先日入手した中古鉋を少し手入れした。
単なるワテの備忘録だが。
では本題に入ろう。
中古鉋を手入れする
下写真が先日リサイクルショップで入手した中古鉋(手入れ前)だ。
写真 先日リサイクルショップで入手した中古鉋(手入れ前)
上写真は購入後に赤錆を真鍮ブラシで軽く落とした状態だが、それでもまだまだ赤錆が至る所にある。鉋台の表面も汚れている。
まずは下写真の二丁の鉋をメンテナンスした。
写真 先日リサイクルショップで入手した中古鉋(手入れ前)
まずは上写真左側の寸八鉋の手入れを行う。
金盤にサンドペーパーを敷いて鉋台を研磨
下写真のように鉋や鑿の裏押し用金盤を自作の集塵作業台の上に載せた。
写真 鉋や鑿の裏押し用金盤を自作の集塵作業台の上に載せた
金盤は本来は金剛砂を使って鉋刃の裏を平面にするいわゆる裏押しと言う作業に使うが、ワテの場合は金盤の表面がすり減るのが嫌なので下写真のように紙やすりを使うことにした。
はっきり言って貧乏性である。
まずは寸八鉋(国宝 大和 名人)のメンテナンスだ。
下写真では鉋台を研磨しているが、その前に赤錆が付いていた鉋刃の裏側も紙やすりで研磨しておいた。
写真 金盤の上に80番手の紙やすりを敷いて鉋台や鉋刃を研磨
赤樫かと思われる鉋台の表面にはシールや紙が貼ってある。紙やすりでゴシゴシ擦ったらある程度は除去出来た(下写真)。
写真 表面を研磨した鉋台や鉋刃
鉋刃や裏金の赤錆は紙やすりだけでは除去出来なかったので、写真には撮っていないがステンレスブラシを電動ドリルドライバーに付けて研磨した。
その結果、上下写真のように赤錆も殆ど除去出来てきれいな状態に仕上げることが出来た。
軸付きホイールブラシを使った研磨作業では千切れたワイヤーが飛び散るので安全ゴーグルは必須だ。ワテお勧めのBOLLE SAFETY社の曇らない安全ゴーグルはこれだ。解説記事はこちら。
写真 表面を研磨した鉋台や鉋刃
今後は、鉋刃を砥石で研ぐ作業を予定している。
鉋台は80番手の紙やすりで研磨しただけなので、今後はもう少し細かい番手の紙やすりで表面を整えたい。
80番手の紙やすりはかなり粗いので良く削れた。
砥石やサンドペーパーは粗い粒度を使うほうが作業効率が良い
ワテの経験で言うとDIYで研磨作業を行う場合、ちょっと粗いかなあと思うくらいの粒度の紙やすりや砥石を使うほうが作業効率は良い。
例えば刃先が大きく欠けた包丁を1000番手の砥石で研ぐのは時間が掛かり過ぎる。そう言う場合には500番どころか220番くらいの荒砥を使うほうがグイグイと削れるし、手も疲れない。
それを1000番手なんかで何十分とか1時間も掛けて研ぐと、指は痛いし指先の皮が砥石で擦れて血が出るし、良いことは何一つ無い。経験者のワテが言うのだから間違いない。
ちょっと高かったがワテもこの刃の黒幕220番手を持っている。お勧めだ。
写真 軸付きステンレスブラシで研磨して赤錆を落とした鉋刃(国宝 大和 名人)と裏金
なお、当初は錆びた鉋刃はなるべくダメージを与えないように配慮して軸付き真鍮ブラシで擦ったのだが、真鍮は研磨力が低かったので途中からステンレスブラシに交換した。
黒錆加工されている鉋刃を金属ブラシで強力に研磨すると赤錆と一緒に黒錆も削り落としてしまうが、気にせずに研磨した。そのほうが見た目が綺麗になるので。
錆落としにクエン酸や重曹は使わない方針
他の人のYouTubeやブログ記事などを見ると、錆びた刃物や金属工具の赤錆落としには、酸やアルカリ溶液を使う人が多い。
具体的には酸性溶液ならお酢、サンポール、ケチャップ、クエン酸などだ。
アルカリ溶液なら重曹を水に溶かす。
実はワテも以前に100均で買ってきた粉末クエン酸を水に溶かして錆びた鉋刃の赤錆除去にトライした事がある。
確かに酸で鉄表面を溶かせば赤錆はよく落ちるのだが、ワテはその後は酸やアルカリ溶液を錆落としに使うのは中止している。
その理由は、あくまでワテの好みの問題なのだが、鍛錬して作られている鋼(はがね)には目に見えないくらいの多数の隙間や穴が有るのでは無いかとワテは思うのだ。そんな鋼を酸性溶液やアルカリ性溶液に漬け込むと、表面の赤錆だけでなく目に見えないくらい小さな隙間部分にも液体が入り込み、鋼の内部を侵食してしまうのでは無いかと想像するのだ。
その結果、鋼が脆くなって切れ味が悪くなるんじゃないのかと。
それに、昔の刃物研ぎ師、例えば本阿弥光悦さんが錆びた日本刀をクエン酸溶液や重曹溶液に漬け込んだとは思えないし。
そんな化学薬品などは使わずに荒砥で地道に研いだだろう。
なので、ワテの場合は液体状の酸性やアルカリ性薬品は使わずに機械的研磨だけで錆落としをする事にしているのだ。
単なる気持ちの問題かもしれないが。
真鍮刃口板付きデコラ鉋(福三郎)を手入れする
下写真の真鍮刃口板付きデコラ鉋(福三郎)は鉋台も鉋刃も研磨して綺麗にした状態だ。
写真 真鍮刃口板付きデコラ鉋(福三郎)は鉋台も鉋刃も研磨した
冒頭のメンテナンス前の写真ではこの真鍮刃口板付きデコラ鉋(福三郎)は鉋台もかなり汚れていて刃も赤錆にまみれていたが、上下写真に示すように手入れ後は新品同様に復活したぞ。
写真 真鍮刃口板付きデコラ鉋(福三郎)は鉋台も鉋刃も研磨した
下写真のように真鍮刃口板も真鍮本来の光沢が復活した。
現状では80番手の荒い紙やすりで研磨しただけなので、今後はもう少し細かい紙やすりで仕上げる予定だ。
写真 真鍮刃口板付きデコラ鉋(福三郎)の真鍮も光沢を取り戻した
上写真では四つのマイナスネジの錆が残っているが、これはこのまま使うことにする。
なぜなら恐らくこれらの四つのマイナスネジは錆び付いていて外すのは難しいと思われるので。
YouTube動画で類似のデコラ鉋の修復作業を幾つか見たが、金属板を固定しているネジを無理やり回して外そうとしてネジが捩じ切れて折れる失敗している例を幾つか見た。
ネジを途中で切ってしまうとネジ周囲の鉋台部分を小刀や細い鑿などで彫り込んでネジの残骸を掘り出さなくてはならない。
そうなると作業も面倒くさいし、鉋台に穴を掘ってしまうのであとから埋木をして補修する必要がある。そう言う理由でネジを外すのはやめたのだ。
下写真のように錆び錆びだった福三郎の鉋刃もステンレスブラシで擦ったら赤錆を除去することが出来た。
写真 錆び錆びだった福三郎の鉋刃もステンレスブラシで擦って赤錆除去
下写真において鉋刃先端の傾斜している部分(しのぎ面)にグラインダーで削ったと思われる凹みがあるのが分かるだろう。
下写真ではグラインダーの削り跡はしのぎ面の左右にしか無いが、元々はしのぎ面の左右だけでなく中央部も全てグラインダーで削って凹ませていたと思う。
写真 錆び錆びだった福三郎の鉋刃もステンレスブラシで擦って赤錆除去
しのぎ面を砥石を使って研ぐ場合、下手な人が研ぐと平面にならずに丸まって膨らんでしまう。ワテもだが。
恐らくこの鉋の前の持ち主さんは、しのぎ面の中央部の軟鉄部分をグラインダーで削って凹ませたのだと思う。
そうしておけば砥石で研いだ時に接触面積が減るので研ぎ時間を短縮出来るし、かつ、しのぎ面の平面を出し易いからだ。鉋刃を効率よく研ぎたい場合には、そう言うテクニックがあるのはワテも知っている。
最初に手入れした寸八鉋(国宝 大和 名人)やこのあとで手入れする反り鉋の刃にも同様にグラインダーで削った痕跡があった。
なので、冒頭の写真に示す鉋四丁は同じ所有者さんだったと思われる。
鉋刃の状態から持ち主さんの心理状態や作業状況を推測するのも面白いのだ。
反り鉋 忠生
下写真の反り鉋(忠生)は鉋台は何も手入れしていない。見た目もそんなに汚くはないのでこのまま使う予定だ。
写真 反り鉋 忠生(鉋刃と裏金の赤錆除去済)
一方、鉋刃と裏金はかなり赤錆が出ていたので、軸付きステンレスブラシで入念に研磨した。
その結果、上下写真のように赤錆を殆除去することが出来た。
写真 反り鉋 忠生(鉋刃と裏金の赤錆除去済)
このあと、砥石で研ぐ予定だ。
自在角面取鉋
この自在角面取鉋の鉋刃と裏金は赤錆でカチカチに固まっていて台から抜くのに一苦労したやつだ。
鉋台は何も手入れしていないが、鉋刃と裏金はステンレスブラシで強く研磨した。
写真 自在角面取鉋の鉋刃と裏金はステンレスブラシで強く研磨した
強く磨いたので黒皮も一部が無くなって鉄の地肌が見えているところもあるが、刃物用錆止め油を塗っておけば赤錆が出ることは無いだろう。
DIYで手抜きや横着は最も危険
なお、上写真のように裏金も鉋刃もとても小さいので、研磨作業がとてもやり辛かった。
当初は右手に電動ドリルドライバー(ステンレスブラシ付き)を持って、ブラシを高速回転させながら、作業台の上に置いた鉋刃や裏金を左手で押さえて研磨していたのだが、うっかりして左手の指先を研磨してしまった。
そう言う危なっかしい作業が大事故の元なのだ。
今回はステンレスブラシだったから大事に至らずに済んだが、もしこれが回転刃物系の電動工具なら指先が飛んでいただろう。
なので、途中からはL型クランプで鉋刃や裏金を作業台に固定しておいて、左右の手で電動ドリルドライバー(ステンレスブラシ付き)を使って研磨した。
クランプの位置を何度か変える手間が掛かるが、その手間を惜しんで安易に左手で押さえて研磨すると事故が起こるのだ。
教訓:DIY作業では横着はしない。手抜きや横着は大事故の元だ。
クルミオイルを塗布した
その後、寸八鉋「国宝 大和 名人」の鉋台は台頭や台尻の金槌で叩かれて傷んでいる部分を150番手の紙やすりで軽く研磨して修正した。
そして下写真のように食用クルミオイルを塗布した。
写真 クルミオイル塗布直後の寸八鉋「国宝 大和 名人」上端
上写真のように赤樫だと思われる鉋台は本来の高級感がある質感が出ているぞ。冒頭の手入れ前の写真と比べると見違える美しさだ。
どんな木でもクルミオイルなどのオイルを塗布すると見た目が綺麗になるのでワテはオイル仕上げが大好きだ。
写真 クルミオイル塗布直後の寸八鉋「国宝 大和 名人」下端
上写真のようにテカテカに光っているぞ。まるで赤カブトムシのような光沢だ。
木工でオイルフィニッシュに使われる主なオイルやワックスに対するワテの印象を表にまとめてみた。
種類 | ワテの印象 |
ワトコオイル | 亜麻仁油を主成分にしているが有機溶剤が混じっているので鼻にツンと来るのでワテは嫌い。塗布して時間が経てば有機溶剤の匂いは消えるとは思うが。 |
荏胡麻油(えごまあぶら) | 生臭い魚のような独特の匂いがある。こんな匂いを好む人がいるのか?ワテには耐えられない。 |
亜麻仁油(あまにあぶら) | 使ったことは無いが、亜麻仁油は荏胡麻油と同じ系統の生臭い魚のような匂いらしい。ワテは使いたくない。 |
クルミオイル | クルミの匂いが嫌いな人は少ないと思うので、万人受けすると思う。値段も安い。 |
蜜蝋(みつろう)ワックス | ミツバチの巣からとれる蝋成分と植物由来のオイルを混ぜて作る。ワテも蜜蝋ワックスを使ってみたいと思っている。値段はクルミオイルよりは若干高めか。 |
表 木工作品に良く使われるワックス系材料とワテのコメント
と言う事でワテの場合はクルミオイルを使っている。
上写真の鉋台だけでなく、手持ちの数丁の鉋台もついでにクルミオイルを重ね塗りしておいた。手持ちの鉋台は時々クルミオイル塗り込んで手入れしているのだ。台だけでなく刃や裏金にも塗るようにしている。錆止めになるから。
なお、鉋台の手入れ方法の一つに油台というのが有る。
鉋台を二週間ほど油に漬け込むのだ。具体的には亜麻仁油やクルミオイルなどの乾性油が良いらしい。乾性油とは時間が経てば乾燥して固まる油だ。一方、不乾性油というのもあり、サラダ油やオリーブオイルなどが不乾性油で、これらは時間が経っても乾燥しないので鉋台に塗るのはお勧めではないようだ。いつまでも固まらないからベタつくので。
乾性油に漬け込んだ台は油をよく拭き取れば油台が完成する。
そのようにして作成した油台は鉋台の乾燥を防げるので台に狂いが生じにくいとの事だ。また鉋刃の左右の部分は油台の溝に嵌っているのでその部分も錆びにくくなる。ただし乾性油を使うとしても余りにもベタベタの油台にすると、削った部材に油が付着するので油台は使わないという人もいるようだが。
まあワテの場合はアマチュアDIYなので、そこまで入念に油台にする必要は感じないのでクルミオイルを鉋台や鉋刃に適度に塗布して台の乾燥や刃の錆を防げれば十分だ。
今後は、刃と裏金を砥石で研ぎたい。
まとめ
やっぱり手抜きは危険だなあと痛感した。
当記事では先日リサイクルショップで購入した四丁の中古鉋の手入れの様子を紹介した。
鉋台は木製なので表面が汚れていても研磨すれば綺麗な木肌が蘇る。
鉋刃や裏金は金属なので錆びていても表面を研磨すれば綺麗になるのだ。
記事中でも説明したようにワテの場合は酸性やアルカリ性溶液は使わずに機械的研磨だけで錆落としをするようにしている。
酸やアルカリ性溶液が鍛錬した鋼(はがね)の見えない隙間に入り込んで内部を侵食するのでは無いか?と言うのはあくまでワテの推測なので、実際のところはどうなのかは知らない。
金属材料の世界的権威みたいな人がこのブログ記事を読んで頂いたなら、是非コメント欄からお教え頂きたい。
あと、鉋刃を押さえている金属棒(押さえ棒)もかなり錆び付いている。
今回のメンテナンス作業では押さえ棒は何も作業を行っていないが、錆び錆びのままだと見た目が悪いので綺麗にする予定だ。
YouTube動画などでは金属棒を引き抜いて錆落としして再び差し込んで仕上げている例も見かける。
ワテもそうするか、あるいは新品の金属棒に付け替えるなど予定している。
ノギスで手持ちの幾つかの鉋の押さえ棒の直径を計測したところ、寸八鉋ならΦ5mm、小鉋でΦ4やΦ3だった。なのでこれくらいの直径の金属棒を買って来て、必要な長さにカットして交換すれば綺麗になる。
ただし、鉋台、鉋刃、裏金は中古なのに押さえ棒だけピカピカの新品だと見た目のバランスが悪いかな?
まあそんな事は気にせずに作業を進めたい。
(続く)
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