表 車中泊の旅にお勧めのアイテム
ワレコ
しかしまあ東京都、大阪府、兵庫県、京都府に対して、2021年4月25日から5月11日までの期間、緊急事態宣言が発出された。緊急事態宣言は今回で3度目との事だ。
ワテの場合は、この連休中に車中泊の旅に出掛けたかったのだが。
まあ、将来コロナウイルスが収まればハイゼットカーゴで車中泊の旅に出掛けたい。
車中泊にはポータブル電源(ポータブルバッテリー)が必須と言っても良いだろう。
当記事では、ワテが一昨年に購入したポータブル電源を走行充電するためのシステムを自作したので、その製作過程を詳細に紹介したい。
結論としては、費用二千円くらいでいい感じの走行充電システムが完成した。昇圧型DCDCコンバーターを利用したのでフル充電が出来るのだ。
では、本題に入ろう。
車中泊にはポータブル電源が手軽でお勧め
ワテが使っているのが下写真のSUAOKIのG500ポータブル電源だ。
電流容量137700mAhなので市販ポータブル電源製品の中では中クラスくらいの位置づけになる製品だ。定格300W・ピーク600Wなので、まあノートパソコン、扇風機、ラジオなどの小型の電化製品を使うならこのG500で十分な性能だ。
Jackeryのポータブル電源も人気が高い。下写真のやつは278400mAhもの電流容量があるので、上位クラスの製品だ。500Wクラスの炊飯器が使えるようなので実用性は高いが、値段も高い。
ワテがSUAOKI G500を購入した経緯は以下の記事で紹介している。
上記事で解説しているが、車でAC100Vの電化製品を使う為のサブバッテリーシステムを搭載する場合に、以下の二通りのやり方がある。
- ディープサイクルバッテリー、昇圧型アイソレーター、正弦波インンバーターなどを購入して自作する
- ポータブル電源を購入する
ワテの場合は、後者(ポータブル電源購入案)を採用した。その最大の理由は、お手軽だからだ。
前者の自作サブバッテリーシステムの構築は、大容量バッテリーを搭載できるメリットはあるが、自作するのが難しいと言う短所がある。
と言う事で、車中泊に出掛けるならポータブル電源を購入するのが最もお勧めなのだ。
走行フル充電するには昇圧コンバーターが必要
さて、市販ポータブル電源でも自作サブバッテリーシステムでも、走行中にフル充電しておいて、夜は車内で家電を利用して快適に過ごしたい。
その時に問題になるのが、走行中にフル充電するのが意外に難しいと言う点なのだ。
つまり、乗用車のバッテリーは12Vdcだが、走行中ならオルタネーターで発電しているので14Vdcくらいの出力電圧になる。でも、市販ポータブル電源やディープサイクルバッテリーをフル充電するには、15Vdc以上くらいの電圧が必要になるのだ。
実際、ワテが買ったSUAOKI G500の仕様から引用すると以下の通り。
MPPT電圧範囲 15~40Vdc
このMPPT(Maximum Power Point Tracking、最大電力点追従制御)と言うのは太陽電池でバッテリーを充電する時の電圧や電流の制御方式の一つなのだが、SUAOKI G500にも太陽電池を接続出来る。
走行充電をするには、その太陽電池の代わりに車のバッテリーを接続する訳だが、上表のようにMPPT充電に必要な電圧は最低でも15Vdcなので、オルタネーター出力14Vdcでも足りないのだ。
その結果、14Vdc程度の電圧で充電しても大よそ80~90パーセント前後くらいまでしか充電出来ない。
まあそれでも十分な人もいるとは思うが、でも出来ればフル充電(満充電)しておきたい。
と言う事で、ワテの場合には、アマゾンで売っている汎用の昇圧型DCDCコンバータを購入して、自作のフル充電システムを構築したのだ!
なお、今回ワテが自作するような昇圧回路付の走行充電器は、完成品として市販もされている。
予算がある人はこう言う完成品を購入するのも良いだろう。
ワテの場合は、節約派&DIY派なので低価格で自作を試みたのだ。
走行フル充電システムを自作する
昇圧型コンバーターを買う
まずは昇圧型のコンバーターを買う。
ワテが買ったのは下写真のやつで、一個千円くらい。
上写真のやつは、以下の仕様だ。
出力電圧範囲 DC 0.5-30V
出力電流範囲 0~3A
最大出力電力 35W
なので、入力には車のシガーソケットを延長して接続して約14Vdcを供給する。
一方、出力電圧は、15Vdc以上に設定しておけば良いので、取り敢えず18Vdcにした。
なお、二つの多回転型ポテンショメータ(ボリューム)があり、左側は最大電流値を設定、右側は出力電圧を設定出来る。
最大出力は35Wなので、18Vdcなら2A程度まで行けるが、それは最大定格ギリギリなので、18Vdcなら1A程度に制限するほうが良いだろう。
例えばポータブル電源のバッテリーがゼロだと、充電を開始すると大電流が流れ込む。でもこの製品の場合、電流制限が出来るのでそれ以上の電流が流れないように出力電圧を自動で減らす制御がされる。
いわゆるCVCC電源という動作だ。
- 実売価格約千円
- 電圧・電流表示の液晶LED付き(スイッチで入力モニター、出力モニターを切り替え可能)
- CVCC制御(Constant Voltage Constant Current power supply)機能
なので、お買い得だと思う。
或いは下写真のような高級品もある。
シガーソケットからコードを延長して荷室まで配線する
ワテのハイゼットカーゴは、シガーソケットに下写真の四分配器を挿している。
両面テープを使って助手席前のダッシュボード下の左タイヤハウスの金属部分に張り付けている。
四連シガーソケットの一つはドラレコの電源に使っているので、残り三個のソケットは未使用だ。
その一つにシガープラグを挿して、1.25mmの二芯電源ケーブルを使って後部の荷室まで延長するのだ。
ワテが使ったのは下写真のエーモン電源プラグ(断面積1.25sq)だ。
まあ、今回の走行充電システムでは、最大でも1A程度の電流しか流さないので、0.75sq電線でも良いとは思うが、将来、12Vdcを100Vacに変換するインバーターを導入する可能性もあるので、電流容量の大きな1.25sqのやつを買った。
そこで、延長用の電線も1.25sqの撚線を採用した(下写真)。
金田式アンプで有名なダイエイ電線(大栄電線工業株式会社製)だ。
このダイエイ電線を使ってポータブル電源を充電する事によって、ポータブル電源に接続したオーディオ機器からは素晴らしい音が出るに違いない。間違いない。
Aピラーの下を通して配線した
下写真に示すようにハイゼットカーゴのAピラーカバーを外して、1.25sq二芯の電源ケーブルを配線した。
写真 赤黒スピーカーケーブル(フロント、リア)、ドラレコ配線に加えて12Vdc延長コードを配線
下写真に示すように、Aピラーカバー裏側のリブ状の部分がケーブルに干渉するのでニッパで切り取る。
下写真がその切り取り加工後。
こんな風に、数箇所のリブを切り落としたら、下写真のように無事に数本の電線をAピラーカバー下を這わせる事が出来た。
Aピラーカバーを通した数本のケーブルは下写真のように、ボディとダッシュボードの隙間を這わせて、足元下の四連シガーソケットまで配線するのだ。
一方、ハイゼットカーゴの後部荷室側は、この電線を天井付近に設置した棚板の下を通して、荷台右側(運転席後ろ)に設置しているSUAOKI G500ポータブル電源付近まで引っ張った(この後で写真登場)。
3Dプリンタで昇圧コンバータ用ケースを印刷する
無料のFusion360を使って、昇圧DCDCコンバータ基板を収納するケースをモデリングした。
自称、3D CADのエキスパートのワテの場合、これくらいのモデルなら一時間も掛からずに設計出来る。
このモデルをstlファイル形式で出力して、Cura 4.9.0に読み込む。
そして、3Dプリンタ印刷に必要なgコードデータをファイル出力する。
そのgcodeファイルをANYCUBIC MEGA-X 3Dプリンターで印刷するのだ。
写真 ANYCUBIC MEGA-X 3Dプリンター
上写真のANYCUBIC MEGA-X 3Dプリンターは最大印刷サイズが300*300*305mmと大きいので、お勧めだ。
下写真のように、8時間48分で印刷完了した。
下写真のように底面積が約10x10cmと広いので、印刷物がステージに貼り付いたまま剥がせない。
その場合には、下写真のようにF型クランプで印刷物を挟んでおいて、赤いレバーを持ち上げればパリッと剥がせる。
昇圧DCDCコンバータ基板、端子台をケースに取り付ける
上写真のようにDCDC基板には入力(左)と出力(右)に、青色のスクリュー端子が付いている。
でも、ワテの場合には、リング型の圧着端子をネジ止めするほうが、抜け落ち防止にもなるし、接触抵抗も少なく出来るので、端子台を使う事にした。
基板に付いている青色のスクリュー端子は使わずに、直接半田付けして配線を行った。
ちなみにこのSATO Parts ML-40端子台は、以前に自作したスピーカーセレクターを解体した部品だ(下写真)。
印刷したケースの裏側は以下の通り。四つの六角穴はM3ナットを嵌め込めるようにしている。
下写真のように長いM3ボルトにM3ナットを嵌めて引っ張る事で、M3ナットをこの六角穴に挿入する事が出来た。
M3ナットの対辺距離は5.5mmだが、3Dプリンタ印刷では溶けたフィラメントが少し食み出すので、5.6mmの広さで六角穴を開けている。
実際にM3ナット埋め込んだ感想としては、5.6mmで丁度良かった。
一方、ケースの蓋(まだ印刷していない)や昇圧DCDC基板の固定用にM3ナットを捻じ込めるネジ穴を形成している(下写真)。
Fusion360の場合、「穴」と言う機能を使うと簡単にネジ穴を開ける事が出来る。その「穴」機能でM3ネジ用の穴を作成したのだが、印刷するとやはり溶けたフィラメントが食み出すので穴径は3ミリよりも細くなってしまう(上写真)。
なので、M3用のタップを使ってこの樹脂製のシャーシにネジ穴を切っておいた。
ただし、貫通穴では無くて止まり穴で設計したので、タップの切り屑が排出されにくいので、切り屑がタップの溝に絡まって樹脂に切ったネジ溝が潰れてしまい、M3ネジを捻じ込んでもユルユルになる失敗が数箇所あった。まあいいw
基板、端子台、シガーソケットの配線作業
DCDC昇圧コンバータ基板と端子台を下写真のように取り付けた。
左側端子台には運転席のシガープラグを延長して来た1.25sqコードを接続する。右側にも端子台(昇圧後の電圧出力)を付ける予定であったが、今回は不採用。
昇圧電圧出力は、手持ちにあったエーモン工業のシガーソケットから出す事にした。
SUAOKI G500には長さ50cmくらいのシガープラグケーブル(反対側はΦ6.5×3.0mmのDCプラグ)が付属している。そのシガープラグをこのエーモンのシガーソケットに挿すのだ。一方、DCプラグ側はSUAOKI G500の充電入力コネクタに挿すのだ。
ちなみに、配線に使った電線はBELDEN 8502だ。
BELDEN 8502は芯線 20AWG (0.52SQ)だが、直流抵抗は31.170 Ohm/km(※)なので、0.5sqの電線にしては抵抗が小さい。
※ https://catalog.belden.com/techdatam/8502.pdf
やはり高音質を追究するなら、この辺りの配線にもBeldenかMogamiを使いたい。それでこそオーディオマニアなのだw
入力端子台は4Pを使ったので下写真のように2P+2Pに分けて正負電極とした。
手持ちの定電圧電源を使って動作確認する
ワテ所有の高砂製作所の定電圧電源装置を使ってDCDC昇圧コンバータの動作確認をした。
入力には14Vdcくらいを与えている。出力は右側多回転ポテンショメータを回転して18Vdcに設定した。
上写真で車のシガーソケットやシガープラグはセンターがプラス、周囲がマイナスだ。単純な事だが、ワテの場合には車の電装系は滅多に触らないので、プラスとマイナスを間違えるようなウッカリミスをする可能性がある。
なので、上写真のようにプラス側端子や電線には赤マジックで印を付けておいた。
かつ、テスターを使ってプラスとマイナスの電極をチェックして、絶対に極性を間違えないように慎重に配線作業を行った(下写真)。
写真 ハイゼットカーゴの運転席後の自作窓際テーブルの下にSUAOKI G500を設置
上写真のように自作の窓際テーブルの側板に昇圧コンバータケースをM3タッピングネジで固定した。
写真 SUAOKI G500付属のケーブルを本体右上の充電入力端子に挿しこむ
これで昇圧DCDCコンバータシステムの取り付け作業が完了した。
走行フル充電システムの動作確認
車のエンジンを始動すると、下写真のように表示された。
SUAOKI G500の充電状態は約50パーセントくらい。なので、比較的大き目の電流2Aが流れ込んでいる。
出力電圧設定は18Vdcにセットしているが、上写真のように電圧は15.31Vdcに下がっている。これは最大定格35Wを超えないようにCVCC制御回路が働いているのだろう。
ちなみに、ワテが使ったのは下写真のニチフの裸圧着端子R1.25-3Sだ。
《電線抱合範囲》
●単線(mm):0.57~1.44
●撚線(m㎡):0.25~1.65
●AWG:22-16
引用元 アマゾン商品説明
エンジンを始動して二十秒くらい経ったら、下写真のように「OPP」と言う表示になっている。
取扱説明書などはこの昇圧DCDC昇圧コンバータには付いていなかったのでエラーの意味は分からないが、多分、最大定格電力オーバーだろう。
小島よしおのオッパッピー(OPP)か?
そんなの関係無い!
そこで右側押し釦スイッチを押して、出力をオフしてみた。そしてもう一度押すと、エラーは解除出来て再び出力開始。でも当然、再び「OPP」になる。
そこで、マイナスドライバーを使って、左側多回転ポテンショメータを左に回して最大出力電流を現状の2Aから1Aに減らした。
そして再び、出力をOFF・ONを切り替えて出力開始(下写真)。
その結果、設定どおりに電流値は1A程度に減少し、出力電圧は16.74Vdcに増えた(2Aの時は15.31Vdcだった)。
これなら約16W程度なので、DCDC昇圧コンバータ基板の最大定格電力35W以内に収まっているので、問題無いだろう。
ちなみにこの時にSUAOKI G500の充電モニターパネルを見ると以下の通り。
確かに約15Wくらいで充電出来ている。
素晴らしい。
もし大容量なポータブル電源を使っている人は、ワット数の大きな昇圧型DCDCコンバータを利用すると良いだろう。
例えばこんなやつ。
最大900Wまで行けるらしい。ワテが買ったやつは最大35Wなので大違いだ。
カバーを印刷した
その後、カバーも3Dプリンタで印刷した。
文字を入れてみたが、失敗だった。
文字の部分はFusion360でまずスケッチ機能で文字を描いて、その文字輪郭を引っ張って立体化する時にソリッド演算で引き算して1ミリだけ凹ませた。
だが、その際に「昇」と「電」の漢字では、内部エッジの選択を忘れたので、不完全な漢字になってしまったw
熱溶解積層法の3Dプリンタでは、この手の文字刻印はあまり綺麗には仕上がらない感じ。光造形法なら細かい形状も綺麗に仕上がるようだが。
兎に角、カバーとしての機能は問題無いのでこのカバーを取り付ける予定だ。
2021/5/2(追記)カバーを取り付けた
写真 自作昇圧充電システムにカバーを付けた
上写真のように3Dプリントしたカバーを取り付けた。
二つの問題点がある。
カバーには小窓を二個開けて、右側小窓の中にある二個のポテンショメータ(電流設定、電圧設定)と、二個のプッシュボタンスイッチ(入力・出力表示選択、出力ON・OFF)を操作出来るようにしたのだが、何故か窓位置が数ミリくらい右下にずれてしまった。
その結果、カバーを付けた状態では左上にある電流設定ポテンショメータが回せないw
まあ、仕方ないので設定を変える時にはカバーを外す事にした。
二番目の問題は、四つのM3 ISOネジで固定する予定だったが、下の二個のネジ穴がタップを切った時にガバガバになってしまったのでM3 ISOネジがユルユルで固定出来ない。
そこで二個のネジ穴にプラスチック用接着剤を流し込んで穴を塞いだ。接着剤が固まったのでM3タッピングネジ四個で固定したら上手く行った。
まとめ
ワレコ
安い昇圧型DCDCコンバータを使ってポータブル電源を昇圧充電する手法は我ながら良いアイデアだと思う。
安いし、簡単だし。
当記事では昇降圧DCDCコンバータを使ってポータブル電源をフル充電(満充電)するシステムを自作した。
掛かった費用は約二千円くらいか。
その内訳は以下の通り。
項目 | 数量 | 単価 | 小計 |
昇降圧DCDCコンバータ基板 | 1 | 1000 | 1000 |
2芯1.25sq 電線 6メートル(約5メートル使用) | 1 | 500 | 500 |
エーモン 電源ソケット 貼り付けタイプ | 1 | 500 | 500 |
合計 | 2000円 |
ネット検索すると類似の昇圧充電システムを自作している人は多いが、ワテの場合には3Dプリンタを使って専用シャーシを作成したので、見た目は割といい感じに仕上がったと思う。
今後しばらく使ってみて、問題無く動作している事が確認出来れば、シャーシの蓋の部分も設計して3Dプリンタで印刷する予定だ。=>その後、印刷した。
その場合には、デジタル表示の部分と二個の多回転ポテンショメータ、二個のプッシュボタンスイッチの部分は操作出来るように穴を開けるなど工夫したい。
追記 2022/7/2
その後、この走行充電システムはいい感じで動いている。
ワテが購入した上写真の製品は最大出力電力が35Wなのだが、ワテの場合は夜間に使う電化製品と言うと天井に付けた自作LED照明とスマホくらいなので、消費電力は35W以下だ。
なので、昼間にポータブルバッテリーを100%走行フル充電しておくと、夜に少し電気を使っても翌朝には80%程度はある。
80%だった残量は再び走行充電するとその日のうちに100%に回復する。そう言う使い方なので最大出力電力35WのDCDCコンバーターでも十分足りている。
でも例えば夜間に数百ワット級の電化製品(湯沸かしポットとかヒーターとか)を使う人は、100%フル充電していても翌朝には殆ど使い切っているだろう。あるいは0%になっているだろう。
その場合には最大35Wで充電しても一日でフル充電するのは難しい。なのでもし夜間に数百ワット程度使う人は、DCDCコンバーターも最大出力電力が数百ワット級の物を買うと良い。
あるいは、下写真のような専用品を購入するのが確実だ。この製品の場合10Aまで行けるので12V*10A=120Wくらいで充電出来るようだ。
(完)
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