こんなツイッターを見た。
河野太郎 @konotarogomame 11月2日
河野太郎さんがHaruhiko Okumuraをリツイートしました
行革推進本部で文科省をよんで、こういう神エクセルを至急、全廃することにしました。また、科研費関係の問題提起の窓口をつくり、順次、対応することにしました。
自由民主党所属の衆議院議員である河野太郎氏が、2016年11月2日にリツイートしたものだ。
何をリツイートしたかと言うと、↓のツイッターだ。
奥村 晴彦と言う名前の三重大学の先生のツイートだ。
順番がおかしくなりましたが https://t.co/CxYpVIQBBg が出典です RT @h_okumura: Excel原稿用紙 pic.twitter.com/nB7XYiYkzM
— Haruhiko Okumura (@h_okumura) 2016年11月1日
要するに、科研費の申請書類がエクセルシートで作られていて、その入力欄に一文字ずつ入力する仕様になっているのが問題だと言っているようだ。
俗に神エクセルと呼ばれているエクセルシートだ。
一般には、エクセル方眼、あるいは、エクセル方眼紙と呼ばれる。
奥村氏のツイートの元になったのが↓らしい。
うわぁネ申Excelだぁぁ(椅子から転げ落ちる) pic.twitter.com/ocH4BF06vG
— ミカヅキモ@数学 (@mikadukim_math) 2016年8月25日
ミカヅキモ@数学 (@mikadukim_math)と言う人のツイートのようだ。
この記事では、自称エクセルの達人のワテがエクセル方眼紙に付いての見解を述べたい。
エクセルを使って印刷物をデジタルデータ化する
エクセル方眼紙とは、紙に印刷されている何らかの書類、例えばこう言うやつ↓を、エクセルのシートを使って忠実にデジタルデータ化してパソコン上に再現したものを指す。
図1. 神戸市の住民票申請書類
引用元 http://www.city.kobe.lg.jp/life/registration/shomeisho/01_juminhyo.html
行政や会社ではこの手の申請書類が多い。
つまり、入力欄が多数あり、フリガナ、その他の各種の情報を手書きする書類だ。
入力欄の大きさも大中小と様々であり、その位置も書類によって異なる。
こう言うのは昔は印刷物であったが、今はインターネット経由でPDF形式ファイルなどで入手可能だ。
で、その大元のデータは人がエクセルをシコシコ駆使して既存の印刷物のレイアウトを忠実に再現したものが使われている。
その結果、申請書のファイル自身がEXCELファイルで配布される場合もある(一般にはPDFなどが多いが)。
エクセル方眼紙の歴史
エクセル方眼紙が良く使われているのは、役所、企業などが多い。
何十年も前には、パソコンも使っていなかったので役所の申請書類、企業の各種社内書類は印刷物であった。
それが、1980年代以降、パソコンの普及、マイクロソフト社のエクセルの普及に伴って、このようにエクセルシートを駆使したデータとして、その印刷物を再現したのだ。
書類(紙)をエクセル化するので紙エクセル。それをもじって神エクセル。
あるいは
「ネ申エクセル」
などと書く人もいる。ネ申と書いて何が良いのかワテには分からないが、それは本題では無いので「神エクセル」すなわち「エクセル方眼紙」の話題を続ける。
統計を取った訳では無いが、世の中にはエクセル方眼紙反対派と賛成派がいると思う。
エクセル方眼紙反対派 VS エクセル方眼紙賛成派
エクセル方眼紙反対派
ワテの推測であるが、エクセル方眼紙反対派の主な主張は以下の通りだろう。
- エクセルを持っていないとファイルが開けない
- ちょっとした修正や変更を加えるだけでも物凄く大変
- 書類に文字を入力しづらい
などか。
エクセル方眼紙賛成派
- エクセルを使うとオリジナルの書類を忠実に再現できる
- 文章の位置、入力欄位置の指定が容易(エクセルの行・列の位置指定で厳密に位置決め出来る)
などか。
フォント種類も多いので、オリジナルの印刷物が明朝体でもゴシック体でもどんなフォントでも忠実に再現できる。
ワテの立場
ワテの場合、あらゆるオペレーティングシステムに精通し(自称)、あらゆるコンピュータ言語に精通し(自称)、あらゆるコンピュータソフトウエアに精通している(自称)のだが、神エクセル(エクセル方眼紙)を使った書類の作成に関しては賛成の反対だ。
つまりバカボンのパパのようにどっちでも良い立場だ。
強いて言うと、賛成派である。
何故か?
それは、図1.神戸市の住民票申請書類 のような印刷物をデジタルデータ化したい場合に、いくつかの方法が考えられるが、エクセルが適しているからだ。
部品を自由に配置できるCADソフトのようなものを使う
自動車設計などに使うCADソフトを使えば、ミクロン単位(いやナノメートル単位か?)で位置指定して、文字でも図形でも配置出来る。
その手のソフトを使って手書き書類をデジタルデータ化すると、確かに厳密に正確に手書き書類をデジタルデータ出来る。
ただし、手間は掛かるし、CADソフトを使える人もエクセルほどは多くはない。
そのために、一般の場合にはCADソフトに近い感じのPowerPointを使って同じ作業を試みる人も多い。
しかしながら、PowerPointでこの手の作業を行うと、何かと問題が多くてオリジナルの書類を完全に再現するのが困難である。
微妙に位置がずれたりなどの問題が出る。
ワープロソフトを使う
次に多いのが、ワープロソフト(一太郎、ワードなど)を使ってオリジナル書類をデジタル化する人も多い。
この場合には、PowerPoint以上に位置決めが困難であり、オリジナル書類と全く同じ位置に文字を書いたり、全く同じ位置に入力欄を設けたりするのが至難の業だ。
エクセル方眼紙の可変グリッドはCAD以上の機能性
そんな苦労をした人が編み出したのがエクセル方眼紙の手法なのだ。
エクセルシートの場合、縦横に並んだセル間隔は、任意に変更できる。
例えばデフォルトでは、こんな感じで等間隔に並んでいる。
図2. エクセルの等間隔グリッド(基本)
それを以下の様にすると部分的にグリッド幅を変化させる事が出来るのだ。
図3. エクセルの可変幅グリッド
それも、行(横方向)だけでなく列(縦方向)もグリッド幅が変更できる。
一般に世間で使われているCADシステムの場合には、グリッド幅は固定だ。
例えば、1ミリ間隔でグリッドを設定すると、1ミリ、2ミリ、3ミリ… といった切りの良い位置にのみ点を配置出来る。
1.5ミリの位置には点を打てない(マウスやキー操作を組み合わせれば出来る場合もある)。
では予め細かいグリッド設定0.1ミリにしておけば、確かに 1.5ミリの位置にも点を打てる。
しかしながらそうすると、殆どの点はミリ単位の位置に置きたいのに、細かいグリッド設定にしたものだから、置いた点が1ミリの位置にあるのか、1.1ミリの位置にあるのかあるいは0.9ミリの位置にあるのか一々気にしなくてはならない。
それは手間が掛かるし無駄だ。
ところがエクセルシートの場合には、部分的にグリッド幅を可変に出来ると言う、CADソフトの進化形なのだ。
この可変グリッドシステムを使うと、任意の位置に文字を書いたり、入力欄を配置したり出来る。
入力欄の高さも行高さをセットするだけで一瞬にして設定出来る。
それも、正確無比に厳密に何ポイント、あるいは何ミリで設定出来る。
このエクセルの可変グリッドシステムを使うと、申請書の類のどんな印刷物であってもそれを忠実にデジタルデータ化出来るのだ。
と言う事で、ワテとしては、エクセル方眼紙シートを作成する事に関しては問題だとは思わない。
エクセル方眼紙反対派に対するワテのコメント
エクセル方眼紙反対派の人が言う反対意見に対して、ワテのコメントをまとめてみた。
エクセル方眼紙反対派の意見(ワテ推測) |
ワテのコメント |
エクセルを持っていないとファイルが開けない |
エクセルくらい買えよ。もし持っていなくても会社や学校ならどこかに有るだろ。 無料のExcel Viewerもあるし。 |
ちょっとした修正や変更を加えるだけでも物凄く大変 |
何事も訓練と慣れだ。やれば出来る。 エクセルで絵を描くエクセル画伯と呼ばれる人もいるくらいだ。 |
書類に文字を入力しづらい |
そのエクセルシートを使って科研費申請を毎日何百件もする訳じゃないだろ?年に数回くらいだったら、別のシステムを使っても同じようなもんだ。たまに使うと何でも難しく感じるもんや。 もし何百件も申請するんならマクロでも組め! |
と言う事で、ワテの場合、賛成の反対と言っていたが、かなり賛成派で有る事に今気づいた。
で、奥村氏の主張は何なのか
このPDFを見ると、
http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/SSS2013slide.pdf
奥村氏は以下のように主張している。
正しい Excel 作法
↓
データベースの正規化
データベースを教えるのに
RDBMS 使わなくても
Excel でいいのでは?
奥村さん(と言っても面識はないが)、あんたねぇ、会社でエクセル使っている人がデータベースの正規化なんて考えながら仕事している訳がないだろ。
奥村氏がデータベースに読み込もうとしたエクセルシートのセルが結合されていて苦労した程度の話なんじゃないのか?
それをそんなに大騒ぎして、全国の由緒あるエクセル方眼紙(神エクセル)を全廃させるなんて、完全に間違っている。
まとめ
世間の一部の人の意見では「エクセル方眼紙(=神エクセル)」を問題視しているようだが、それが本当に生産性を落としているのか、信用出来る調査結果でもあるのか?
単にエクセルが嫌い、マイクロソフト製品が嫌い、などと言う一部のパソコン利用者、特にLinux, Unix, Free BSDを好んで使う人に多いと思うが、そういう一部の人の意見を鵜呑みにしているんじゃないのかな? > 河野太郎さん
ワテは、河野太郎さんに聞きたい、そもそも君はエクセルを使った事があるのか?
エクセル方眼紙反対派は、要するにエクセル(=MS)が嫌いなだけなんだろ?
そう思う。
何でもそうだが、多少の使い勝手の良し悪しは有っても今まで大きな問題も無く使われて来ていたものを、いきなり全廃するなどと言う安易な発想こそが、現場を混乱させ生産性を低下させる。
現場の混乱は一時的なもので、エクセル方眼紙が全廃されたとしてそれに代わる手段があるのか?
代替策を示さずにエクセル方眼紙を全廃しても、余計に混乱して生産性は低下するぞ。河野太郎さん。
ワテはこのニュースを見て、ITに疎い政治家が一部の偏った人の意見を真に受けてしまい、その結果、エクセル方眼紙と言う素晴らしい技術を台無しにしてしまう愚策だと思う。
そう、何を隠そう、ワテは実はエクセル方眼紙(=神エクセル)が大好き。
隠れ神エクセリシタンと呼んでくれ!
どんな弾圧にも屈しない不屈の神セクセル信者。
それがワテだ。
コメント
地方公務員ですが方眼区切りは反対です。
Excelが得意な人の中にも色々な考え方があると思いますが、僕は出来るだけセルの結合なしに綺麗な様式を作ることが本当のExcelが出来る人だと思います。
セルの結合により、後々編集がしにくくなるのは間違いないです。
特に列幅が必要な関数を組むときは非常にやりにくいのです。
誰でも使いやすい且つ、整った様式を作られるのが最良なのではないでしょうか。
セルの結合も手間ですし。
うっつー様
この度は小生のExcel方眼紙記事にコメントありがとうございます。
Excelのセルを結合すると、うっつー様ご指摘の通り、様々な問題が出る事は私も同意します。
ですので、自分だけでなく他の人もそのExcelファイルを編集する可能性がある場合には、なるべくはセル結合せずに作成するのが良いと思います。
一方、当記事で紹介したような、何らかの定形的な申請書のような書類を自分が作成する場合に、それをExcel方眼紙で作成したとしても他の人が再編集する可能性が無い場合には、Excel方眼紙を使う事は良いと思います。
そのExcelファイルで沢山のセルの結合がされていても、それを印刷して出来上がる印刷物は、目的のレイアウトを実現出来る訳ですし、そのExcelファイルを将来再編集する場合には、作成した自分がやり直すだけですので、他の人の手を煩わせる事もないですから。
いかがでしょうか?
と言っても最近では私はあまりエクセルをやる機会が無く、スケジュール帳のようなものを自作して使っている程度ですので、セル結合などは滅多にやりませんがね。