表 KiCad学習にお勧めの書籍
ワレコ
ワテは上表中央のトラ技2019年8月号でKiCadを勉強した。
☆特 集 ~電子部品の基礎知識から配置・配線設計までマンツーマン・レッスン~ 「プリント基板名人のテクニックDVD&攻略本」
このバックナンバーを近所の本屋さんで取り寄せて貰ったのだ。DVD付きなので分かり易い。
KiCad学習は最初は難解に感じたが、二週間くらい必死で使い込んだら案外簡単にマスター出来た。
『努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない。』 王貞治さんの言葉
さて、表題の「大電流昇降圧型DC/DCコンバータを自作する」プロジェクトであるが、ワテのパワーエレクトロニクス電子工作の第二弾として、出力12V~、最大40A(480W)のDCDCコンバーターの自作に挑戦している。
ちなみにパワーエレクトロニクス電子工作第一弾は直流電子負荷プロジェクトだ。それは無事に完成した。
このDCDCコンバーター自作プロジェクトではAnalog Devices社の昇降圧型DCDCコンバーター制御用IC「LT8390」を使う。
このICは28ピンのTSSOPパッケージ(ピンの間隔0.65mm)なので、ユニバーサル基板に半田付けするのは難しい。
そこで、KiCadを使って専用基板を設計して先日PCBWayさんに発注したのだ。その過程は以下の記事で紹介している。
そのプリント基板がPCBWayさんへ発注後に一週間と言う速さで自宅に届いた。
当記事では、そのプリント基板を紹介したい。
では、本題に入ろう。
PCBWay製の両面スルーホール基板の紹介
FEDEXで配達された小包の写真を以下に示す。
写真 PCBWayから届いたワテ設計のプリント基板の小包
上写真に於いて、全面にモザイクが掛かっているが、何か怪しい物を輸入した訳では無い。
今回の小包には、何故かいつも以上に多数のラベル・シールが貼ってあったので個人情報保護の観点でモザイクにしているだけである。
RSコンポーネンツやマルツ経由のデジキーさんがお勧め
このプロジェクト用に、RSコンポーネンツさんとかマルツ(デジキー)さんに色んなパーツを発注しているので、この所、ワテの自宅には毎日のように品物が配達される。
その多くは海外から届くので、宅配業者さんには怪しい家とマークされている可能性はある。
なんでやねん。
なおRSコンポーネンツさんの場合、分納になったとしても最初に支払う送料450円(WEB注文の場合)のみで良いのだ。例えば十種類くらいのパーツを発注してどれもが海外在庫で分納されたとしても、450円の送料で配達して貰える。
もし注文総額が税抜き6,000円以上なら送料無料になるので、どんなに分納が多くても送料無料。それで宅配便業者さんは利益が出るのか心配になる。まあ多分、宅配便業者さんはRSコンポーネンツさんとは年間一括契約みたいなのをしているのかも知れないが。
デジキーさんの場合には、直接デジキーさんのサイトで発注する事も可能だが、マルツエレクトロニクスさんのサイト経由でデジキーさんの商品を発注するほうが送料が安いのでお勧めだ。
基板サイズ10x10cm2以内なら基板十枚製作費5ドルFedex送料19ドル程度
下写真のようにパッケージを開けるとPCBWayさんの小箱が入っている。
写真 PCBWayさんの小箱
今回発注したプリント基板は以下の仕様だ。
- 両面(=2層)スルーホール基板 1.6mm厚(1、2、4、6、8、10、12、14層指定可能)
- サイズ 10x10cm2
- 銅箔厚さ 2 oz Cu(70μm) (最大13oz Cu = 約455μmまで指定可能)
- ランド表面処理 有鉛半田メッキ(無鉛ハンダ、金メッキなども選択可能)
- レジスト色 緑(赤、黒、白、黄、青、緑、紫、無しも選択可能)
- シルク文字色 白(黒、無しも選択可能)
- 枚数 10枚
だ。
標準の銅箔厚さは1 oz Cu(35μm)だが、この基板では最大40Aもの電流が流れる予定なので、倍の厚さの2 oz Cuつまり70μm厚を指定した。
その結果、基板十枚製作費47ドル、Fedex送料19ドル、割引1ドルで、合計65ドルの費用になる。
もし銅箔厚さを標準の35μmで発注した場合には、基板十枚製作費は約5ドルと言う格安料金になる。
いずれにしても基板サイズが10x10cm2以内に収まっていれば、十枚の両面スルーホール基板を発注しても基板製作費は5ドル程度と言う格安料金なので嬉しい。
一方、基板サイズが10x10cm2を超えると数十ドル程度の基板製作費になる(十枚で)。まあそれでもかなり安いとは思うが、もし費用を抑えたい場合には、KiCadを使って基板を設計する時に、一枚の大きな基板にするのでは無くて、中央で分割して10x10cm2以下の二枚の基板として設計すれば良いだろう。
そうして二種類の基板を発注する。それらはどちらも10x10cm2以下のサイズなので十枚発注しても製作費はともに5ドル程度だ。合わせて10ドル。送料は同梱で発送すれば、日本宛てなら50ドル前後なので、総額60ドルくらいで基板を注文出来るのだ。
今や電子工作をやるなら、KiCadやEagleなどを使って専用基板を設計して、基板製造業者さんに発注すると言うのが電子工作の主流になっていると思う。
皆さんにも基板の外注をお勧めしたい。
PCBWayの基板の梱包
さて、PCBWayさんの小箱を開封してみる(下写真)。
アマゾンなどで買い物すると、巨大段ボール箱に小さな品物が一つと、全く足りていないクッション材が数個なんて場合もある。
そんな貧弱な梱包だと、輸送中に揺られて品物が箱の中で転げ回った事は想像に難くない。
それに比べてPCBWayさんの梱包はしっかりしている。
写真 エアーキャップで真空パックされて小箱に入っているPCBWay製作プリント基板
下写真のように十枚のプリント基板はエアーキャップで真空パックされているので輸送中の振動でも互いに擦れる事が無いので、安心だ。
写真 PCBWayさんで製作したプリント基板(10×102cm が 10枚)
12V~, 40A(480W) Single Buck-Boost DC/DC Converter両面スルーホール基板
下写真がPCBWayさんから届いた両面スルーホール基板だ。
写真 12V~, 40A(480W) Single Buck-Boost DC/DC Converter両面スルーホール基板の表裏
1.6ミリ厚、70μm銅箔、10×102cmの基板が十枚。これで送料込みの総額65ドルなので約7000円。一枚700円程度になる。
もし35μm銅箔なら十枚で送料込みの総額で24ドルくらい、一枚250円程度なのだ。信じられないくらいに安っすいぞ。
なお、アナログデバイセズ社の技術文書(前回記事参照)に掲載されている回路は、出力はDC12V, 40A(480W)だ。
一方、ワテの場合には出力電圧をポテンショメータで可変にする予定なので、出力はDC12~36Vくらいで実験する予定だ。実際に使うのは18V前後を予定している。
ちなみに「Single Buck-Boost DC/DC Converter」のBuckは降圧、Boostは昇圧を意味する。一方、SingleはLT8390チップを一個だけ使うと言う意味だ。
このLT8390に限らず、DCDCコンバーター用のICは並列接続して電流を増強する事が出来る機能を持つものが多いようだ。
なので、一つのLT8390(Single)なら最大出力電流40Aだが、二個のLT8390を使ってMaster-Slave動作をさせるとそれ以上の電流を流せる。あるいは一つのLT8390 Masterに数個のLT8390 Slaveを接続するような接続も可能のようなのだが、そこまで大電流を必要としないし、危険なのでやらない。怖いしw
それにワテ設計の基板は、Master-Slave動作をさせるような機能は入れていないのでそのまま流用する事は出来ない。ただし、幾つかの外付けパーツを追加すればMaster-Slave動作をさせる事が出来るようではある。詳細はデータシートを参照して頂きたい。
PCBWayさんの緑レジスト基板は鮮やかで綺麗な感じ
ワテの場合、選択肢が多いと迷う。
基板のレジスト色を緑、青、赤、白、黄、黒、紫、無しのどれにするか毎回悩むw。
まあそんな時には無難に緑を選ぶのだ。
下写真ではフラッシュ撮影したので若干明るめに写っている。実物はもう少し濃くて落ち着いた感じの緑色だ。
写真 12V~, 40A(480W) Single Buck-Boost DC/DC Converter両面スルーホール基板の表
上写真に於いて「PCBWay」のロゴ風の文字があるが、これはワテがPCBWayさんに製造を委託した事をメモする目的で入れたものだ。PCBWayさんに基板を発注すると自動的にこんな文字が入る訳では無い。
ちなみにKiCadを使って作成した完成予定図は以下の通り。
図 KiCadを使って作成した自作DCDCコンバーター完成予定図(3DCG)
下写真はLT8390 ICを取り付ける辺りの拡大写真。
写真 LT8390 ICを取り付ける辺りの拡大写真(PCBWay製基板)
半田付けパッドの部分は「有鉛半田メッキ」処理を指定した。写真のように光沢があり綺麗な仕上がりだ。なお、ワテが有鉛半田メッキを指定した理由は、使っている半田が千住金属工業のスパークル有鉛半田なので。
もちろんPCBWayさんには「無鉛半田メッキ」も指定出来る。
シルク文字の品質も良い
上写真に於いて、「LT8390、R5、10k、C6、100p」などのシルク文字の大きさと線幅は以下の通り。
今まで十回くらいPCBWayさんにプリント基板を発注しているが、どの基板でもこれくらいの小さなシルク文字でも、全く問題無く非常に綺麗に印字されている。
過去に他の基板製造業者さんに発注した場合には、シルク文字が少しかすれていたり、基板ごとに文字線幅が異なっているなどのバラツキがあるものも有った。
シルク文字の印字品質は基板の見た目の良し悪しに大きく影響するので、PCBWayさんに発注するのはワテの場合は安心感がある。
基板の導体幅と電流の関係
下写真のように数十アンペアの大電流が流れる予定のパターンは出来るだけ幅広にしておいた。
写真 12V~, 40A(480W) Single Buck-Boost DC/DC Converter両面スルーホール基板の裏
上写真に於いて幅広のラインの線幅は約10mm~くらいだ。
果たしてその部分に40Aもの電流を流せるのか不安はある。
基板の線幅と最大電流の関係をネット検索したところ、パナソニック株式会社さんのサイトにまさにその関係を示したグラフを見付けたので以下に引用させて頂く。
図 回路幅と許容電流の関係(導体許容電流および導体間耐電圧からみた回路設計)
引用元 https://industrial.panasonic.com/content/data/EM/PDF/cbmcatalog_1906_circuit_voltage.pdf
今回の基板は70μm厚で発注したので、上グラフの右図を見れば良い事になる。
その右グラフを見ると、導体幅が4mmくらい有れば15Aの電流を流しても基板表面温度は50℃前後になっている。
この右グラフでは電流15Aまでしか計測されていないので、基板表面温度50℃前後で導体幅10mmの時に流せる最大電流を外挿で求めるのはかなり無理があるが、まあ無理やり外挿したとすると25Aくらいまでは流せそうな感じ。でもどう見ても導体幅10mmでは40Aの電流を流すのは無理がある。
この基板が完成したら実際に電流を流してみて、もし基板の発熱が大きい場合には大電流を流せるように基板の裏側に銅線を半田付けするなどの対策を施したい。
表面実装パワーMOSFETは裏側から半田付けする予定
この基板には、パワーN-ch MOSFETを合計七個半田付けする。
その場所は3×3=9個のVIAが開いている箇所が左上に四個、右下に三個あるが、その部分にパワーN-ch MOSFETを半田付けする予定だ。
基板中央付近にも3×3=9のVIAが二箇所あるが、この部分にはインダクタを半田付けするのだ。
写真 N-ch パワーMOSFETやパワーインダクタを半田付けするランドの拡大写真
それらの半田付けでは、基板の裏側から半田付けが出来るように
ビアドリル 0.8mm
と言う、通常よりも大き目のビアを開けている。
これで、基板の裏側(半田面)から半田付けする事で、ビアを通して部品面に取り付けたICやMOSFETの電極の半田付けが出来ると思う。
写真 SW1ピンヘッダの拡大写真
このSW1の場所には、三本のピンヘッダを立てる予定だ。そのうちの二本のピンヘッダをジャンパーする事によって、LT8390のSSMS(スペクトラム拡散機能)をON/OFF出来る。
まとめ
ワレコ
当記事ではワテが自作予定の12V、40A(480W)と言う大電流出力が可能なDC-DCコンバーターに使う予定のプリント基板の実物を皆さんに紹介した。
PCBWayさんに発注したこのプリント基板は、ワテがイメージしていた通りに綺麗な両面スルーホール基板として完成した。
この基板に半田付けする予定のパーツはRSコンポーネンツさんや、マルツエレクトロニクスさん経由のデジキーさんに発注を済ませた。
順調に行けばそれらの電子部品は今週から来週にかけてボツボツと自宅に届くので、到着した部品から半田付けを開始したい。
続く
コメント