ワレコ
最近暖かいなあ。
まだ一月初旬だと言うのにもう春が来たのか。
昨年末からコツコツと製作している、ワテ独自設計の「ワレコ式汎用計測ステーション」と名付けた電子工作であるが、八割くらい完成した。
「ワレコ式汎用計測ステーション」の設計思想としては、秋月やサンハヤトから販売されているスルーホールテストワイヤーと呼ばれるワイヤーを使って被測定対象基板に対して以下の計測作業をやり易くするためのテスト環境だ。
- オシロスコープ観察
- 可変安定化電源供給
- テスター計測(RC測定など)
- 自作オーディオ機器動作確認
- パルスジェネレータ信号供給(今後予定)
以下にサンハヤトのスルーホールワイヤーを示す。
両端がスルーホール用金属板バネタイプ
一端がスルーホール用金属板バネ、もう一端がブレッドボード用金属ピンタイプ
これらのテストワイヤーを挿し込む事が出来るスルーホールを格子状に配置した数種類のプリント基板は昨年末にPCBWayさんに発注して約一週間で自宅に到着したのだ。
前回までで計測ステーションのシャーシ(木枠)を自作して、オシロ観察基板、可変安定化電源供給基板などは組み込み済である。
前回記事はこちら↴
今回は、この計測ステーションに自作パワーアンプ、自作スピーカーを組み込んだのでその作業過程を紹介したい。
では本題に入ろう。
計測ステーションにスピーカーとパワーアンプを組み込む
ワテとしてはこの「ワレコ式汎用計測ステーション」のアイデアは画期的だと思っているのだが、ツイッターでつぶやいても殆ど反響が無い。
何でかな?
余りにも革新的すぎるので世間の理解が追い付かないのかも知れない。
たぶん、今後徐々に注目されると期待している。
計測ステーションを使ってL4780ステレオアンプ基板の動作確認
さて、そんな計測ステーションに以前に自作していたパワーアンプを組み込む。
上記事で紹介しているNational Semiconductor社製のL4780と言うワンチップステレオ60W+60W出力パワーアンプICを使って自作したパワーアンプ基板を下写真に示す。
写真 LM4780 Overture™ Audio Power Amplifier Series Stereo 60W, Mono 120W Audio Power Amplifier with Mute基板の動作確認作業
このL4780ワンチップステレオパワーアンプICを使ったパワーアンプ基板も以前にPCBWayさんに発注したものだ。
上写真のように計測ステーションの機能のうち、既に完成している可変安定化電源(白色基板、2台)を直列接続して、(-15V)-GND-(+15V) の正負電源をアンプ基板に供給している。
一方、二枚の緑基板の右側基板のBNCケーブルにはパルスジェネレータから10KHzの方形波(1Vp-p)が来ている。その方形波信号をテストワイヤーを使ってアンプ基板の入力部に加えている。
アンプ出力信号は、同じくテストワイヤーを使って左緑基板に入力して、その信号はBNCケーブル経由でオシロスコープに行く。
このようにワテ設計の計測ステーションを使うと各種機器の動作確認が非常にやり易いのだ。
写真 パルスジェネレータで生成した10KHz方形波1Vp-p
下写真はオシロの観察画面を示す。
写真 上(CH1):パルスジェネレータ信号、下(CH2):アンプ出力波形
入力1Vp-pに対して出力10Vp-pくらいなので、ゲインは約10倍かな。
下写真がアンプ基板の拡大だ。
写真 L4780ワンチップパワーアンプIC採用のステレオアンプ基板の動作確認
上写真で右側入力部分にはスルーホールワイヤーがピッタリと挿せている。この部分はΦ1.0くらいのスルーホールなのでスルーホールワイヤーには合うのだ。
一方、電源供給部(基板下側)やアンプ出力部(基板左側)のスルーホールは大き目の穴にしているのでスルーホールワイヤーを挿しても抜けてしまう。
そこで銅線を穴に通してミノムシクリップで咥えたり、あるいは銅線と一緒にスルーホールワイヤーを挿せば抜けにくいので上手く行った。
ただし毎回銅線を使うのは面倒なので、Φ1.0よりも大きなスルーホールに挿しても抜け落ちにくいスルーホールワイヤーを入手したいと思っている。
その候補としては、下ページのマックエイトのチェック用コンスルーと言う製品が良さそうだ。
品 番 | 適合スルーホール穴径 |
XC-2 | φ 1.0 〜φ 1.4 |
XC-3 | φ 1.4 〜φ 1.7 |
表 マックエイトのチェック用コンスルーの適合穴径
このXC-3と言うやつを買ってみようと思っている。
なお、マックエイトのチェック用コンスルーには
との注意書きがあるのが気になるが、まあたぶん50回抜き差ししても少し金メッキが剥げる程度だと思うので、実際は数百回抜き差ししても問題無いと思う。
下写真は可変安定化電源基板(2枚)を白色テストワイヤーで直列接続してアンプ基板に正負電源を供給している様子を示す。
写真 可変安定化電源基板(2枚)を白色テストワイヤーで直列接続してアンプ基板に正負電源を供給
上写真ではスルーホールワイヤーをスルーホールに挿して電源を取り出しているが、必要ならその上部にある赤黒のチップジャックから電源を取り出しても良い。
基板に開いているΦ6穴にはチップジャックやバナナジャックを取り付ける事が出来るので、自分が良く使うジャック端子を取り付けられるようにして汎用性を高めているのだ。
と言う訳で、以前にPCBWayさんに発注した基板で製作したL4780アンプは正常動作している事が確認出来たので、このアンプ基板をこのあとで計測ステーションに組み込む。
計測ステーション用スピーカー製作
アンプ基板だけでなく小型スピーカーも計測ステーションに組み込むのだ。
そうする事で、自作プリアンプ、自作DACなどの音出しテストではL4780パワーアンプを経由してスピーカーを鳴らす。一方、自作パワーアンプの音出しテストでは、L4780は通さずにスピーカーを直接駆動すれば良い。
このように計測ステーションを使う事で自作オーディオ機器の動作確認が簡単に出来るのだ。
使うのは下写真の秋月で買った100円スピーカーだ。
写真 秋月電子で一個100円で買った小型スピーカー(8Ω10W)2台
このスピーカーは安いけれど日本製(東京コーン紙製作所)のやつだ。
秋月スピーカーユニット 30×70mm 8Ω10Wの仕様は以下の通り。
・インピーダンス:8Ω
・定格入力:10W
・最大入力:15W
・最低共振周波数(F0):400Hz
・周波数範囲:F0~10000Hz
・出力音圧レベル:84.5dBW/m
・磁気回路タイプ:外磁型
・寸法:70.1mm×30mm×37.4mm
・重量:117g
引用元 https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-16600/
スピーカーボックスは針葉樹合板12ミリ厚の端材で作る事にした。
写真 卓上スライド丸ノコを使って針葉樹合板12ミリを切断する
下写真のように木工用ボンドで貼り合わせる。
写真 スピーカーボックスの部材(針葉樹合板12ミリ)を切り出した
下写真のように木工用ボンドで貼ってクランプで固定する。
写真 スピーカーボックスの部材を木工用ボンドで貼ってクランプで固定
ちなみに昨年購入した下写真のBESSEY社のユニクランプは黒い樹脂製のパーツがしっかりと平行に対象物を挟み込むのでクランプ作業がやり易い。
写真 BESSEY社のユニクランプは黒い樹脂製のパーツがしっかりと平行に対象物を挟み込む
木工用ボンドが乾いたので、下写真のようにクランプを工夫してスピーカーボックスを作業台に固定した。
写真 クランプを工夫してスピーカーボックスを作業台に固定
複数のクランプや補助となる木材を使うとクランプし辛い物でも上写真のようにしっかりと作業台に固定出来るのだ。
そして下写真のように仕上げサンダで研磨した。
写真 スピーカーボックスを仕上げサンダで研磨
無事に研磨したので、次は下写真のようにスピーカーユニット取り付け部に穴を開ける。
写真 左:スピーカーボックス背面はまだ付けていない。右:フロント部に穴開け加工前
下写真のように木工用ドリルでフロント部に穴を開けた。
写真 木工用ドリルでフロント部に穴を開けた
下写真では自作サイクロン集塵機でドリル屑を吸引している。
写真 自作サイクロン集塵機でドリル屑を吸引している様子
下写真のようにジグソーを使って大雑把に長穴を開けた。
写真 ジグソーを使って大雑把に長穴を開けた
このあと、トリマーにストレートビットを付けて鉛筆線の部分まで削ろうとしたのだが、フリーハンドでは精度良く削るのは難しかったので断念。
その代わりに木工用ヤスリを使って切り口を整えておいた。
計測ステーションに自作スピーカーを組み込む
無事に二台の小型スピーカーボックスが完成したので、スピーカーユニットや背面電極ターミナルを取り付ける。
写真 スピーカーユニットに赤黒スピーカーケーブルを半田付けする
上写真のようにスピーカーユニットから出ている赤黒ケーブルに、0.75SQの赤黒スピーカーケーブル(ホームセンターで購入)を半田付けして40cmほど延長した。
オーディオの世界ではスピーカーとアンプの接続ではバナナプラグを挿し込む方式の接続方法が一般的だが、ワテの場合はなるべく半田付けするようにしている。半田付けのほうが電気的な接続と言う観点で確実だし接触抵抗も少ないので。
下写真のように東京コーン紙製作所のスピーカーユニットをフロント部分にネジ固定した。
写真 東京コーン紙製作所のスピーカーユニットをフロント部分にネジ固定
下写真は背面のスピーカー端子の様子だ。手持ちに有ったスピーカー端子を使ったのだが、この端子はアンプの背面に付けるスピーカー端子用だと思う。なぜならあまり分厚い板には付けられないので。
写真 MDF6ミリに穴を開けて取り付けたスピーカー端子
実際、上写真で使っているのはMFDボード6ミリ厚だ。針葉樹合板12ミリは厚すぎて固定ネジが届かなかった。
このあと、上写真のMDFボード製リアパネルをスピーカーボックス背面に接着剤で貼り付けて無事にスピーカーは完成した。
計測ステーションにL4780アンプを組み込む
いよいよ計測ステーションにスピーカーやアンプを組み込む。
アンプはL4780ワンチップICがかなり発熱するので下写真のようにアルミLアングルの端材が有ったのでそれをヒートシンクとして使う。
写真 L4780ワンチップICにアルミLアングル流用のヒートシンクを付ける
上写真でL4780は背面に電極が露出していて、データシートを見るとこの部分は負電極(V-)につながっているらしい。つまりL4780を単電源で使う場合には、背面電極はGNDになるのだろう。
上写真のようにTO-3トランジスタ用の絶縁ラバーシートをハサミで切って長方形にした。そこに革ポンチでΦ4穴を二個開けた。
固定に使うのはプラネジM3とプラナットだ。これらの非金属なパーツを使うと絶縁対策は万全だ。
下写真のようにアンプ基板に配線を半田付けした。この場合も配線は直接半田付けしている。
写真 アンプ基板に電源ケーブル、入力ケーブル、出力ケーブルを半田付け
下写真のようにアンプ基板には自作貼り付けボスを付けている。
写真 3Dプリンタで作成した貼り付け式基板固定脚を使う
下写真のように二台のスピーカー、二台のスイッチング電源(15Vが2台)そしてアンプ基板を組み込んだ。
写真 スピーカー、スイッチング電源(15Vが2台)、アンプ基板を組み込んだ(背面から撮影)
上写真で二台のスピーカーは計測ステーションに載せているだけだ。固定はしていない。
二台のスイッチング電源は一枚の針葉樹合板にネジ固定して一体化している。その状態で計測ステーションに載せているだけだ。スイッチング電源はDC12V出力タイプだが、半固定抵抗を回すと出力を8Vから16Vの範囲で可変する事が出来たので、15Vに設定して±15V電源として使っている。
アンプ基板は四つの貼り付けボスで底板に貼り付け固定している。
アンプ基板への電源供給(±15V, GND)、スピーカーとの接続などを済ませた。
ちなみにスピーカー端子には銅単線を下写真のように半田付けしている。
写真 スピーカーケーブルの銅撚線の末端には銅単線を半田付け(赤色はこのあと半田付けした)
上写真のように銅単線を半田付けしておいて、スピーカーボックス背面のスピーカーターミナルにネジ固定した。
と言うのは、銅撚線を直接ネジ固定しても緩みやすいので、銅単線を付けたのだ。
これでアンプとスピーカーの接続は完了した。
このあと、下写真のようにスピーカーケーブルを追加して、フロント部からスピーカーへ直接つなぐ経路も付けたのだ。
写真 スピーカーにはもう一本ケーブルを追加してフロント部まで引っ張った
下写真が現在の計測ステーションの様子。
写真 フロント部の配線や基板の取り付けが未完成な計測ステーション(2023年1月12日現在)
フロント部に来ている赤黒ケーブルで、細いほうがアンプ入力部との接続用、太いケーブルはスピーカーケーブルだ。
それらのケーブルは上写真左にある二枚の基板(紅白RCAジャックの黒色アンプ基板、青色スピーカー基板)にそれぞれ接続する予定であったが、現在中断している。
その理由はこれら二枚の基板に幾つかのミスや改良点が見つかったので、それらを修正して基板を設計し直してPCBWayさんに再発注を予定している。
ミスや改良点は具体的には、以下の通り。
- 黒色アンプ基板に付けるボリューム穴位置が上過ぎて計測ステーション木製シャーシに干渉する(木製シャーシを削れば解決するがそれは不細工なのでやりたくない)
- モノラル構成青色スピーカー基板は左右チャンネル用に計測ステーションに二枚付ける予定だったが場所を取り過ぎるのでステレオ構成の一枚に集約したい。あるいはアンプ基板もまとめて全部を一枚にする事も検討中。
などだ。
さっそくそれらの改良作業に取り掛かり、改良型基板をPCBWayさんに再発注したい。
まとめ
ワレコ
この記事は殆どワテの備忘録みたいになっているが、ここまで読んで頂いた読者の皆さんの計測ステーションに対する感想を聞かせて頂きたい。
便利そうとか、そんなもん不要とか。
まあ色んな意見があるとは思うが。
当記事では2022年末から製作開始した、ワテ独自設計の「ワレコ式汎用計測ステーション」の製作の様子を紹介した。
今回はスピーカーとパワーアンプを計測ステーションに組み込んだ。
残す作業は以下の通り。
- アンプ基板のボリューム穴位置を修正し基板を再作成
- 現状モノラル構成のスピーカー基板をステレオ構成の一枚基板に再作成
- あるいはアンプ基板とスピーカー基板も一体化した基板を設計
- パルスジェネレータ信号入力用基板を新規作成(現状オシロ基板を流用している)
- マックエイトコンスルー端子を使って40cm前後の長さのスルーホールケーブルを自作
これが完了すればワテが思い描いていた「ワレコ式汎用計測ステーション」が完成するのだ。
一月中の完成を目指したい。
今後の予定としては、真空管アンプの製作に挑戦したいと思っている。
その動作確認にもこの「ワレコ式汎用計測ステーション」が活躍すると期待している。
(続く)
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