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【ワレコの電子工作】金田式No.291 Nutubeハイブリッドプリアンプを自作する – 基板設計編【KiCadで設計しPCBWay発注】

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ワレコ
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久しぶりの電子工作だ。

金田式No.291 Nutubeハイブリッドプリアンプと言うのを作ってみることにした。

ワテは今から約2年前に無線と実験2022年2月号の金田式DAC(No.281)を自作したのだが、その製作過程は下記事で紹介している。

この無線と実験の記事ではDAC部だけでなく後段のプリアンプ部も紹介されていた。具体的には三種類ものプリアンプの回路図が紹介されていて、真空管(403A, 396A)を使うバージョン、Nutube 6P1を使うバージョン、半導体バーションの三種類だ。

真空管アンプを作った事が無いワテであるが真空管ぽいNutubeならハードルが低そうな印象だ。低い電圧で動作するし。

その時にNutubeバージョンのプリアンプを作ってみようかなあと思ったのだが、回路図を見ると反転アンプになっているし、ゲインのコントロールがNFB抵抗を可変にする手法が採用されていたので、何となく製作意欲が湧かなかった。

その後、歯医者さんに行った時にたまたま立ち寄った本屋さんで無線と実験2023年11月号のDCアンプシリーズ No.291 Nutubeハイブリッドプリアンプ[後編]の記事を見て、「固定ゲインNutubeハイブリッドラインアンプ&ヘッドホンアンプ」と言う回路図が紹介されているのを見付けた。

その回路は非反転アンプで、NFB抵抗も固定なので電子回路初心者のワテにも分かりやすい。

今回、そのNutubeハイブリッドプリアンプのラインアンプ部を作ってみる事にしたのだ。

数ヶ月前にKindleバージョンの無線と実験2023年10月号[前編]・11月号[後編]を購入して、時間がある時にKiCadを使ってプリント基板設計を行っていた。

ようやく基板設計が完成したので、ガーバーデータを出力してプリント基板製造業者さん(PCBWayさん)に発注するまでの作業を行った。

当記事ではそれらの作業過程を紹介したい。

では、本題に入ろう。

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No.291 Nutubeハイブリッドプリアンプの説明

光カートリッジと言うのがあるのか!?

無線と実験2023年11月号[後編]の該当記事の書き出し部分を以下に引用させて頂く。

引用元 無線と実験 2023年11月号

ワテが作ろうとしているのは、光カートリッジDS-E1やDS-001用のイコライザーアンプの後段に接続するラインアンプ兼ヘッドホンアンプ部だ。

と言ってもワテは滅多に無線と実験を買わないしレコードも聴かないので、光カートリッジDS-E1やDS-001なんて言っても何のこっちゃ全然知らない。

そもそも世の中に光カートリッジと言う物が存在していることすら知らなかった。まあ確かにレーザー光線の反射角度を計測する事で微細な距離を計測出来る事は理解出来るが。例えばレーザー水準器なんて1万円前後で売っているのでワテも一台欲しいなあと思っている。

取り敢えずKindleで前編と後編の記事をざざっと読んでみたが、殆ど理解できない。あかん。

一つ分かったのはこの二種類の光カートリッジは、PD(フォトディテクター)で検出するRchとLchの光信号検出回路が左右で同じでは無いのだ。理由は知らない。

その結果、イコライザーアンプの回路図がRchとLchとで異なっているのだ。具体的にはMJ2023年11月号[後編]の記事ではEQアンプRchは非反転アンプ、Lchは反転アンプになっている。なんだかややこしいぞ。Nutubeラインアンプは非反転アンプだ。

さらにややこしい事に、MJ2023年10月号[前編]の記事ではEQアンプRchは反転アンプ、Lchは非反転アンプ、Nutubeラインアンプは反転アンプの回路図が掲載されている。それが改良されたバージョンの回路図が11月号[後編]で掲載されているのだ。

二転三転するとはこの事か!と言うくらいに反転・非反転がコロコロと変わっている。

と言う事で当記事ではMJ2023年11月号[後編]に記載の回路図を元に製作した。

固定ゲインNutubeハイブリッドラインアンプ&ヘッドホンアンプ回路図

無線と実験2023年11月号[後編]から完全な回路図を引用させて頂きたいが、まだ出版されてから一年程しか経っていないので、著作権の問題もあるので下図のようにぼかしている。これでも問題があるようでしたら当記事下部のコメント欄からご指摘下さい。

下図が今回作成する「金田式No.291 固定ゲインNutubeハイブリッドラインアンプ&ヘッドホンアンプ」の回路図だ。名前が長過ぎるので以下では「Nutubeプリアンプ」や「Nutubeラインアンプ」などと略す場合もある。

図 固定ゲインNutubeハイブリッドラインアンプ&ヘッドホンアンプ

引用元 MJ2023年11月号[後編]

上図に示すように、この回路は初段にNutubeを使った三段の差動増幅回路で出力段は2個の2SC959と言う何十年も昔のNECのメタルカントランジスタが採用されている。この出力段を完全対称って言うのかな?詳しくは知らない。

そんな古いトランジスタを持っている人は滅多にいないと思うが。差動2段目にはこれまた古い2SA726と言う確か三菱電機製のトランジスタが採用されている。

幸い、ワテの場合はどちらのトランジスタもパーツボックスに何個かあると思う。大昔にどこかのジャンク屋で入手したものだ。

さて、上図右にはSAOCという回路図がある。

MJ2023年10月号[前編]の記事の説明によるとSAOCとはラインアンプの出力電圧VOからDC成分であるオフセット電圧V0を検出し、V0が0Vに近づくようにコントロール電流Izを増減する回路との事だ。

ちなみにSAOCとはスーパーオートオフセットコントロールとの事だ。以前にDACを製作した時に読んだMJ2022年2月号にも動作の説明があったが、ワテは理解出来ていない。

なお、SAOC回路もMJ2023年10月号[前編]記載回路がMJ2023年11月号[後編]では回路構成が若干変更されている。なので、兎に角、11月号[後編]記事を参考に製作を続ける。

それにしても毎月毎月こんなにも沢山の電子回路を設計して、製作して、シャーシ加工して、視聴して、製作記事を雑誌に執筆されている金田明彦先生は偉大だなあと思う。「継続は力なり」を実践されているのは見習いたい。

電源は三端子レギュレータだと!?

無線と実験の該当記事の表題にあるように

DCアンプシリーズNo.291
Nutubeハイブリッドプリアンプ
光カートリッジDS E1 & DS 003用、Li-Poバッテリー電源

が今回作成する金田式作品の正式名称だ。

要するにバッテリー駆動になっていて、4セルLi-Poバッテリーの16V出力を利用する。Li-Poバッテリー電圧は、1セルあたり3.7V(最大4.2V)なので、4セルで14.8V(最大16.8V)となる。

ラインアンプやイコライザーアンプでは±16V、+32Vが使われている。なので4セルLi-Poバッテリー(16V)を三つ使ってそれら3種類の電圧を生成している。

かつ、イコライザーアンプではDS E1光カートリッジ用ではさらに+8V、-10Vが必要になり、DS 003光カートリッジでは+10V、-10Vが必要になるので、下図に示す回路で±16Vからそれらの電圧を生成している。

図 DS E1用 +8V、-10Vレギュレーター、DS 003用±10Vレギュレーター

引用元 MJ2023年11月号[後編]

上図はぼかしているが、見ての通り三端子レギュレータLM317とLM337を使った典型的な安定化電源回路だ。

金田式オーディオ回路と言うと、金田先生設計の超複雑な安定化電源を使うのが正統な手法だと思っていた。実際、昨年ワテがレストアした自作A級15Wパワーアンプでは、電圧増幅段だけでなく出力段にも安定化電源回路が採用されていたし。その製作記事はこちら⤵️

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金田先生は最近では三端子レギュレータを採用されているのか。滅多に無線と実験を買わないワテは最近の金田式アンプの事情に疎い。

下図はバッテリーチェックと言う回路図だ。たぶん、その名の通りバッテリーの残量をチェックする機能だろう。チェックする時に何らかのスイッチをONするのかな?もし常時LEDを点灯させると無駄な電流を消費してしまうので。いずれにしてもワテの場合にはAC電源で製作予定なので、このチェック機能は不要だが。

図 +30Vバッテリーチェック、+15Vバッテリーチェック

引用元 MJ2023年11月号[後編]

改良型Nutubeハイブリッドイコライザーアンプ(R.chとL.ch)

今回はNutubeラインアンプのみを作る予定なので、イコライザーアンプは作らない予定だ。

でも下図に示すイコライザーアンプR.chやL.chはラインアンプと良く似ているので、KiCadでプリント基板設計はやってみることにした。単なる興味本位で。その結果、案外簡単に設計出来た。

その基板の詳細も当記事の後半で紹介したい。

図 改良型Nutubeハイブリッドイコライザーアンプ(R.ch)

引用元 MJ2023年11月号[後編]

ちなみにこのイコライザーアンプには双信電機のSEコンデンサー33000pFや10000pFと言う非常に高価なパーツが指定されている。たぶん買うと数万円はするのでは無いか?

いずれにしてもワテはイコライザーアンプは作らないし、仮に作るとしても安っすい代替パーツを採用するのでどうでも良いが。

下図はイコライザーアンプ(L.ch)だ。ぼかしているので分かりにくいが、反転アンプになっている。

図 改良型Nutubeハイブリッドイコライザーアンプ(L.ch)

引用元 MJ2023年11月号[後編]

イコライザーアンプのR.chが非反転アンプ、L.chが反転アンプと言う非対称な回路でレコードを聴くってのはどうなのかな?

オーディオ再生機器の回路が左右チャンネルで非対称だと言う事実を知った上で音楽を聞いても、それが気になって違和感を感じるのでは無いか?と心配になるが。気にしなければ良い。

各基板に供給する電源電圧が沢山あるので下表に整理してみた。

  タイプ 負荷抵抗 供給電圧
ラインアンプ 非反転     +16V -16V +32V
EQ R.ch DS E1 非反転 10KΩ +8V -10V +16V -16V +32V
EQ L.ch DS E1 反転 10KΩ   -10V +16V -16V +32V
EQ R.ch DS 003 非反転 8.2KΩ +10V -10V +16V -16V +32V
EQ L.ch DS 003 反転 8.2KΩ   -10V +16V -16V +32V

表 No.291 光カートリッジDS E1 & DS 003用 Lineアンプ、EQアンプ供給電圧

これで良いのか?

オーディオ機器は見た目が重要

要するにオーディオってのは見た目の印象が試聴する人の気持に大きく影響すると思う。

太い電源コード、太いスピーカーケーブル、大型のヒートシンクに沢山のトランジスタやMOSFETコンプリメンタリーペアが搭載されているパワーアンプなど、どれも見た目のインパクトは大きいので力強い良い音が出るだろうと言う期待感が高まるのは事実だ。

まあそれは悪いことだとは思はないし、それで高揚感が上がって本人が満足しているなら良いだろう。

先日こんな動画がたまたまお勧めに出てきたので見てみた。

確かにこの動画のオーディオデザインさんが言っているようにパワーアンプにMOS FETを沢山ならべても良いことは無いと言う意見はワテもそう思う。

動画内の説明で、自転車のカゴに重い荷物を入れるとハンドル操作がふらついて安定性が悪くなると言う比喩はワテにも分かりやすい説明だった。

LTspiceでNutubeプリアンプをシミュレーションしてみた

下図はLTspiceで描いたNutubeハイブリッドプリアンプの回路図だ。

図 LTspiceで描いたNutubeプリアンプ回路図

KorgさんのサイトにNutube 6P1のスパイスモデルが公開されていたので、そのモデルからLTspice用のシンボルを自動生成して利用した。

LTspiceは標準でAnalogデバイスや旧Linear Technology社の多数のデバイスモデルが標準で装備されているが、他社製のデバイスでもそのSpice modelさえ有れば自分でシンボルを生成して利用することが出来るのだ。

下図はNutubeプリアンプ(=ラインアンプ)に±1V、10KHzのサイン波を入れて出力波形をシミュレートしたものだ。ゲイン12倍くらいか。

出力電圧のオフセットが完全にはゼロになっていないが、まあこれは2SC959とか2SA726などのデバイスモデルが見付からなかったので、適当に選んだ代替トランジスタでシミュレートした結果なので、まあこんなもんか?

詳しいことはワテには分からない。

図 Nutubeプリアンプ±1V、10KHzサイン波 出力波形をシミュレート

下図は入力に±100mV、10KHzの方形波を入れて出力波形をシミュレートしたものだ。

図 Nutubeプリアンプ100mV、10KHz方形波 出力波形をシミュレート

上図を見ると出力電圧に+1.5Vくらいの大きなオフセット電圧が載っている。ゲインは12倍弱なのでアンプとしては動作している感じだが。

まあ、実際にどうなるかは実機を作ってみるしかないので、兎に角、作ってみようと思う。SAOC回路があるのでオフセットはゼロボルトに制御出来るはずだ。

KiCadでNo.291 Nutubeハイブリッドプリアンプ基板を設計する

さて、KiCadを使った基板設計はニヶ月程前から時間がある時にボチボチとやっていた。

No.291 Nutubeハイブリッドプリアンプのラインアンプ部

下図はKiCad8の回路図エディタで描いたNo.291 Nutubeハイブリッドプリアンプのラインアンプ部だ。

図 KiCadで描いたNo.291 Nutubeハイブリッドプリアンプのラインアンプ部

上図のようにラインアンプ部とSAOC部も一つの基板に実装する。

この回路図を元に設計した基板のレイアウトを下図に示す。

図 KiCadで描いたラインアンプ部の基板レイアウト

雑誌の記事では金田先生はサンハヤトのAT-1S基板をカットして使われている。

ワテ設計基板では、基板のサイズは雑誌記事とほぼ同じ大きさにした。

一方、部品の配置や基板パターンは必ずしも雑誌記事とは一致していない。

恐らく部品の70%くらいは雑誌記事と同じような場所に配置していると思う。

ちなみに雑誌記事では数本のジャンパー線が使われていたが、上図のワテ設計基板ではジャンパー線は一本も無しで片面だけで配線する事が出来た。さらに基板背面に取り付けられていた差動初段Nutubeアノード間の位相補正抵抗1KΩとSEコンデンサ56pFも部品面に移動した。

ワテの場合はジャンパー線はなるべくは使いたく無い。深い理由は無い。「なぜジャンパー線無しで基板設計するのか?」と問われれば、「そこに基板があるから」としか答えられない。登山家か。

なお、ジャンパー線を無しにしたいが為に、無駄に長々と配線を引き回すのは本末転倒なので、優先順位としては見た目の綺麗な無駄のない配線パターンを描く事を最優先し、かつ、ジャンパー線をなるべく減らすのがワテの基板設計方針だ。

部品面に全配線を収める事が出来たので、コピペして裏面(=ハンダ面)にも同じ配線パターンを描いた。そしてそれらの配線を多数のVIAをで連結して電流容量を増やしておいた。

なお、プリント基板の銅箔厚さは標準で35μmなので、両面に35μmの配線を引いたので、実質片面70μmの配線厚さになる計算だ。でもプリアンプなので電流はせいぜい数十ミリアンペアから数百ミリアンペア程度だと思うので、銅箔厚さは35μmでも十分だと思うが。

基板の両面に同じ配線パターンを描く事で、はんだ付け作業中やデバッグ作業中に部品がどこにつながるのかが確認しやすいと言うメリットがある。

まあしかし、1.6mm厚のガラスエポキシ基板を挟んで両面の銅箔パターンがコンデンサを形成する事になるので、両面に配線を引く手法はお勧めでは無いかも知れない。

でも例えば以下のサイトで例えば1mm線幅、50mm長さ(面積=50mm2)、1.6mm間隔の平行電極の容量を求めてみると、0.27pFと小さいのでそれ程は気にする必要は無いと思うが気になる人は気になるかも知れない。

「極板の面積と極版間の距離と比誘電率からコンデンサの静電容量を求めます。」

コンデンサの静電容量
極板の面積と極版間の距離と比誘電率からコンデンサの静電容量を求めます。

 

さて、下図はKiCadの3D機能で表示したNutubeラインアンプの完成予定図だ。

図 KiCadの3D機能で表示したNutubeラインアンプの完成予定図

上図において、電極パッドに金属ピンが立っているが、これはたまたま選んだパッドのフットプリントにこんな金属ピンが設定されていただけだ。この部分は普通にリング状のはんだ付けパッドになっているので心配ない。

この基板設計に於いて、ワテは色々と工夫を凝らしている。

例えばその一つの例を下図に示す。

図 Nutubeラインアンプ出力段2SC959の代替トランジスタ用パッドを追加

上図はNECのメタルCANトランジスタ2SC959のはんだ付け箇所を拡大したものだ。EBCの三本足がL字型の位置関係になっている。

もし2SC959が手持ちに無い場合には、代替部品としてTO220サイズくらいでECBの足の並びのNPNトランジスタを付けられると便利だ。なので、本来のB電極用のパッドの脇にもう一つスルーホールを追加した。

そのスルーホールを利用すればECBの並びのNPNトランジスタも、足を少し曲げる程度で差し込めるのだ。芸が細かいワテである。変なことが気になる性格とも言える。

No.291 NutubeハイブリッドプリアンプのイコライザーアンプR.ch

ラインアンプの基板設計が完了したので、そのデータを流用してイコライザーアンプR.ch基板を設計してみた(下図)。

図 No.291 NutubeハイブリッドプリアンプのイコライザーアンプR.ch基板

上図のようにイコライザー部はラインアンプ部と部品配置が良く似ている。大きな違いはイコライザー部では入力部と帰還回路に双信電機のSEコンデンサが指定されている。入力部は33000pF、帰還回路は10000pFでどちらもかなり大型サイズで入手性も良くないと思う。

なのでその二箇所のエリアはなるべく広くして、かつ周囲にユニバーサル基板のような格子状のランドを追加した(下図右)。

図 EQ-Rch入力33000pF付近3D画像と基板に追加したユニバーサル基板風ランド

上図のように部分的にユニバーサル基板化したので、33000pFのSEコンが入手出来ない場合には、例えば三個のコンデンサ(15000pF + 15000pF + 3000pF)くらいなら取り付けられると思う。

表に二個、裏に一個とか。

下図がイコライザーアンプR.ch基板の3Dイメージだ。KiCadにはこんな高性能な機能があるのにオープンソースな無料ソフトなのだ。素晴らしい。

図 イコライザーアンプR.ch基板の3Dイメージ

雑誌記事ではフィルムコンデンサにPhilips CBBと言う型番が指定されている箇所がある。雑誌の製作例を見る限りではCCBコンデンサは比較的小さめのサイズだ。

ワテの場合はそんなコンデンサは持っていないので、手持ちのフィルムコンデンサを取り付けられるように、CCBコンデンサ取り付け箇所は広めのエリアを確保している。

同様に半固定抵抗はNIDEC(=旧コパル)のTM-7Pと言う三回転型の小型のものが指定されている。ワテの場合には昔買ったコパルのRJ-13タイプの大きめのやつが自宅在庫に何種類か持っている。

なので半固定抵抗取り付け箇所も大型のRJ-13を取り付けられるように広めのエリアを確保している。

その結果、他の部品配置が過密になり配線パターンを引く作業で苦労した。基板サイズを大きくすれば解決するが、その選択肢は余りにも安易なのでやりたくない。その後、ワテの必死の努力で雑誌記事の基板サイズと同じ大きさで基板設計に成功した。

No.291 NutubeハイブリッドプリアンプのイコライザーアンプL.ch

イコライザーR.chの基板設計が完了したので、そのデータを流用してイコライザーL.chの基板レイアウトも30分程で完了した。

図 イコライザーアンプL.ch基板の3Dイメージ

上でも説明したようにイコライザーR.ch(非反転アンプ)をイコライザーL.ch(反転アンプ)に変更するだけなので、部品配置は動かさずに数か所の配線パターンを変更するだけで良いのだ。

配線はモガミ同軸ケーブルではなく20芯ビニール被覆線使用

ワテの場合は、かなり前に金田式プリアンプやA級パワーアンプを製作して、その後、DACを二種類製作した程度だ。金田式ではモガミの太っとい同軸ケーブルを使って入力配線をするのが正統な手法だと思っていたが、無線と実験2023年11月号[後編]記事では以下の記述がある。

信号の配線はかつてのようなモガミ同軸ケーブルではなく、20芯のビニール被覆線を使用する。

電源の配線は電源スイッチからLチャンネルイコライザー基板に行き、そこから写真左に向かってわたり配線で供給する。

うん?

最近の金田式ではモガミ同軸シールド線ケーブルは使わないのか!

20芯のビニール被覆線で良いのか。

まあそれは配線しやすいからワテとしては歓迎だが、そもそもワテの場合は純正金田式を作る気力は無く、あくまで金田式風なので配線材料も自分で適当に選んだものを使っている。

それにしても、最近の金田式では安定化電源には三端子レギュレータを採用し、配線材料も同軸ケーブルではなく普通の20芯ビニール被覆線を使うとなると、作るハードルが下がるので良いが、だったら、今までの発表された金田式作品もそれでも良かったのか?と言う疑問が湧くが、まあそれは分からない。

オーディオは、「ロクハン(6.55インチ=16cm)に始まり、ロクハンに終わる」と言われているが、アンプの電源回路は三端子レギュレータに始まり三端子レギュレータで終わるのかも知れない。

兎に角、電子工作は完成させて使ってみることに意義がある。

No.291 DS E1用 +8V、-10Vレギュレーター基板

さて、ラインアンプを作るだけなら±16Vと+32Vの三電源で良いのだが、ついでなのでDS E1用 +8V、-10Vレギュレーター基板も設計してみた。

図 DS E1用 +8V、-10Vレギュレーター基板の3D画像

この基板も雑誌記事と同じサイズにしてみた。ジャンパー線は無しだ。

ここまで来たらバッテリーチェック基板も設計してみようかなと思ったが、ワテはAC100V駆動で行く予定なのでやめておく。

と思ったが、残り一枚の基板を設計しないのも落ち着かない。

その後、ついでに設計してみた。

図 +15V、+30V バッテリーチェック基板の完成予定3Dイメージ

それにしても金田先生はこんなに過密でかつ最小面積の基板に部品を実装出来る能力が凄いなあと思う。ワテはKiCadを駆使して悪戦苦闘しながら部品配置や配線を引いてようやく設計したが、金田先生は頭の中で部品配置を最適化出来るのだろう。凄いわ。

このバッテリーチェック基板では2SC2259と言うエミッターが共通のDUAL NPNトランジスタ(BCECB)が採用されている。

この部分に普通に二つのNPNトランジスタでは駄目なのかな?ワテには良く分からない。

いずれにしてもワテはAC100Vで行く予定なので次に進もう。

プリント基板発注に必要なガーバーデータを生成する

ワテが初めてプリント基板を製造業者さんに発注したのが2019年12月だ。早いもので今から五年前の事だ。

初めて設計したプリント基板を製造業者に発注した時には物凄く緊張した。

その理由は、もしデータに何らかのミスがあると、使い物にならないプリント基板が出来てしまう恐れがあるからだ。

それと、それ以前にそんなミスのあるデータを基板製造業者さんに送ると怒られるのでは無いのか?などと言う心配もあった。

でもそれらは全て杞憂に終わった。

なぜなら、もし送ったデータに何らかのエラーがあったとしても、基板製造業者さんのほうでチェック作業があるので、その時点でエラー判定されれば連絡が来るのだ。なので再設計して正しいデータを送れば良い。

それにもし設計ミスのあるデータのまま基板が製造されてしまい、失敗基板が自宅に配送されたとしても高々三千円前後の損失なので、そんなに深刻に心配する問題でも無いのだ。

と言うワテは物凄い心配性だが。

その後のワテはプリント基板の発注には慣れて来たので10分も掛からずに完了する。最近ではPCBWayさんに発注する事が多いのだが今回もPCBWayさんに発注する。

PCBWayさんのサイトは完全日本語対応なので分かりやすい。かつ、プリント基板製造だけでなく、CNCによる金属加工、アルマイト仕上げ、シルク印刷による文字入れ加工、3Dプリンタ(熱溶解方式、光造形方式)メニューなども用意されているので、もの造りに必要な全てのサービスを提供しているのだ。

さて、KiCadのレイアウトエディタであるPcbnewを駆使して両面スルーホール基板の設計が完了したら、次にやるのはガーバーデータの出力作業だ。

ガーバーデータの出力作業

Pcbnewで「ファイル」メニューの中の「プロット」を実行すると下画面が開く。

図 KiCadのレイアウトエディタ(pcbnew)のプロット画面

数年前のワテは上図を初めて見てチンプンカンプンだった。

  • 左側にある「含めるレイヤー」はどれをチェックしたら良いのか?
  • 右側にある数多くのオプションはどれをチェックしたら良いのか?

などだ。

それらの疑問を解消するために必死でネット検索して調べまくったのだが、その結果、第一回目の基板発注では基板を発注完了するまで一週間くらい悪戦苦闘した記憶がある。

でも心配ない。

上図が開いたらやるべきことは簡単で、まずは「出力ディレクトリ」を指定する。ワテの場合はいつも「Gerber」と言うサブフォルダを事前に作るようにしていて、そのフォルダを指定する。

あとは、画面右下の「プロット」ボタンをクリックして「出力メッセージ」の欄に「完了」メッセージが出力されれば完了だ。

その結果、Gerberフォルダには10数個のファイルが出力されているだろう。それらのデータは自分が設計したプリント基板の各レイヤーの図形データを保持しているのだ。GerberフォーマットとかGerberデータなどと呼ばれる。

次にやるのは、上図右下の「ドリルファイルを生成」ボタンをクリックすると下図が開く。

図 ドリルファイルを生成

上図が開いたら、右下の「ドリルファイルを生成」ボタンをクリックすれば良い。

そうすると、同じくGerberフォルダに拡張子.drlのファイルが出力されるはずだ(下図青枠)。

図 ガーバーデータの出力に成功した

上図の黄色枠のファイルが最初に出力したガーバーデータ、水色枠のファイルがドリルファイル生成で出力されたものだ。

それらのデータをまとめて zip ファイルにしておく。ファイル名は自由なのでワテの場合は上図のようにガーバーデータと同じ名前にしている。

なお、ガーバーファイル名やzipファイル名に日本語を使うと基板製造業者さんのサイトのアップロードすると文字化けする場合がある。ワテの経験で言うとPCBWayさんのサイトでも以前に文字化けした事があるが、プリント基板自体は全く問題なく期待通りの仕上がりで送られて来た。

なので、ファイルに日本語を使っても問題は無いと思う。

ガーバーZIPファイルをPCBWayにアップロードして基板発注

今回は数種類のプリント基板を発注するので、このあと最終的にデータを再チェックしてからPCBWayさんに発注する予定だ。

ちょっと休憩。

まとめ

ワレコ
ワレコ

真空管アンプ製作未経験のワテはまずはNutubeに挑戦だ!

これが無事完成したら本格的な真空管アンプを作ってみよかな。

当記事では、MJ2023年11月号[後編]に掲載されている

DCアンプシリーズNo.291
Nutubeハイブリッドプリアンプ
光カートリッジDS E1 & DS 003用、Li-Poバッテリー電源

の中の、以下の基板の設計作業とPCBWayさんに発注するまでの作業を紹介した。

  • 固定ゲインNutubeハイブリッドラインアンプ&ヘッドホンアンプ(SAOC部含む)基板
  • 改良型Nutubeハイブリッドイコライザーアンプ(R.ch)基板
  • 改良型Nutubeハイブリッドイコライザーアンプ(L.ch)基板
  • 光カートリッジDS E1用 +8V、-10Vレギュレーター基板
  • +15V、+30V バッテリーチェック基板

PCBWayさんに基板を発注すると通常は一週間前後で基板が自宅に届く。今回も早ければ年内にプリント基板が届くかも知れない。電子工作を趣味とする人には便利な時代になったもんだなあと思う。

その前にNutube 6P1や必要なパーツを入手しておく予定だ。

トランジスタ、FET、抵抗、コンデンサ類は自宅在庫でほぼカバー出来ると思う。幸い手持ちに2SC959や2SA726があるので金田先生指定部品使用率は60パーセントくらいか。残り40パーセントは適当にワテが選んだやつを使う予定だ。

正直なところ、どんな部品を使っても出てくる音の違いなんてワテには分からないし。そんなのよりもボリュームを最小に絞ってもサーっと鳴っている耳障りな残留ノイズのほうが気になるので、そう言う対策をやりたい。

一方、Nutube 6P1は実は以前に購入していたのだが、一個しか買っていなかった。

Nutube 6P1は2回路入なのでNutube 6P1が一個あれば左右チャンネルのラインアンプが作れると思っていたのだが、ワテの勘違いだった。あかん。

なのでNutube 6P1も一個買い増しする予定だ。一個5500円程度なので、ワテの電子工作人生でもかなり高額な部類のパーツになるので失敗は出来ない。

(続く)

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