでYランクを指定します。Oランクでもちゃんと動作しますが、特性がわずかに劣化します。
トランジスタのコンプリ・ペア(2SA1015と2SC1815、2SA1358と2SC3421)のhFEは同じにはなりません。常に、2SA1015<2SC1815であり、2SA1358>2SC3421です。ペアだからといって同じ値のものを探してもまず見つかりませんし、値が異なっていても特性には悪影響はありません。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
今回作成するヘッドホンアンプに使うトランジスタは、確か、全て手持ちにあったと思う。
ワテの場合は、ぺるけさん設計のhFEテスター(高性能版)を以前に製作したので、それを使ってトランジスタを選別する予定だ。
本機の音
まだ作っていないのだが、ぺるけさんによる試聴レポートから引用させて頂く。
音そのものは元になったFET差動ヘッドホンアンプの音の特徴をそのまま継承しています。出力コンデンサ容量を実質2.3倍としていることと、BTL化して信号電流が電源のコンデンサを流れないことによるアドバンテージがあるためか超低域の出方とプレゼンスがかなり向上しています。
音楽ソースにはこんな超低域の信号がはいっていたのか、と驚かされますが、低域が良く出るヘッドホンですと低域出過ぎで違和感を感じるかもしれません。
同じ効果をスピーカーで得ようとするとおそらく巨大なウーファが必要になりますから、手軽にこういう音が聞けるのはヘッドホンならではではないかと思います。
(省略)
「バランス型差動ヘッドフォン・アンプ」を同僚に聞かせるとヘッドフォンを耳から離さなくなる人、口をぽかんと開けたままになる人、素直にこれ欲しいと言うピアノを弾く子(ピアノ科出たばかりか)がいて困っています。
引用元 http://www.op316.com/tubes/balanced/balhpa.htm
このFET差動バランス型ヘッドホンアンプ15V(2017年版)の特徴としては、低音、それも超低音が出るらしい。
ワテの場合、ヘッドホンで音楽を聴いていて低音が良く鳴るなあ~なんて言う経験は今まで一度もない。
このヘッドホンアンプを使うと一体全体どんな超低音が出るのか!?
完成が楽しみだ。
まとめ
KiCADをマスターすると電子工作が100倍くらい楽しくなる。
ユニバーサル基板に手配線をするのが本来のぺるけ式であるが、そんな細かい工作はワテには向いていない。
でも、純正ぺるけ式を追究するなら、本来は長い平ラク板に手配線や、タカス基板に銅単線Φ0.28をホッチキス方式で手配線しなくてはならないのかも知れないが、ワテの場合にはそこまでの拘りは無いので、安易に専用基板を作る事にしたのだ。
つまりまあ、正確に言うと、ワテが製作するのは「純正ぺるけ式」では無くて「ぺるけ式風」ヘッドホンアンプと言う事になる。
この後の予定としては、KiCADのPcbnewで配線パターンをもう少し手直しして、それが完成したら基板製造に必要なガーバーデータを出力する。
そのガーバーデータをZIPファイルに圧縮して、海外基板業者さんのサイトにアップロードする。
今回はPCBWAYさんに製作依頼する予定だ。
と言うのは、前回、ぺるけ式トランジスタミニワッターPart5(19版)の基板をPCBWAYさんに依頼して、黒色レジストの基板がいい感じに出来上がったので(下写真)、同じ色で今回のヘッドホンアンプ基板を発注したいと思っている。
写真 専用基板で作成したぺるけ式トランジスタミニワッターPart5(19版)2020年3月~5月頃製作
黒色レジスト基板は高級感があるのでワテ好みだ。
続く
続編記事が完成した。
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