写真 hFE測定器の回路案を検討中の電子工作女子(ほんまかいな?)
此の所、電子工作に嵌っているワテであるが、週末を利用してhFE測定器を作成した。
hFEテスター、hFEチェッカー、hFEメーター、hFE計測器、hFE測定冶具などとも呼ばれる。
当記事では、ワテの備忘録も兼ねてhFEテスターの製作過程を紹介したい。
では、本題に入ろう。
どんな回路のhFE測定器を作るか?
ワテの場合は電子回路の初心者なので、オリジナルの回路を設計するのは難しい。仮に設計したとしても、正しいかどうか分からないし。
先日別の記事で紹介したFET選別器は、ぺるけさんのサイトの記事を参考にさせて頂いた。
hFEテスターに関しても、ネットの記事を参考にする事にする。
ぺるけさんのhFEテスター(高機能版)の例
hFEテスターに関しても、ぺるけさんのサイトにその製作例が記事としてまとめられている。
簡単版と高機能版の二機種が紹介されているが、もしワテが作るなら高性能版を作りたい。
ぺるけさんのサイトにあるhFEテスター(高機能版)の回路図を引用させて頂くと以下の通り。
引用元 http://www.op316.com/tubes/mi-audio/hfe-tester.htm
この回路一つで、NPNとPNPのどちらのトランジスタでもhFEを測定できるのだ。
ぺるけさんオリジナルの上図では、右側にある四つのトランジスタの配置がワテにはちょっとわかり辛いので、対称形の配置にすると同時にLTspiceでシミュレーションしてみた(下図)。
図 LTspiceでシミュレーションしたぺるけさんのhFEテスター高性能版(NPNを計測)
上図においては、右側の四つのトランジスタの部分がカスコード接続によるDUTのVCE制御回路。
ちなみにDUTとはDevice Under Test、つまり「被測定デバイス」と言う意味だ。今の場合はNPNトランジスタQ1やPNPトランジスタQ2を指している。
中央の破線四角で囲んだブロックはNPNトランジスタDUTのhFEを計測している。左端の破線四角ブロックはDUTがPNPトランジスタの場合の測定回路(今はNPN計測中なのでPNPは外している)。
ワテの場合、電子回路の初心者であるが、このぺるけさんのhFEテスターの回路図はどうにか理解出来る。ワテが言うのも何だが、非常に良く考えられている回路だと思う。
ぺるけさんのhFEテスターの主な特徴は以下の通り。
- コレクタ~エミッタ間電圧VCEを6V、3V、1Vに固定した状態でhFEの測定ができる(カスコード回路を利用)
- ベース電流を1μA、10μA、100μAの3段階に切り替えられる
- ツェナーダイオードを二個使った簡単な定電圧回路でPNP/NPNの両方のトランジスタのhFE計測に対応できる
などかな。あくまでワテの考える(理解出来た)特徴なので、詳細はぺるけさんのサイトをご参照下さい。
各種のhFEテスター回路
ネット検索してhFEテスターの自作例を見ると、幾つかの方式がある。
- 電源と抵抗だけを使った簡素な方式
- ツェナーダイオードによる定電圧回路を使った方式(ぺるけさんの作例)
- オペアンプやトランジスタを使った定電流回路でベース電流Ibを制御する方式
- PIC、ArduinoなどのプログラマブルなICを使った方式
などかな。
これらの製作例の幾つかをワテが調べた限りでは、ベース電流Ibを可変設定出来るものは幾つかあるが、ぺるけさん方式のようにIb設定だけでなく、被測定対象となるトランジスタのコレクタ~エミッタ電圧VCEまでも設定出来るものは見付からなかった。
と言う事で、ぺるけさんのカスコード接続方式のアイディアはとても参考になる。
さて、ワテもこのぺるけさんのhFEテスター回路の100%コピー版を作ってみようかなあと思った。
なぜなら先ほど述べたように電子回路初心者のワテが独自にhFEテスターを設計して正しく動くとは限らないし、そもそも設計が正しいとは限らないので。
一方、ぺるけさんの設計のhFEテスター回路の完全コピー版なら、正しく作れば正しく動くことは確実なので安心だ。
ワテ自作のhFEテスター第1号機
オペアンプとトランジスタを組み合わせた定電流回路方式のhFEテスターを過去に作った事がある
実はワテの場合、オペアンプとトランジスタを組み合わせた定電流回路方式のhFEテスターを数年前に作った事がある。
その回路図は以下の通り。
図 オペアンプとトランジスタを組み合わせた定電流回路方式のhFEテスター(PNP用)
ワテが作ったのはこの回路図の通りでは無いが、こんな感じの回路だ。確かネットで見付けた回路図を参考に作った記憶がある。
上の回路は被測定対象となるトランジスタはPNPトランジスタ用であるが、この回路を逆転した回路(0~-15Vで動作)も上図の下側に追加していて、トグルスイッチ切り替えでNPNトランジスタも計測できるようにしていた。つまりR19の接続先をPNP/NPNのどちらかのトランジスタのコレクタに切り替える。
電源は±15Vの両電源で、オペアンプも適当に選んだ2回路入りRC4558を使っている。
図中でDUT(Device Under Test)と記載している部分に被測定対象となるPNPトランジスタを取り付ける。
この回路図のオペアンプとトランジスタQ1を組み合わせた定電流回路は良く見かける方式だ。
オペアンプの+入力にはTL431を使って生成した5Vの基準電圧を与えている。これはツェナーダイオードなどの方式でも良いと思うがTL431と言うデバイスを使うとアジャスタブルな高精度基準電圧を生成出来ると言うのを知って使ってみた記憶がある。
一方、オペアンプのー入力端子はQ1のベースに接続されているが、この点(A点)の電位はオペアンプの仮想短絡(バーチャルショート)で同じく5Vになる。
その結果、R12の抵抗を流れる電流(トランジスタQ1のエミッタ電流)が一定になる。
DUTに取り付けたPNPトランジスタのベース電流はQ1のコレクタ電流に等しいが、オペアンプに流れ込む電流(あるいは流れ出る)電流を無視するとR12を流れる電流をDUTのベース電流と見なせる。無視して良いのかどうかは確証はないが、微弱なので無視しても多分良いと思う。
ベース電流を決めるR12抵抗はロータリースイッチで値を切り替えられるようにしていて、抵抗値と電流は以下のように変わる(下表)。
R12 |
Ib(R12電流) |
5MΩ(=5000KΩ) |
1uA |
1MΩ(=1000KΩ) |
5uA |
500KΩ |
10uA |
100KΩ |
50uA |
50KΩ |
100uA |
25KΩ |
200uA |
Ib[A] =5[V] / R12抵抗[Ω]
で計算している。
hFEの値を直読出来る
一方、DUTのコレクター側に入っている抵抗R19はR12の500分の1の値にしている(下表)。
これらの抵抗はロータリースイッチで連動して変化するようにしている。
R12 |
Ib(R12電流) |
R19 |
5MΩ(5000KΩ) |
1uA |
10KΩ |
1MΩ(1000KΩ) |
5uA |
2KΩ |
500KΩ |
10uA |
1KΩ |
100KΩ |
50uA |
200Ω |
50KΩ |
100uA |
100Ω |
25KΩ |
200uA |
50Ω |
例えばDUTのhFEが200だとするとIbの値を200倍すればIcが求まるので、コレクタ抵抗R19の両端電圧(VR19)は以下のようになる。
R12 |
Ib(R12電流) |
Ic(R19電流) |
R19 | VR19 |
5MΩ(5000KΩ) |
1uA |
200uA |
10KΩ |
2V |
1MΩ(1000KΩ) |
5uA |
1mA |
2KΩ |
2V |
500KΩ |
10uA |
2mA |
1KΩ |
2V |
100KΩ |
50uA |
10mA |
200Ω |
2V |
50KΩ |
100uA |
20mA |
100Ω |
2V |
25KΩ |
200uA |
40mA |
50Ω |
2V |
つまりR19抵抗の両端電圧が2Vと表示されれば、それはDUTのhFEが200だと分る。
この例では、R12とR19は500分の1の関係にしたが、5000分の1にすればVR19は200mVとなる(下表)。
R12 |
Ib(R12電流) |
Ic(R19電流) |
R19 | VR19 |
5MΩ(5000KΩ) |
1uA |
200uA |
1KΩ |
200mV |
1MΩ(1000KΩ) |
5uA |
1mA |
200Ω |
200m V |
500KΩ |
10uA |
2mA |
100Ω |
200m V |
100KΩ |
50uA |
10mA |
20Ω |
200m V |
50KΩ |
100uA |
20mA |
10Ω |
200m V |
25KΩ |
200uA |
40mA |
5Ω |
200m V |
従ってR19抵抗の両端電圧をミリボルトレンジで計測すれば、その値がhFEとなる。
と言う事で、ワテの場合はこんな感じのhFE直読式テスターを10年くらい前に自作していた。
ワテが昔自作したhFE測定器の写真
まあ、ヘンテコな外観であるが写真で紹介しよう。
ゼロプレッシャーソケットが二つあるが、右側のものは未配線で使っていない。将来、何か別の測定回路(例えばFET選別機能など)を追加する予定だったので金属加工を先に行ったのだ。でも結局未使用のままだった。
この自作機はR19コレクター抵抗をベース抵抗R12の5000分の1にしたバージョンだったのでミリボルトレンジで電圧計測すると、hFE値として読み取れる。フロントパネルのツマミが抵抗切り替えのロータリースイッチ(基板取り付け型)だ。
確か秋月かどこかの秋葉原のお店で買ったデジタル式の電圧計をアルミ板に四角い穴を開けて取り付けていた。
内部の写真は以下の通り。将来基板を追加する可能性が有ったので、シャーシ右半分にhFE測定機能を詰め込んだ。
ソケットを多用して分解し易いようにしていた。
今回、hFEテスター第二号機を作るに当たり、この第一号機は解体して、使える部品は再利用する事にした。
ソケットの取り外しはコツがいる
下写真は3ピンのソケットの半田付けを取り除く作業の様子だ。
抵抗などなら二本足なので、一つずつ半田を除去すれば引き抜ける。
ところがトランジスタとかIC、ICソケット、多ピンのコネクタなどは全部の足を同時に半田ゴテで熱しないと引き抜く事が出来ない。
部品除去用の先端が幅広の半田ごてを持っていれば良いが、ワテの場合はそんな便利なツールは持っていない。
そこで、半田吸い取り線を利用して一気に全部の足を温めて引き抜いた。
コツとしては、半田吸い取り線に事前に半田を沢山吸い込ませておいて(あるいは使用済の半田吸い取り線を利用すると良い)、熱すると良い。
その結果、無事に三ピンのコネクタを引き抜く事が出来た。ただしこの方法はかなりの熱を部品に加えるので、トランジスタ、ICなどの能動部品には適さないかも知れない。まあダメ元でトライする分には良いと思う。
なお、現在は有名なはんだシュッ太郎を買ったので、半田吸い取り線を使う頻度は減った。
サンハヤト はんだシュッ太郎NEO 45Wタイプは実売価格五千円くらいなので少々高かったが買って正解だった。なぜなら一瞬でスルーホール内部の半田を吸い取って除去出来るからだ。
皆さんにもお勧めしたい。
hFEテスター第2号機製作開始
hFEテスター第2号機は第一号機にぺるけさんカスコード接続案を採用
このhFEテスターにぺるけさんのカスコード接続のアイディアを組み込んで改造する事にした。
電子回路初心者のワテの設計なのでおかしな点があるかも知れないが、回路図を公開してみる(下図)。
図 ワテ自作のhFE直読式テスターVer.2の回路図
もし何かお気付きの点がありましたら末尾のコメント欄からお知らせ下さい。
回路図の注意事項は以下の通り。
TL431で基準電圧を作成する部分を先に試す
TL431を使って基準電圧を作る部分はLTspiceシミュレーション結果と実機とで値が大きく違ったので苦労した(違った理由は未確認だ)。
結論としては、事前にTL431と周りの幾つかの抵抗による基準電圧生成部分をブレッドボードで試作して抵抗値を決めると良いだろう。つまりR8に5V、R16に-5Vが掛るように抵抗値を決めた。
CRDによる定電流回路
ぺるけさんの製作例(高機能版hFEテスター)では、定電流ダイオードCRDは0.7~1.0mAが使われている。ワテの場合には定電流ダイオードを持っていなかったので、2SK30のゲートとソースを接続して定電流ダイオード化したやつを使った。そうしたら偶々、電流値が3.3mAになったのでそれを使っている。ぺるけさんの指定値よりも3倍も大きいが、この値が大きいと何か問題あるのかな?その辺りは全く分かっていないw
現在選択中のトランジスタを示す四つの発光ダイオードを光らせる回路
SN74HC00とリレーを使った回路を即席で追加したのだが(後述)、手書きのノートはあるのだが、後で見直しても自分でも良く分からない。回路図を思い出して清書出来たらここに追加したい。
小型シャーシを自作した
シャーシも小型化する事にした。他の記事で紹介しているFET選別冶具と同じサイズ(150x90x35)のサイズにした。
150x30x30x1.2tのアルミLアングルを二本用意して、長さ90ミリ弱の木片二本で連結すれば完成だ。
安上がりだし、上蓋、下蓋が無いのでメンテナンス性も良い。
シャーシ加工の過程は省略するが、ボール盤を使ってササッと加工を済ませた。
トグルスイッチ類はどこで入手したのか記憶も無いジャンク品を使った。
右奥の黒いロータリースイッチは秋月で買った150円のやつ。安いけれどストッパー付きなので、例えば2回路6接点タイプであったとしても2接点~6接点までを自由に設定出来るのだ。さらにツマミまで付いているので自作派にはお勧めのロータリースイッチだ。他には1回路12接点、4回路3接点もある。
ネットショッピングサイトにも似た様なのは売っている。
シャーシ穴開け加工にお勧めのツール
ロータリースイッチの取り付け穴は10ミリ前後の大穴になるが、ワテが使っている小型ボール盤のチャックには普通の丸軸ドリルビットで直径10ミリなんて太いのは取り付けられない。
六角軸のドリルビットを買い揃えても良いが、ワテはステップドリル(タケノコドリル)を愛用している。
似た様な製品は沢山あるので、使った事が無い人はどれでも良いから買ってみると良い。六角軸なのでどんなドリルにでも取り付けられる。小型ボール盤でもこんなに大きな穴を綺麗に開けられるのか!と言うくらい感動する。
直径20ミリくらいなら難なく開けられる。30ミリくらいの大き目のステップドリルを使えば30ミリでも開けられるが、大穴になればなるほどボール盤のトルクが必要になるので、急がず慌てずにじっくりやれば可能だと思うがワテはそんなに大きな穴はあけた事が無い。
薄板用のドリルビット
ちなみに薄いアルミ板などに綺麗な真円を狙った位置にスパット開けられるのがこの「すぱっとドリル」だ。
刃先に特徴があり中心がズレにくく、かつ、薄板でもバリが出にくい構造なのでアルミシャーシ加工などの薄板には最適なのだ。
ワテも欲しいと思っているのだが、少々値段が高いので買っていない。
薄板に普通のドリル刃で穴を開けると真円形ではなくて三角おむすびのような形になり易い。
でもこのすぱっとドリルを使うと驚くほど綺麗に真円が開くと言う噂なのだ(ネット上の自作記事など)。
もし丸軸タイプが欲しい人は、同じような製品で三菱マテリアル社製の「穴あけ上手」がある。
一本数百円なので、数本揃えると数千円。欲しいんだけれど中々手が出ない。あれば便利だと思うが今使っている普通のドリルビットセットでもまあ加工は出来るし。
さて、本題に戻ってhFEテスター第二号機の製作過程を紹介したい。
プリント基板をカットしてシャーシ内部に収めた。基板取付型のロータリースイッチは金属製で丈夫なので、下図のようにフロントパネルにロータリースイッチを固定するとプリント基板も支える事が出来た。
このALPS製のロータリースイッチは、4回路6接点もあり、2.54mmピッチのプリント基板に直接半田付け出来るので便利だ。
同じような製品は秋葉原とかネットショッピングサイトでも見掛けないが、新品で買えばかなり高いと思う(たぶん1000円くらいかな)。スイッチ一個に1000円の出費は高いが、ワテの場合は、以前、ジャンク品を何個かまとめて安く入手したのがあるので今回も使う事にした。
なお、4回路のうち1回路は使っていないので、もし似た様なhFEテスターを自作したい人は、比較的入手しやすい3回路4接点のロータリースイッチを使うと良いだろう。その場合は、ベース電流IBの設定が4段階になるので、1µA、5µA、10µA、・・・など、自分の希望する値を4つ選んでベース電流を決めると良い。
ロータリースイッチの左右には、抵抗(ベース電流を決めるR12抵抗群)と抵抗を微調整する為のポテンショメータを取り付けた。左側がPNPトランジスタ測定用、右側がNPNトランジスタ測定用だ。
ちなみに青色のポテンショメータは、昔ジャンク屋のお楽しみ袋300円くらいだったと思うが、その中に各種抵抗値で合計100個くらい入っていたのでまだまだストックがある。なので、バンバン使う事にした。
調整時にはベース電流をテスターで計測できるようにする為に、ICソケットを使って回路を分断出来るようにした。通常は上写真のようにジャンパーリード線でショートしておく。
盛り蕎麦状態の配線
六割くらい配線が完了した。
小型のシャーシに押し込んだので、内部配線が入り乱れる状態になってしまったのは失敗だった。
もう少し大き目のシャーシにすれば、プリント基板を取り付けた状態で各スイッチに配線出来たのだが、小型シャーシに拘ったばかりに配線するたびにプリント基板を取り外す手間が掛かる。
なお、上写真はhFE測定機能自体は動作する事が確認出来た時の状態だ。
ところが、この後で紹介するように、発光ダイオードを使って現在選択中のトランジスタを表示する機能を即席で追加したものだから、さらニ十本くらいの配線を追加する事になってしまった。
上写真の右側にある14ピンICソケットやオムロンG5V-2リレー(二個)などでその機能を実現している。リレーももちろん50円くらいで買ったジャンク品だ。
ようやく完成したhFEテスターVersion2を使う
膨大な配線に苦労したが、どうにか完成した。
下写真に示すように、奥にある黒レバーのトグルスイッチでPNP/NPNトランジスタの切り替えを行う。
ゼロプレッシャーソケットの左はPNP、右はNPNを挿す。
二列になっているので、手前と奥にトランジスタを挿せる。
手前か奥かのどちらのトランジスタを計測するかを選択するトグルスイッチが左手前にあるTR1/TR2スイッチだ。
下写真では、NPNトランジスタ(右側)のTR1(手前側)を選択しているので、右下のLEDが緑色に光っている。このトランジスタが測定対象(DUT)となる。
ちなみに、電源はワテ自作の外部電源から来ているD-Sub15ピンコネクタを本体背面に挿し込む。
ジャンクで買ったACアダプター(15V, 20Vを各二個ずつ)や自作の5V電源(実際は4.8Vくらい)を箱に入れていて、そこからケーブルで引っ張って来てこのD-SUB15ピンに出力している。
今回は0-15, 0-15を接続して (-15)-0-(+15)の両電源として利用している。またSN74HC00や5Vリレー駆動用に5V電源も利用した。
トグルスイッチを切り替えると被測定対象トランジスタをLEDで表示出来る
下図は右奥のNPNトランジスタが選択されている。
下図は左奥のPNPトランジスタ。
下図は手前のPNPトランジスタ。
下図は右手前のNPNトランジスタが選択状態。
ここで、測定器の右側にある計測開始スイッチをONにすると計測が行われる。
その時にはLEDを赤く表示するようにした(下図)。
まあ、四つのトランジスタを挿して測定する事は少ないとは思うが、例えばペア候補の二つの2SC1815をNPNの手前と奥に挿して計測する。
あるいはコンプリペア予定の2SA1015と2SC1815をPNPとNPNの手前に挿して計測するなどの可能性はあるので、このLED表示機能は今どれを測定しているのかが視覚的に分るので便利だと思う(自画自賛)。
ただし、この機能を即席で追加したものだから、それだけで週末一日を費やしてしまった。かつ、74HC00に5Vを印可する予定が間違えて15Vを加えたので、完成後に動作実験した時に10秒くらいは正常動作したのだが、その後、74HC00は壊れてしまった。
さらにデバッグ中にもう一個74HC00を壊してしまった。何だか焦げ臭い匂いがしているなあと思ったら74HC00が猛烈に発熱している。
絶対最大定格 (注 1)
項 目 記 号 定 格 単位 電源電圧 VCC −0.5~7 V 入力電圧 VIN −0.5~VCC + 0.5 V 出力電圧 VOUT −0.5~VCC + 0.5 V 入力保護ダイオード電流 IIK ±20 mA 出力寄生ダイオード電流 IOK ±20 mA 出力電流 IOUT ±25 mA 電 源 /GND 電 流 ICC ±50 mA 許容損失 PD 500 (DIP) (注 2)/180 (SOP) mW 保存温度 Tstg −65~150 °C 注 1: 絶対最大定格は、瞬時たりとも超えてはならない値であり、1 つの項目も超えてはなりません。
引用元 TC74HC00AP_datasheet_ja_20140301.pdf
まあ上表を見ると絶対最大定格でVccは7Vまでなので15V掛けたら10秒足らずで壊れたのは仕様書の記述が正しい事が証明された!と言う事かな。
74HC00でLEDを直接駆動する
電気的特性
項目 記号 測定条件 値 単位 出力電流 (Min) IO VCC=4.5V 4 mA 遅延時間 (Typ.) tpd_tpz VCC=5V 6 nsec 電源電圧 (Max) VCC – 6 V 電源電圧 (Min) VCC – 2 V
引用元 TC74HC00AP_datasheet_ja_20140301.pdf
絶対最大定格の出力電流は±25mAで、標準で4mAのドライブ電流と言う事なので、LEDの光量を控え目にして4mA程度の電流になるようにした。
まあ、これで発熱で壊れる心配は無いだろう(と思うが)。
hFEテスターVer2を早速使ってみる
NPNトランジスタのhFEを計測した例
NPNの場合はマイナスで表示される。
下写真の場合は2SC1815GRのhFEが346と計測されている。
東芝の2SC1815のデータシートによると、
東芝トランジスタ シリコン NPN エピタキシャル形 (PCT 方式)
2SC1815hFE 分類 O: 70~140, Y: 120~240, GR: 200~400, BL: 350~700
との事なので、妥当な値だ。
PNPトランジスタのhFEを計測する
2SA1015GRの場合はプラスで表示される。
同じく東芝のデータシートを見ると以下の通り。
東芝トランジスタ シリコン PNP エピタキシャル形 (PCT 方式)
2SA1015hFE 分類 O: 70~140, Y: 120~240, GR: 200~400
hFE=210と計測されたがこちらもデータシートにある値の範囲内なので妥当な値だったので一先ず安心だ。ちなみに2SA1015BLと言うのは無いようだ。知らなんだ。
5000分の1案のほうが良かったかも
コレクタ電流を計測する抵抗は深く考えずにベース抵抗の500分の1にしたのだが、hFEが1000とかの大きな値のトランジスタの場合だと500分の1案だと計算上はコレクタ抵抗R19の両端電圧(VR19)が10Vになり、VCEを12Vや9Vと言った値に設定すると正しく動かないと思う。
でもまあ、ワテの場合は、hFEを計測して選別するなら2SA1815GR(hfe=200~400)くらいなので取り敢えずこのまま使ってみる。
もし改良するとしても、六つの抵抗値を10分の1に減らすだけなので作業自体は簡単だ。
ただし作業中に既存の配線の半田付けが外れたりすると、どこに繋がっていたのか思い出すのに時間が掛かるのでその点は要注意だが。
その後、5000分の1案に変更した。
フロントパネルのロータリースイッチでベース電流Ibを6段階切り替え
目盛の数字がシャーシ上部からシャーシ前面につながると言う斬新な目盛を採用した。
この目盛を描いた後で、何かに似ているなあと思ったのだが何かは思い出せない。
でも本日気付いた。
サルバドール・ダリの有名な作品の一つである「記憶の固執」に描かれた溶けて柔らかくなった時計に似ているぞ。
非現実性を表現したシュルレアリスムの代表作であるダリの作品を彷彿とさせるワテhFEテスターの目盛。
電子工作にアートを意識したワテの美的センスもかなりのもんだ。
ほんまかいな。
VCEはロータリースイッチで5段階切り替え
ロータリースイッチが2回路6接点だったので、5接点を使ってVCEを5段切替にしてみた。
テスターで計測すると、VCE=3V設定の時に下写真のようにVCE=2.9371Vと計測された。まあ微妙にずれているが、PNP/NPN共にこれくらいの値なので絶対値としては正しくないが相対値としては同じくらいなので良しとする。もし気になる人は抵抗値を微調整すると良いだろう。
でもまあワテの経験で言うと、自作の簡易測定器で厳密なhFEの値を精度よく計測するなんて言うのは難しい。なので、アンプなど作成する時に、毎回hFEを計測して特性が揃ったトランジスタでペアを組むと良いだろう。
一ケ月前に測定したTr1と今日測定したTr2のhFEがほぼ同じなのでそれでペアを組むなんてのは、お勧めしない。気温も違うし。
まあそんな人はいないと思うが。
下部はプリント基板が剥き出し。
上写真は、基板右端に取り付けた74HC00やリレーの配線をする前。この後、さらに数本の配線を基板裏側に追加した。
その結果、組み立てると内部の数十本の配線が入り乱れる状態になってしまった(下写真)。
まとめ
当記事では、ワテが過去に自作したhFE計測器をバージョンアップしてhFE計測器Ver2を作成した過程を紹介した。
回路の構成としては、オペアンプとトランジスタを組み合わせた定電流回路で被測定対象トランジスタのベース電流を設定する。
基準電圧5Vの状態で、ベース電流設定用抵抗とコレクター電流設定用抵抗の比率を500分の1にしたので、コレクター電流設定用抵抗の両端電圧が3.47Vと出ればhFEが347と直読出来る工夫を入れた。
被測定対象トランジスタのコレクタ~エミッタ間電圧VCEを固定する工夫として、ぺるけさんのサイトにあるhFEテスター高性能版の回路にあるカスコード接続のアイディアを借用させて頂いた(http://www.op316.com/tubes/mi-audio/hfe-tester.htm)。
今後の教訓としては、シャーシはあまりコンパクトにしてもメリットは無い。
逆にデメリットだらけ。
今回製作したhFEテスターの場合、配線するたびに基板を取り外す必要がある。調整する為に基板を取り外す必要があるなど、何かと面倒。
その点は大失敗だった。
でもまあ、SN74HC00を二個壊した以外は順調に完成したので良しとするかな。
なお、ワテが作成した回路の妥当性などは、ワテ自身では評価できないので専門家の方のコメントなどお聞かせ頂けると嬉しいです。
コメント
R13,R17の、2.7Ωはなぜあるのでしょうか?
当方も初心者なので、愚問かもしれませんがよろしくお願いします。
tk様
この度は小生の記事にコメントありがとうございます。
>R13,R17の、2.7Ωはなぜあるのでしょうか?
さてお問い合わせの2.7キロΩ抵抗がなぜあるのか?ですが、正直なところ私も良く分かりません。
最初に作ったのが下図のhFEテスター1号機です。十年以上前の事です。
https://www.wareko.jp/blog/wp-content/uploads/2019/03/032519_0819_2.png
この回路は記事中でも説明していますが、ネットで見付けた回路を参考にしました。そのサイトのアドレスは今では思い出せないですが、確かその参考回路にも数キロΩの抵抗が入っていたと思います。それを真似したのだと思います。
1号機の回路を流用して2号機を設計したのでそれらの抵抗がR13,R17です。
電子回路初心者の私なりの解釈では、
この回路では、オペアンプとトランジスタ(Q1,Q3)を組み合わせるタイプの定電流回路を利用しています。
もしR13が無い場合にはQ1のコレクタとQ2のベースが直接接続されますので、Q2のベース電位の変化がそのままQ1のコレクタ電位の変化になります。
でもR13が入る事で抵抗による電圧降下が発生するので、Q1コレクタ電位の変動を抑えられる効果があるのではないかと思います。その結果、オペアンプとトランジスタを組み合わせた定電流回路がいつも同じような条件で動作させる事が出来るなどのメリットがあるのかも知れません。
でも、実際のところ、この部分を流れる電流は0~数百100µA程度ですので、仮に100µAだとしても2.7kΩでの電圧降下は270mVと小さいです。
ですので、私が公開している回路に関しては、抵抗は無くても良いかもしれません。
なお、このhFEテスターはリレーやスイッチを沢山使っていますが、経年変化で接点の接触抵抗が増えて来たようで、同じトランジスタをゼロプレッシャーソケットの上段、下段でそれぞれ測定してもhFE測定結果が数パーセントくらい違う値で出てしまうようになりました。
ですので、今後、時間が有る時にKiCadを使って専用基板を設計するなどして、新しく作り直したいと思っています。
ワレコ様、はじめまして。
hfeメーターの記事拝見しました。
D.U.Tのベースに流す定電流を、オペアンプとトランジスタで制御されているわけですが、選定されている部品等に関して、少々疑問があります。
4558の入力は、PNP型のTrでありますため、掃き出しのバイアス電流(Ibias)となります。
その値はデータシートによりますと、25℃という環境条件で最大500nAと無視できない値です。
検出用抵抗器に流れる電流をIrとすると、Ir=Ib+Ibiasとなります。
つまり、Vrefと比較している電圧Vrは、Vr=(Ib+Ibias)xRとなりますので、想定よりも高い電圧で比較していることになります。
1μAや10μAとされているIbは、誤差が大きくなるということになろうかと考えます。
先に書きましたように、4558のバイアス電流はアプリケーションとしてはかなり大きく、そのために入力インピーダンスも低いです。
検出用抵抗器の定数は計算は合っていますが、数MΩの抵抗器に生じる電圧をまともにオペアンプに入力するならば、よほど入力インピーダンスの大きなオペアンプでなければ、誤差を抑えることはできません。
トランジスタのhfeを相対的に比較されるならば無論問題ないかと思いますが、他所で計測されたデータと比較するには向かないのではと考えます。
付け加えますと、この定電流回路は発振しやすいので注意してください。
とんとかいも様
この度は小生の記事に詳しい解説コメント有難うございます。
>4558の入力は、PNP型のTrでありますため、掃き出しのバイアス電流(Ibias)となります。
>その値はデータシートによりますと、25℃という環境条件で最大500nAと無視できない値です。
恥ずかしながら実は私はそのあたりの特性は全く気にしていませんでした。
たまたま手持ちにあったオペアンプを使っただけと言う、素人丸出しの電子工作です。
>検出用抵抗器に流れる電流をIrとすると、Ir=Ib+Ibiasとなります。
>つまり、Vrefと比較している電圧Vrは、Vr=(Ib+Ibias)xRとなりますので、想定よりも高い電圧で比較していることになります。
>1μAや10μAとされているIbは、誤差が大きくなるということになろうかと考えます。
なるほど、1µAに対して500nAは無視出来ないですね。
>トランジスタのhfeを相対的に比較されるならば無論問題ないかと思いますが、
そうですね、わたしの場合はトランジスタのペアを組む時に毎回hfeを測定していますので、絶対的な値からは多少ずれていても良いので相対的な値が得られれば良いかなあと言うくらいの気持ちで作りました。
でも、とんとかいも様のご指摘のように4558のバイアス電流最大500nAは無視出来ないですので、この際、入力インピーダンスの大きなオペアンプを使って第二号機を作ってみようかと思います。
この度は、大変詳しい解説並びに、改良する上での有益なアドバイス有難うございました。
大変勉強になりました。
われこ様
ご返信ありがとうございます。
hfeメータの2号機を製作されるのでしたら、Ibの定電流回路はオペアンプを用いた定電流回路は適さないと考えます。
おそらく、現用の機器ではIb設定を小さい値にするとドリフトも加わって安定しないという課題もあるのではと思います。
テキサスインスツルメンツや、STMicroelectoroよりリリースされている電流源ICの「LM334」を用いられれば、1μA ~の安定した定電流を得られます。
電流値設定の抵抗値の調整は必要ですが、計算では約68kΩの抵抗器1本で1μAに設定できます。
とんとかいも様
電流源IC「LM334」の紹介ありがとうございます。
こんな便利なICがあるんですね。
基準電圧ICのTL431は知っていましたが、定電流ICと言うのがあるのは知らなかったです。
>電流値設定の抵抗値の調整は必要ですが、計算では約68kΩの抵抗器1本で1μAに設定できます。
外付けの抵抗1本で電流設定が出来るので便利ですね。
もしバイアス電流を1uA, 5uA, 10uA, … のように可変設定出来るようにするにはこの抵抗値を切り替えれば良いんですね。
>hfeメータの2号機を製作されるのでしたら、Ibの定電流回路はオペアンプを用いた定電流回路は適さないと考えます。
>おそらく、現用の機器ではIb設定を小さい値にするとドリフトも加わって安定しないという課題もあるのではと思います。
その通りで、現行の1号機ではhfe測定値(=テスターのDC電圧計測値)が測定中にかなり変動します。
ICが流れる事で発熱するのでそれがhfe変動の原因かと思っていたのですが、実際はオペアンプ式の定電流回路で微小電流を作る方式に無理がありIbがドリフトしているんですね。
謎が解けました。
と言う事で、とんとかいも様のアドバイスを機会にhfeテスター第2号機を作ってみようかなと思います。
大変ありがとうございました。
とても勉強になりました。
われこ様
おせわになっております。少しでもわれこ様のお手伝いとなりましたら幸いです。
実は、当方の開発製品に使用する赤外線発光のLEDをドライブするためのコンプリメンタリTrを、ある程度正確にデータを取るためhfeメータを製作するところでした。
ロジックの出力( 約2MHz )を、極力波形がなまらないように、尚且つ部品点数を抑えた回路を考えますと、トランジスタバッファに行き着きました。
LM334を使用したhfeメータの回路図(一部描きかけ)を作成してあります。
回路図のPDFを添付でお送りできますので、メールアドレスのほうにご連絡先(メールアドレス)をお教え頂けましたら、お送りいたします。
とんとかいも様
私のメールアドレスは以下の通りです。
wareko77@gmail.com
回路図、よろしくお願いします。
私自身でも既存のhfeテスターの回路図をLM334を使って改良を加えたいと思っています。